NPOプレゼント講座2012の「【第2回レポート】地域資源の活用による元気づくり」
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【第2回レポート】地域資源の活用による元気づくり
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第2回のテーマは「地域資源」
講師の皆さんの印象的な言葉をレポートします!

(1)ミニレクチャー
「地域資源を活用するにはどうするか」
中小企業診断士・6次産業化プランナー 中野眞氏



私の仕事は地域ビジネスの課題を整理し、解決方法を考案すること。「力相応に」が大切なキーワード。テーマは「農業」「林業」「福祉」。農業や林業はどん底だからチャンスがある。

起業の相談を受けると、大抵の人は「夢を実現したい」というけれど、よく話を聞くと「夢」ではなく「欲」のことが多い。それを100%否定するつもりはないが、「夢」という美しい言葉で自己満足に陥ることが多い。だから「夢はもたない方がいい」と言っている。自分だけの満足から離れ、力相応にやること。

大切なのは、目的と手段を履き違えないこと。目的は「地域の課題を解決すること」であり、「地域資源の活用」はあくまで手段。地域資源を活用することや、自分たちができることを目的にしてはいけない。

100年前、すでに地域課題を解決するため、地域資源を活かした地域ビジネスをやっている人がいた。それが金原明善。金原明善は川上から川下までを新たな視点でつなぎ、山に人・モノ・金を入れる「金原治山治水財団」を創設した。今、社会起業家・金原明善の思想を現代に実現するプロジェクトに関わっている。

まちづくりには「若者」「余所者」「バカ者」が大切というけれど、「若者」は「女性」と言い換えてもいいかもしれない。女性は柔軟な視点を持ち、現実的で行動力があり、さらにコツコツ積み上げていくこともできる。「余所者」は専門家など、「バカ者」は武史さんはじめ遠州横須賀倶楽部の皆さんかもしれない(笑)。

(2)事例報告
■「駅前に残る赤レンガ倉庫をまちづくりの拠点に」
NPO法人菊川まちなかいきいき倶楽部 三浦康子氏 小林凉子氏



活動の経緯
・平成15年、静岡県魅力ある地域づくり推進事業として、「菊川街なかいきいき委員会」が発足
・平成16年 菊川駅前に残る赤レンガ倉庫の保存、活用を目的に「赤レンガ保存会」を設立
・平成18年「菊川いきいき倶楽部」として文化公演、音楽会、講演会、ギャラリー展など文化の発信活動を開始
・平成22年 NPO法人「菊川まちなかいきいき倶楽部」を設立し、赤レンガ倉庫を拠点に文化の発信を拡大

赤レンガ倉庫の歴史的、文化的価値の再発見
・長く商店の裏庭に隠れていた倉庫を調べてみると、静岡県の製茶産業のツールともいえる明治時代の産業遺産であることがわかった。これは、菊川のまちのルーツであると同時に、製茶の歴史の上で貴重な産業遺産。歴史や文化、コミュニティの発信拠点としてふさわしいと感じた。
・区画整理によって取り壊されることを免れるために、土地を買い取って(1千万円の借入れ)、保存することを決意。

期待される効果
・地域のランドマークとしての赤レンガ倉庫をNPO自身が活用するだけでなく、多くの人に提供することで、まちの賑わい、文化の賑わいを生み出すことができる。
・菊川市民のみならず、多くの人に赤レンガ倉庫を通じて製茶の歴史を伝えることができる。

■「市民活動による大須賀地区のまちづくり」
遠州横須賀倶楽部 大番頭 鈴木武史氏



現在、「街並みと芸術の晴れ舞台」として多くの方に来ていただけるイベントになったが、結果としてこういうイベントに落ち着いた、という方が正しいかもしれない。25年前、当時の大須賀町は衰退の一途をたどっていた。役場に行っても予算も人もない状態。だから、自分たちでやるしかなかった。それが自分たちのエネルギーになっている。

その結果、多くの人を呼ぼうというイベントではなく、横須賀の好きな人が来てくれるイベントになった。何人来たかより、誰が来てくれた、何時間いてくれた、何度も来てくれた、それが大事になっている。ちっちゃな文化展の「ちっちゃな」には、その想いが込められている。

今、自分たちが大切にしているのは「自分たちの観光を目指す」「本物だけやる」「あるものといる人を使う」ということ。実際、こうしたスタッフの少ないイベントで、誰が助けてくれるかといえば、作家さんであり、まちの人であり、お客さん。みんなが横須賀を紹介してくれる。

100人来るのではなく、10人が10回来てくれた方が価値があると思っている。普通の観光とは逆。「10人しか来ていないのか」と怒られるところ(笑)。こうしたイベントができるのは、このまちのスケールだと思う。

実際に今日のスタッフは10人いない。遠州横須賀倶楽部47名中、動けるのは5~6名。組織は人が減りはじめて本物。やる気のある人が残る。固有名詞が出て、悪く言われて一人前。それは役に立つから。今日も、私がここにいること自体「あのやろう、こんな忙しいときに!」と言われている(笑)。

久しぶりに出会える「場」になっている。出会いは偶然ではなく必然だと感じる。「ちっちゃな文化展」に来てくれるお客さんはマナーがいい。品格が高いと感じる。

メンバーが動けなくなったら終わりでいいと思っている。後継者には、この文化展を続けてほしいとは思っていない。この方法論を続けてほしい。この「ちっちゃな文化展は、またこのまちに来てもらうための予告編」です。

(3)「ちっちゃな文化展」見学とまとめ
■「ちっちゃな文化展」を見学して





【参加者の感想】
・はじめにこのイベントの想いやコンセプトを聞いたので、意識的に楽しめた。
・道の幅、外に開かれた家のつくり、土間の空間がいい。
・まちなみのサイズ感がまちづくりにつながっている。
・都市整備の方法として、広い道路をつくればいいのではないと実感した。
・人の熱意がまちを活性化させる。
・自分のまわりにも財産がたくさんあったなあと感じた。見つけて結びつける役割をしていきたい。
・観光行政の評価は来場者数だが、評価の視点に滞在時間やリピーター数も入れ込むことが大事だと感じた。
・イベントごとというと、出店が出たり、ステージで何かやることが多いけれど、そうではないとわかった。何にもないことで逆に居心地がよかった。ゆっくりできた。
・事前に送ってもらった「食べものマップ」を活用して、お昼を食べた。地元の食べ物屋さんはなかなか入りにくいけれど、イベント開催時なら入りやすい。こうした機会がリピートにつながると思った。
・無理して何かを作ったのではなく、あるものを使っただけなのに、とても気持ちのいい時間だった。



■まとめ
中小企業診断士・6次産業化プランナー 中野眞氏



・繰り返すけれど、目的(地域の課題解決)と手段(地域資源の活用)を履き違えないこと。
・組織を維持することが大事になってしまっているNPOなどが多い中、この「ちっちゃな文化展」が14年も続いているのは、目的がブレていないこと、力相応でやっていること、それが大きな理由。
・小さな文化展の「大きな力」を現地で実感していただけたと思う。この力は「地域資源を活かして、希望が持てる暮らしを創造する」ことにつながる。とても大きな力だと思う。





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Re: 【第2回レポート】地域資源の活用による元気づくり
【返信元】 【第2回レポート】地域資源の活用による元気づくり
2012年11月01日 16:35
講座に参加させていただきました。
中野さんの「目的と手段を履き違えてはいけない」という言葉、とても心に響きました。
赤レンガ倉庫の皆さんの「土地を買ってしまいました」には活動に対する覚悟を感じましたし、遠州横須賀の鈴木さんのお話にはグっときました。
「メンバーが動けなくなったら終わりでいいと思っている。後継者には、この文化展を続けてほしいとは思っていない。この方法論を続けてほしい。この『ちっちゃな文化展は、またこのまちに来てもらうための予告編』です」は、本当に素敵な言葉だと思いました。

参加させていただいて良かったです。ありがとうございました!