カケレコ編集部の「【前編】「地域の見つめ方を問い直す」 ~内山節さんの言葉を拾う~」
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【前編】「地域の見つめ方を問い直す」 ~内山節さんの言葉を拾う~
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2013年03月08日 13:17
■掛川の魅力を伝えるために
 ~講演会企画意図(なぜ「動画事業」に「哲学者」なのか)~

NPO法人スローライフ掛川は「スロー」をキーワードに人をつなげ、地域の資源や財産を活かしたまちづくりを目指している。現在進行中の「掛川魅力発信動画コンテンツ創成事業」でも、地域の魅力を発信するためにはその根幹となる「地域を見つめる目」や「地域でどう生きるか」を、自分たちの中できちんと持っていることが大切だとずっと考えきた。
そんなとき、中日新聞でのコラム「視座」の言葉が目に止まった。
「震災以降、人々のまなざしは、自分中心のまなざしから、ともに生きようとする世界を軸とするまなざしへと確実に変わってきている」
この文章を読んだとき、地域に目を凝らし続けている内山節さんをお招きし、「地域へのまなざし」「地域でともに生きること」について語っていただきたいと切に思った。
そして、今回の講演会が実現した。

※スローライフ掛川として、内山さんをお招きするのは、
・2006年5月「足るを知るこことが生活を変える」
・2007年10月「私を変えた1960年代~浮遊(ふゆう)する個人~」
・2008年11月「里山の暮らしから新たな価値を見つける」
以来、実に4年半ぶりの講演会となった。

講演会「地域の見つめ方を問い直す」 ~内山節さんの言葉を拾う~

■3.11以降の社会

社会が変わりつつあると感じる。このままでは私たちが生きる社会がだめになってしまう、社会のあり方を根本から考え直さなければいけない、という動きは以前からもあったが、3.11以降、加速度的に広がってきている。その方向性は、ともに生きる社会、ともに生きる地域、ともに生きる経済だ。地域の再創造と経済の再構築を一緒に考える動き、といってもいい。

福島に若い人たちが戻ってきている。出ていく人ばかりではない。彼らは仕事があって福島入りするのではなく、結びつきを作りながら、働く場も作り、自分たちの地域を作ろうとしている。
日本の社会が大きく世代交代しているのだと感じる。自分たちは後ろに引っ込んで、背中を押す係に徹すればいい。


■若者が動き出した

今の30代はバブル以降に社会人になり、20代はバブルの記憶さえない。そうした環境で育った若者たちと私のように高度成長を経た人間とでは、考え方も行動もずいぶん違う。
経済至上主義により、常に勝ち負けを争う社会の中で、今、東京では20代、30代の50%が非正規雇用で働いている。運良く正社員になったとしても、厳しく悪辣な雇用環境で働く若者たちもいる。社会を良くしているのか悪くしているのわからないような会社で、やりきれない仕事に従事する若者たちもいる。
正規雇用でもかなりの人が地獄、非正規雇用は別の意味で地獄。どっちにしても地獄。今はその中でごく一部の人だけが「勝ち」という横暴な時代だ。

そのような中、若者たちのあいだに都心(山手線の外側あたり)の一軒家を数人で借りるシェアハウスの考え方が広がっている。テレビも冷蔵庫も洗濯機もシェア。ときに夕食づくりも順番にしたり、割のいい仕事の情報共有をしたり、お金を掛けずに旅をしたり、農村で新たなつながりを作るような若者もいる。

厳しい20年の間に身に付けた、こうした様々なノウハウが、若者たちに蓄積されているということだ。そして、そういう立場の若者の中から新しい動きが出始めている。もしかしたら彼らは「救い」の対象ではなく、これからの生き方を先取りしている素晴らしい人たちなのかもしれない。私たちは、彼らから学び直す必要があるのかもしれない。
彼らは、家賃の安い裏路地でいろんなタイプの店を始めたりしている。自分たちの世界を自分たちで作り始めたのだ。企業に依存するのではなく、自分たちでともに生きる社会を作り始めているということだ。

■ともに生きる社会、ともに生きる地域

3.11から2年が経ち、現地の課題は経済の復興なのに、国がやっているのは土木工事。東京の大手のゼネコンが仕事を請け負い、現地の企業は6次7次下請けという状況で、その仕事は決して魅力ある仕事ではないから、現地では労働力不足が続いている。

真に役立っているのは一般の人たちの協力だ。1口1万円のファンド(半分の5千円は債権放棄して寄付する仕組み)などで資金を集め、復興に役立てている。新商品を売り出すときにも、若者やボランティア、ときにプロの人が無償で関わっている。多様な関わり方で、ともに生きることを実践している。

今、人気のある言葉として「ソーシャルビジネス」がある。これは利益拡大が目的ではなく、自分たちが目指す目的を持続的にやっていくためにビジネス手法を取り入れるもの。本来、すべてのビジネスの基本はここにあった。東京電力でさえ、最初は農業用水の汲上げに電力が必要だったことから、地域の資産家が資金を出し合ったのがはじまり。今、原点回帰が必要だ。
ソーシャルビジネスは志はいいが、大抵は失敗する。でも失敗してもいいじゃないかと私は思う。彼らはその後またお金を作ってまたソーシャルビジネスをやる。経験をどんどん積んでいる。

もう一つ「コミュニティビジネス」がある。これも利益の最大化が目的ではない。地域の人同士がつながることが目的。都市部ではコミュニティカフェ、農村部では共同加工所などの形で広がっている。
経済協力を通じて自分たちも生きていく、という流れはこれまでなかった。既存の企業がソーシャルビジネス化している例もある。自分たちはどう社会に貢献するか、どう社員の働きがいを作ることができるか、企業自体も方向転換しようとするところがでてきた。
市場主義経済に委ねると、社会がバラバラになり、どんどんひどくなることを人々は自覚し始めている。ともに生きる社会、ともに生きる地域、ともに生きる経済、すべてセットでやることが重要だ。


■自然と共に生きる人の強さ

復興への歩みが早かったのは漁師さんたちだった。彼らは「大丈夫だ」と言った。その一番の根拠は「海は大丈夫だから」だった。海とともに生きる彼らは、社会は自然と人間でできていることを実感していた。今回の震災でめちゃくちゃになったのは人間の領分だけだとわかっていた。
三陸では「津波のあとは海が良くなる」と言い伝えがあった。長い間に海底にたまった堆積物を、津波が掃除してくれるのだ。大災害ではあるが、生態系にはプラスになる。実際、京都大学が調べたところ、一昨年の夏頃から海が良くなっていた。言い伝え通りだった。それは、漁師さんたちも身体で実感していた。
「海は大丈夫だ。あとは残りの領分で人間が何とかすればいい」。漁師さんたちはそう言った。

自然とともに生きる人たちは「大丈夫だ」といい、自然から離れて暮らしている人たちは絶望していた。ここには、自然とともに生きる人たちの強さがある。こうしたことが、危機的状況であらわになった。
自然とともに暮らす人たち、伝統的な生き方をしている人たちの強さ。内部のコミュニケーションと外部のコミュニケーションの両方を大事にしている人たちの強さ。結局、復興はつながりのあるところから応援の手が入る。
ここに、これから生きる世界のヒントがある。

【後編へつづく】

レポート:NPO法人スローライフ掛川/河住雅子

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Re: 【前編】「地域の見つめ方を問い直す」 ~内山節さんの言葉を拾う~
【返信元】 【前編】「地域の見つめ方を問い直す」 ~内山節さんの言葉を拾う~
2013年04月30日 15:28
ゲストさん
コメントありがとうございます。
今回のように、きちんとした議事録には残していないのですが、
2006年と2007年に内山さんに講演をお願いしているとき、
スタッフが簡単なレポートを紹介しています。
こちらをご覧ください。


■2006年5/11内山節氏講演会
http://ldc2006.seesaa.net/article/17976021.html

■2007年第7回 内山節氏講演 
私を変えた1960年代~浮遊する個人~
講師/内山 節氏(哲学者)
http://ldc2007.seesaa.net/article/61458771.html
Re: 【前編】「地域の見つめ方を問い直す」 ~内山節さんの言葉を拾う~
【返信元】 【前編】「地域の見つめ方を問い直す」 ~内山節さんの言葉を拾う~
2013年04月29日 20:00
内山さんの過去の講演録が文字になっていましたら、掲載頂けないでしょうか。