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2014年06月19日(木) 
第二章 気づかせること
  キャプテンは必要ない

 プロ野球のチームに、キャプテンという役割は必要ないと考えている。
 いつ頃からか、チームリーダーとしてのキャプテンという存在がもてはやされてきた。2004年のアテネ五輪、2008年の北京五輪で日本代表の主将を務めた私自身が、キャプテンとしてメディアから注目されたのが一因という面もあるだろう。
 もちろん、日本代表という即席のチームでは、ある程度リーダーシップを取れる人間が必要になるだろう。短期間でチームをまとめるうえでは、キャプテンを指名するのが得策だからだ。しかし、長いシーズンを戦うチームにとって、キャプテン制は必ずしも必要ではない。
 プロ野球選手は個人事業主である。選手全員が個人や家族の生活をかけて戦っている。前述したが、チームの全員が同じ志を持って、同じ方向を向くのが理想ではある。だが、プロである以上、自分がいい成績を残せば、翌年の年俸が上がる世界である。自分の成績を上げることだけを考える選手がいるのも、仕方がない面がある。
 誤解してほしくないのだが、そうした選手をチーム全体と同じ方向に向かせたり、役割を与えて仕事をさせるのは、キャプテンであったりチームリーダーの役割ではない。それは監督の仕事であって、選手が口を出すべきことではないのである。
 そもそも、チームリーダーという存在は、つくられるものではないと思っている。私自身も「お前がやれ」と誰かに言われたわけではなく、自然と自分がやらなければいけないという意識が芽生えたものだった。
 ヤクルトには古田敦也さんというチームリーダーがいた。実力もさることながら、強烈なリーダーシップでチームを引っ張る存在だった。私がチームリーダーを意識したのは、古田さんと近くで接しているうちに「いつまでも古田さんに任せているようでは、チームとしてダメだ」と思うようになったのがきっかけだった。古田さんに野球に集中させてやりたいという思いがあったし、35歳を越えたベテランになって若い選手に厳しいことは言いたくないだろうと思ったからだった。
 当然、私は古田さんのようにはできない。自分ができる範囲でやろうと考えたなかで、まずはマウンドに集まった時に古田さんがどういうことを言っているかを注意して聞いた。こういう場面では、こういう注意をしなければいけない。こういうタイプの選手には、厳しい言葉をかけてはダメだ。古田さんの姿から、少しずつ学んでいったわけだ。
 今振り返ると、誰かに「今年からチームリーダーになれ」と言われていたら、こういうアプローチはしていなかっただろう。結局は自分が気づくことができるかどうか。リーダーは自然に生まれるものだと思っている。
 2013年、ヤクルトが最下位に低迷した要因の一つに、キャプテン制が機能しなかった点を挙げる声が多かった。小川淳司監督は前年までの相川亮二に代えて、田中浩康という二塁手をキャプテンに指名した。もちろん小川監督を批判するわけではないのだが、残念ながら、田中は本来、キャプテンになるタイプの性格ではなかった。
 例えば、東京ドームでの巨人戦に連敗した直後に、真っ先に帰ってしまったことがあった。自身の状態が悪かったこともあったのだろう。もしかしたら、試合後に故障に治療に向かったのかもしれない。しかし、周囲からどう見られるかという意識があれば、一番に帰るということはしなかったのではないだろうか。
 前年までは「田中さんだからしょうがない」で済んでいたことが、「キャプテンなのにどうして真っ先に帰るのか」と批判が出てしまう。同じ行動をとっても、キャプテンという役職があると周囲からの見方が変わってしまうのである。こうした歯車の狂いは、チームにいい影響を及ぼさなかった。
 小川監督はキャプテンという役職を与えることで、田中に新たなリーダーとなることを期待したのだろう。だが、田中はその期待に応えることができなかった。「地位が人をつくる」という言葉があるが、キャプテンに関してはつくるものではなく、自然発生するものだと考えている。
 田中とは対照的だったのが、西武の栗山巧である。人から聞いた話だが、ある試合で秋山翔吾がバンドを失敗した。試合後にビデオを観て自分のバッティングフォームの確認をする秋山に、栗山が注意をしたという。
「バントの失敗はチームに迷惑がかかる。バッティングフォームを見る前に、バント練習するのが先だろ」
 周囲から自分がどう評価されているか。それが分かっている選手というのは、やはり少ない。そうした気づきを与えるのも、チームリーダーに求められる仕事である。この話を聞いて、栗山はキャプテンとしての資質があると感じたものだ。
 栗山にしても、周囲からつくられたキャプテンではない。中島裕之が大リーグ挑戦でチームを抜け、中村剛也が故障で出遅れるなかで、自然とチームリーダーとしての自覚が芽生えたのだろう。
 やはり、キャプテンはつくるものではなく、生まれるものなのである。
 栗山のように、30代前半のチームリーダーが育っているチームは強い。30歳になる頃には選手としても脂がのり、言葉だけでなく、プレーで周囲を引っ張れる年代である。ベテランではそうはいかない。故障もしやすいだろうし、ある程度の休養も必要だからだ。
 また、自分よりも年上の選手に意見するためには、プレーで示すことが必要になる。そのためにも、選手としてのピークを迎える30代前半はキャプテンとして適しているといえる。30代前半にしっかりした選手がいることが強いチームをつくるともいえる。
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閲覧数966 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2014/06/19 12:01
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