お名前:2号
みんなで一度行ってみますか。
熱くなれそうですね。
栃木県塩屋町にある「レイク塩谷」のサイトフィッシング・エリアはおそらく日本で一番難しい釣り場だろう。釣り場の大きさは30mx150m、全体に浅く、深いところでも1mくらいか。湧き水が流入しているが流量は少ない。水はやや濁り加減。平均40cm程のニジマスが放流してある。 ここは難しいことで地元の釣り師に知られているそうだ。難しい最大の理由は浅いことである。魚はよく見えていて、ときたまライズがある。ここは”サイトフィッシング”を楽しむ釣り場なので、インジケーターの使用は禁止である。 僕とK木氏の二人で10時半~2時半釣りをした。案内してくれた地元の3人の釣り師は釣りをせず、我々をサポートし、写真を撮ってくれた。結果は、K木氏はゼロ、僕は4回当たりがあり、2匹掛けて、取り込んだのは一匹だけだった。 ユスリカが少数飛び、ミッジフライに反応はするがくわえない。ミッジピューパでも同様。サイズは24-32番まで試した。ニンフ、マラブー、オーストリッチ、エッグと試したがくわえない。水面直下でフライを動かして誘ったがこれもダメ。 ここのニジマスはフライラインが水面に落ちるとサッと散る。非常に敏感である。釣ろうとして四苦八苦しているとき、僕はある事を思い出した。ここの状況はシルバークリークのサリバン沼(Sullivan's Slough)に似ているなあと。すると、僕がサリバン沼で使った「あの釣り方」が有効かも知れないと思い、試してみることにした。 フライにはビーズヘッドのマラブー・フライのホワイトを使い、魚の密度がもっとも高い場所にキャストする。鱒はサッと散り、フライは底まで沈む。何もしないで数分待つ、これが大事!待っている間に散った鱒は少しずつ戻ってくる。それからリトリーブを開始する。ほんのわずかずつフライを移動させる。フライは底を動いて、砂煙を上げて、マラブーは揺れて鱒を誘う。釣り人はフライラインの先端に全神経を集中させて、少しでも変化があれば合わせる。ガツンと鱒が掛かる! この釣り方は僕は誰にも教わったことはない。サリバン沼という難しい釣り場で窮地に立たされて、必死に考えて思いついた釣り方だ。その後、フライフィッシング用語辞典編纂のために調べていくうちにこの釣り方に名前があることを知った。ポーチャーズ・リトリーブpoacher's retrieveと呼ばれているそうだ。ポーチャーは密漁者なので、密漁者の引き釣りとでも訳しておこう。 水深が浅い場所では鱒から外界がよく見え、神経質になり、水面のフライには出にくくなる。沈んでいくフライに関心は示すが、フライが水面に着水して驚いた直後なのでフライをくわえるまでには至らないようだ。また、フィッシング・プレッシャーの高いこの釣り場ではもはや鱒はペレットとフライを見分けることができるだろう。それでも鱒は時折撒かれるペレット以外にも食べたいはずである。水底に居る虫なら、外界に神経質な鱒でも、比較的安心して食べるのではないか、と思ったわけだ。 レイク塩谷でもマズメ時やユスリカの羽化量が多いときにはドライフライでも釣れるだろう。それ以外の時はとても難しいと思われる。 K木氏はこだわりの人であり、ドライフライにこだわったのが釣れなかった理由だと思う。 実はポーチャーズ・リトリーブ意外にも釣り方はあるのだが、それはいずれということにしておこう。 だが、久しぶりにホネのある釣り場に行き、楽しんだ。ボウズかなと一時心配になったが、そこはそれ、ダテに経験は積んでいないんだから。”恋の駆け引き”ならぬ”魚との駆け引き”には、コチトラちょっと自信があるんじゃぞよ。 |