NPOプレゼント講座2014 - トピック返信
【第2回レポート】人づくりまちづくり~地域の魅力ある人たちを囲んで~(菊川)
国登録有形文化財『赤レンガ倉庫』に集う~
人づくり まちづくり…地域の魅力ある人たちを囲んで…(菊川)

平成26年度第2回目のNPOプレゼント講座は、菊川市での開催。
国登録有形文化財となった赤レンガ倉庫に集い、「人づくりまちづくり…地域の魅力ある人たちを囲んで」をテーマに行いました。
女性パワーにあふれる講座の様子をレポートします!



【1】赤レンガ倉庫について~あいさつにかえて~
NPO法人菊川まちいき 副理事長 梶孝

この赤レンガ倉庫は、明治25年に建てられた建物です。私たちはこのまちに住んでいながら、実はこの赤レンガ倉庫のことをよく知りませんでした。つぶす話があってはじめて、この赤レンガ倉庫のことを調べ始めると、出てくる、出てくる(笑)。そこで初めて価値を知りました。文化がどれほど大事か、年と共にわかますね。



赤レンガ倉庫は、お茶の再製工場でした。当時、アメリカではビタミンCが不足していたらしく、緑茶の需要がありました。お茶のおかげで菊川のまちが潤いました。

国の登録有形文化財にも指定され、菊川のまちの宝になりました。現在は修繕が行われ、絵画の展示会やコンサート等の各種イベントに活用されています。




【2】はじめに
コーディネイター:須藤八千代氏 愛知県立大学名誉教授 元横浜市ソーシャルワーカー

今回、この菊川のまちで講演をするお話をいただいたとき、私がお話するのではなく、ゲストスピーカーを招いて、それぞれに人生をお話いただく形にしました。それは、4名のゲストスピーカーのお話を聞くことが、多様な人生に触れることであり、それこそが人を育てることにつながるからです。
多様性に触れる機会、交流する機会を、今後も増やすことが大切だと思います。それが大きな力になります。



今回、長谷川さんには「ビジネス」を、倉部さんは「政治」を、鈴木さんには「アート」を、三浦さんには「地域活動の継続」のお話をしていただきます。
ここに参加された皆さんが、それぞれに多様な方々と交流を持ち、次の展開につながっていけばいいと思います。


【3】きくがわに棲む人たち 女性編
①長谷川和代氏 (株)ブライトネス代表 ネットショップ「ひととき」を経営

株式会社ブライトネスは、着物のネット販売の会社として2009年に設立しました。コンセプトは「30代以上ワンランク上の女性に向ける着物ショップ」です。
全員が素人ですが、スタッフホームページの構築をし、サイトを作り、問屋さんの開拓も仕入れも、みんなで勉強してきました。外注したことはありません。
現在、地元採用のスタッフが28名、着物のアイテム数は7500です。



「強く熱い思いと、誰にも負けない努力と素直な心、そして笑顔と前向きな心で業績を伸ばす」を経営理念としています。
職場の明るさとしては、日本一です。
今後の目標としては、「2018年までに東京へ複数店出店」と「2021年売上10億を目指す」を掲げています。

私自身、恵まれた環境に生まれましたが、両親の経営する会社が倒産したことで、家族もばらばらになり、負債も背負いました。どん底の時期を経験しましたが、10年前、ある人からアドバイスを受け、人生を前向きに生きることができるようになりました。
そのとき言われたのは、「これからどうやって生きていくかは、ゆっくり考えていけばいい。ただ、悲劇のヒロインになってはいけない。そうなれば、人生を取り戻すことができない。笑顔を見せなさい」ということでした。
この言葉がなかったら、今の私はなかったと思います。



今、この菊川という、生まれたわけでも育ったわけでもないまちで、自分なりに生きていこうと思っています。
正しい判断をし、正しい道を歩んでいけば、きっとその先に未来は待っていることがわかりはじめた今日このごろです。
走り始めた経営者としての道を、これからも歩んでいきたいと思います。

②倉部光世氏 シェアハウスを拠点に次世代を巻き込むまちづくりを展開

2年前から市議会議員をしています。子育てサポーターとして、子育て支援やまちづくりのイベント開催に関わっています。今日は、そうした市民活動の立場でお話したいと思いますが、その中で「なぜ政治家になろうと思ったか」も出てくると思います。



私自身、もともとファッションが好きで、学校を卒業後はセツモードセミナーに通い、絵やデザインの勉強をしていましたが、不動産会社の企画部門に就職し、結婚を機に地元に戻ってきました。
大人たちは、子どもたちに「目標を持つように」と言いますが、私が思うのは少し別なことです。もちろん、目標を持つことは大切ですが、私は自分の経験から、「目標が変わったとき、きちんと方向転換できる柔軟性と器用さを持ってほしい」ということを思います。

結婚し、菊川に戻り、子育てを通じて、才能のあるお母さんたちが大勢いることを知りました。そうした人たちのお手伝いできたらいいと思ったのがスタートです。お母さんたちのハンドメイド品をフリーマーケットで販売する「まめまめマーケット」を継続して行っています。菊川に暮らすお母さんたちが、「暮らしやすいまちだ」と思ってもらえるような何かができたらいいなと考えています。



ただ、こうした市民活動をしていても、私たちの声はなかなか行政の中心に届かず、「一体、この菊川というまちのことは、どこで誰がどんなふうに決めているのか知りたい」と思うようになりました。それが、議員になるきっかけとなりました。
これからも、多くの人とお話をして、市民の意見を中心に通せる「風通しのいい菊川市」になるよう、努力していきたいと思います。

行き当たりばったりの人生ですが、女性が元気になれる、子育てしているお母さんたちが元気になれる、そんな活動をずっとしていきたいと思います。


③鈴木敦子氏 デッサンを楽しみ個展開催。茶農家の嫁・介護ヘルパー

私は、菊川で生まれ、菊川で育ち、菊川で結婚しました。菊川ではとても一般的な「茶農家の嫁」をしています。
仕事と家事と育児で忙しい日を送っていたのですが、あるときデッサン会に参加したのがきっかけになって、絵を描き始めました。人物のデッサンが主で、仕事や家事の合間に取れる15分くらい、対象を捉え、絵を描くことを続けてきました。この15分、というのが、無理なく続けてこられた理由かもしれません。自然体を描くのが好きで、家族のうたた寝している姿とか、夢中になっている姿を描いています。もともと絵を描くことは好きでしたが、きちんと勉強したことはありません。



デッサン会で「どうしたら上手になれますか?」と先生に聞きたところ、「人物は複雑だから勉強になる。1枚目より100枚目の方が確実にうまくなっているから、続けてみなさい」ということでした。この言葉は私の中にストンと落ちました。
それで、スケッチブックを一冊買い、このスケッチブックがいっぱいになるまで描いてみようと思ったんです。
人の身体は複雑で、描いていると面白く、気づいたら15年がたっていました。

これまで個展を5回開いていますが、経歴があるわけでもなく「誰が見てくれるの?」とも言わましたが、私としては「自分がこれまで描いてきたものをずらっと並べて見たかった」という気持ちからだったように思います。自分の絵が並んで気づいたのは、「ああ、私は絵が下手だったんだな」ということでした(笑)。でも、自分しか知らない子どもの感情を描けていると思っていますし、これまで自分が経験してきたことが自分の線になっていると感じるので、それでいいと思っています。

ただ、個展を続けていると、絵を見に来てくれる人と交流ができるようになりました。ご近所の方たちも、私が絵を描いていることを知り、応援してくれています。私のことを知ってもらえたと思いました。

今思うのは、私が生まれ育った菊川のまちが「絵を描きたいとき自由に描けるまち」であり続けてほしいなということです。


④三浦康子氏 家庭文庫主宰 絵本を通して地域で子育てを実践

私は、“やなぎ文庫”という家庭文庫を開いています。平成元年に始めたので、その頃来てくれた子どもたちは、もう大人になっています。
もともと、絵本のある地域の居場所づくりを目指していました。ゼロ歳児から小学校の候え学年の子たちまで通っていました。ブックスタートの場でもあってほしいと思いました。おっぱいを与えるように、言葉のシャワーを浴びてほしいと思いました。



保育園や高齢者施設、障がいを持つ子たちの施設などへの出張文庫も行っています。
先日は、菊川市の「1パーセント地域づくり活動交付金」をいただき、活動を広げました。自分では「まちづくり」をしているなんて考えてもいなかったのですが、「交付金を申し込んだら?」と言われ、「これも一つのまちづくりなんだな」と意識できるようになりました。

こうした活動が20年以上続けてこられたのは、ご近所や地域の多くの皆さんに支えられてきたからです。お隣の接骨院さんには、休診日に駐車場をお借りしていました。ご近所の農家の方たちは、おやつ用の野菜を下さいました。本当に多くの地域の人に支えられてきました。

好きなことをして、地域のためになっているのだとしたら、とても幸せなことだなあと感じている今日この頃です。



【4】おわりに
コーディネイター:須藤八千代氏 愛知県立大学名誉教授 元横浜市ソーシャルワーカー



4人の女性のそれぞれの人生に触れ、交流が広がったのではないかと思います。公私ともに、これだけプライベートなことこを人前で話してくれた皆さんにお礼を言いたいと思います。
公と私は密接にからんでいます。「仕事の自分」「プライベートな自分」「地域の自分」というように分けないで、ありのままの自分で生きていくことが理論的にも正しいのだと思います。
ですから「お宅のご主人は何をしている人?」とか、聞かない(笑)。女性を個人で見ることの大切さを考えていただきたいと思います。

今回、このNPOプレゼント講座に参加させていただきましたが、こうした講座をどんどんやって、中東遠のネットワークを作るべきだと思います。
行政の職員も、もっと自分らしく、もっと自由に、個人として地域に溶け込めるようになると、仕事はもっと面白くなると思います。
地域を育てるのは、官民のフラットな関係です。行政が上では、NPOなど市民活動はいつまでたっても育たないと思います。行政が裏方に徹し、背中を押していくことが大事なのです。

こうした場を作っていただけたことに感謝します。ありがとうございました。

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