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2013年12月20日(金) 
中日新聞 2012年12月31日付 朝刊
【夢追う姿 応援歌】
夢をかなえる――。震災からの復興が始まったばかりの日本で、小さな幸せの種をまき、懸命に夢を育んでいる人たちがいる。大きな夢であれ、小さな夢であれ、それは周囲にも勇気や希望、元気を運んでくれる。足元の暮らしを見つめながら、夢に向かって走る人々を追った。

 歌が下手だから、不器用だから、誰よりも長い時間、路上で歌おう―。シンガー・ソングライターの宮崎奈穂子さんはそんな思いで5年以上、毎日のように路上ライブを続けてきた。そして、路上で出会った人たちの応援を募り、今年11月、日本武道館で単独ライブ開催を果たした。彼女は言う。「私のような普通の子でも、可能性を信じて動き続ければ、夢はかなう」
 キーボード、アンプ、宣伝用の看板…。重さ50キロの機材をカートで引き、JR山の手線に乗り込む。田町、品川、巣鴨…。改札口から吐き出される会社員の波に向かって、来る歩も来る日も、やわらかな声で歌う。
    ♪      ♪
 オーディションを受けてもすべって落ちて
 反対に友達は就職や結婚をして
 でも何か自分から動きだすために
路上ライブで歌う事に決めた
    ♪       ♪
 物心ついた時から、テレビの向こう側の歌手に憧れていた。だが、学校では丸い大きな眼鏡をかけ、どちらかといえば地味な存在。「笑われるのが怖くて、歌手になる夢なんて口にできなかった」
 それでも、大学1年の終わりに「このまま就職活動を始めたら一生、後悔する。可能性を試してみよう」と思い立った。
 カラオケボックスで録音したデモテープを延べ40社以上のレコード会社に送った。だが反応はなかった。ボーカルスクールに通いながら、作曲家の卵が作った曲に歌を吹き込むアルバイトに次々と応募した。ある時、その曲を聴いた小さなレコード会社からCDを出すことが決まった。
 CD発売を数か月後に控えた大学3年の夏、友達に借りたキーボードを抱え、初めて渋谷駅に向かった。混雑するハチ公前に行く勇気がなく、西口の歩道橋前に立った。だが、なかなか声が出ない。やっと歌い始めても、人並みはどんどん流れて行き、周りの視線が冷たく感じられた。
 二曲だけ歌って楽器を片付け始めた時、背広姿の男性が「いい歌でしたね」と声をかけてきた。「あの一言があったから、路上ライブを続けられた」と振り返る。
 その年の秋から本格的に路上ライブを始めた。始めはなかなか立ち止まってもらえなかった。冬空の下では、キーボードを弾く指先が真っ赤になった。
 「あなたの歌からは何も伝わらないね」。冷たい言葉を掛けられ、泣きながら帰る日も。泣くと声が出なくなり、また路上ライブを失敗することを繰り返した。
 それでも地道に歌い続けたのは、劣等感を抱えていたからだ。「顔が特別きれいなわけじゃない。ほかのアーティストに比べて、才能もない。何もないから、動くしかない」
 そのうちに、「俺も昔は夢を追い掛けていたんだ」「就職活動がうまくいかないけど、「頑張ろうと思った」と声を掛けてくれる人たちが出てきた。雪の日も風の日も、路上で歌う姿に元気づけられた人たちが、今度は彼女の応援を始めた。
 2010年7月、所属事務所の企画で、一年間にサポーターを1万5千人集め、武道館で単独ライブを開くという挑戦を始めた。サポーター一人から3150円を集め、それを武道館ライブ開催に向けた活動資金に充てるという内容だ。
 それからは毎朝、どこかの駅前で通勤客に手書きのチラシを配り、長い時には1日12時間路上で歌った。356日目に目標を達成した。
 ところが、武道館ライブ開催が決まってもチケットは売れない。「彼女は武道館で歌う器じゃない」という周囲の声が聞こえてきた。メジャーデビューしているわけでもなく、「順番が逆」という言葉が胸に突き刺さった。逃げ出したくなり、「私には何もないから、ただ動いてきただけ。もう限界です」とプロデューサーに打ち明けた。
 しかし、プロデューサーは「それでいいじゃないか」と言った。「普通の女の子でも、夢に向かって頑張ることで、あり得ないような夢をかなえられる。その姿そのものがメッセージになる」
 この言葉で迷いが消えた。
 6千人の観客が集まった11月2日の武道館ライブ。ステージに立つと、一番後ろの席まで顔がしっかりと見えた。さまざまな思い出がよみがえり、涙を何度もこらえた。
 翌日には再び、路上で歌っていた。
 年の瀬の巣鴨駅前。午後7時過ぎ、家路を急ぐ会社員や親子連れが流れてくる歌声に気付き、足を止める。
   ♪  ♪
 気温が0度の寒い冬も
 焼け付く日差しの真夏の日も
 今日も私は ただ歌いたい
 あなたと私の夢のために
 今日も心を込めて歌おう
 路上から武道館へ
   ♪   ♪
 夢を追ってここまで来た。見知らぬ人たちが、歌手になるという彼女の物語に自分の夢を託した。お互いの夢をつむぐ路上ライブは続く。
     (伊藤治子)

〈読者投稿〉
 「可能性を信じて動き続ければ、夢はかなう」。この宮崎さんの言葉が、私の心を引きつけました。大変なことばかりでも、夢を追い続けている人は、かっこいいです。あきらめなかったら、本当にお客さんだ増えて、だれかのがんばりは、必ずだれかが見てくれていると勇気づけられました。
 私にも、夢があります。それは、教師の仕事です。小学校のときに出会った先生に、学校の楽しさを教えてもらい、それから、この仕事にあこがれました。でも、家族に話すと、「大変だから、やめといたら」とか「もっと楽な仕事にしなさい」と言われました。心配して言ってくれるのは分かるけど、少し悲しくなりました。それに勉強も、もっとがんばらないといけません。すぐ自分に負けてしまい、努力はまだまだできます。だめなのかなぁと思っていて、見つけた新聞。私もがんばろうと、背中をおしてもらったような気がします。この記事を忘れずがんばりたいです。
    奥村夏菜子さん 13歳 愛知県
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 誤字脱字写し間違いあります。

閲覧数451 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2013/12/20 12:09
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