3月9日の78才女性の投稿作品より 名古屋駅から午後五時すぎの電車に乗った。横並びの座席に乗る。 私の前の席に、二歳ぐらいの女児を抱いた母親。四歳ほどの坊やは雨が降る窓の 外を見ていた。時々、彼の背中を母親が支える。最初は気付かなかったが、どうやら彼は眠っていたらしい。 「ジュン、降りるよ」と母が声をかけ、靴を履かせた。彼は立ったが歩けない。大きなバッグを抱えた母親は彼を引っ張るが、彼は少しも動こうとしない。 かれは立ったまま眠ってしまっている。 そのとき、どこからか「ガンバレ」と、五十代ぐらいの女性から大きな声が かかった。あちらこちらからもガンバレコールが起こった。もちろん私も。 女子高校生たちからは大きな手拍子が。 そして、彼は歩いた。一歩、二歩、三歩と。一瞬、けげんな顔を見せたが、 彼は歩いた。拍手に戸惑いながら歩いた。通過列車待ちで、停車時間は少し 長かったが、彼は無事、ホームに降り立った。 電車が動き出す。降りしきる雨の中、母親は深く頭を下げた。三人の姿が少しづつ小さくなり、雨の中に消えた。 わずかな時間であったが、いっぱいのぬくもりをもらった。今、私の心は 寒くない。子育てに奮闘する若いママ、小さなお兄ちゃんに、大きなエールを 送ろう。 この投稿文を見て、うっすらと涙を浮かべてしまいました。 子育ての時、母親なら同じような場面に遭遇したことも多かったと思います。 |