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忘れるってのは本当にいいことだな。 第27作『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』から 寅さんは江戸っ子です。苦手のものは関西弁と薄味の料理です。その寅さんが、大阪は通天閣の近く、新世界に、長逗留(とうりゅう)したことがあります。寅さんとディープな大阪、一見似つかわしくない組み合わせですが、その理由は、美しい女性に恋をしたから、ということであれば話は別です。 松坂慶子さんが、北の新地に咲いた美しい浪花芸者・浜田ふみを演じた第27作『浪花の恋の寅次郎』は、味わい深い、しっとりとした大人の恋の物語です。 … [続きを読む] |
おまえ今、なんでも欲しいものやるって言ったら、何が欲しい? 第26作『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』から さくらと博夫婦が結婚したのが、1969年のこと、以来、二人の住まいは、とらやにも近い、柴又四丁目のアパートでした。柴又駅から京成線の線路を高砂方向に五分ほど歩いた辺りにあったアパートで撮影が行われていました。 アパート名は変わりますが、第5作『望郷篇』から第25作『寅次郎ハイビスカスの花』まで、ほぼ同じ場所で撮影されていました。 さくらの部屋には電話もなく、いつも呼び出しでした。さくらは、得意の洋 … [続きを読む] |
俺はおめえ、リリーの夢を見てたのよ。 第25作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』から 浅丘ルリ子さんふんする放浪の歌姫・リリーの本名は松岡清子。その三度目の出演となった、第25作『寅次郎ハイビスカスの花』は、1980年の夏に公開されました、巡業に出かけた沖縄で倒れ入院したリリーのために、苦手な飛行機に乗って飛んでいった寅さん。その気持ちがうれしくて、最高の笑顔を見せるリリー。 第11作『寅次郎忘れな草』の網走での出会い。第15作『寅次郎相合い傘』での函館での再会。根無し草の二人は、お互いの悲しみを共有でき … [続きを読む] |
よお、備後屋(びんごや)、相変わらずバカか? 『男はつらいよ』各作から 寅さんは柴又に帰ってくると、参道を歩く備後屋さんに「よぉ、相変わらずバカか」と声をかけます。いきなり相手にそんなことを言うのは失礼ですが、幼い頃よりお互いを知っている親しみと気安さからということは、よくわかります。 その備後屋さんを演じたのは、装飾・小道具スタッフである露木幸次さん。役者さんではありません。持ち前の明るいキャラクターで、現場を和ませてきた、名物スタッフの一人です。 露木さんが、二代目・備後屋を襲名したの … [続きを読む] |
渡り鳥の北帰行もそろそろ終わる頃だろうか。去ってはまた来(きた)る鳥を見守る日本人の心のやさしさに触れた噺(はなし)がある。落語には珍しく水戸黄門が登場する「雁風呂(がんぶろ)」だ。 身分を隠してお忍びの旅を続ける黄門公。東海道は遠州掛川宿に近い茶店で休憩をとる。奥の小上がりの座敷に通された黄門公は、場所柄少し不似合いな屏風(びょうぶ)に目をとめた。 狩野派の高名な絵師の筆に間違いはないが、黄門公が不思議に思ったのはその図柄。 浜辺の松に雁とは妙じゃ。雁ならば月、あるいは水辺の蘆(あし)との取り合わせが定石だ。松ならば鶴であ … [続きを読む] |
〈特別篇〉寅さんの“家族の”ことば・御前様のことば 仏様は愚者を愛しておられます。 もしかしたら、私のような中途半端な坊主より 寅の方をお好きじゃないかと、そう思うことがありますよ。 第39作『男はつらいよ 寅次郎物語』から 第1作で寅さんが20年ぶりに柴又に帰ってきたのが、帝釈天の宵庚申の縁日です。おいちゃん、おばちゃん、さくらより前に、寅さんが帰還を報告するのが、御前様こと題経寺の住職・坪内日奏(笠智衆)でした。 寅さんが、父・車平造と柴又芸者お菊との間に生まれてほどなく、お菊が関西に … [続きを読む] |
〈特別篇〉寅さんの“家族の”ことば・タコ社長のことば おばちゃん大変だねぇ、 寅さん、恋の病で寝込んじゃったっていうじゃないか。 第12作『男はつらいよ 私の寅さん』から とらやの裏手で、朝日印刷株式会社を経営している、タコ社長には、劇中ほとんど呼ばれませんが、桂梅太郎というれっきとした名前があります。終戦直後、奥さんと始めた印刷工場を、昭和40年代から平成にかけての、激動の日本経済のなかで、どうにかこうにか切り盛りしてきました。 おいちゃんこと、車竜造とは昔なじみということもあり、車一家 … [続きを読む] |
〈特別篇〉寅さんの“家族の”ことば・満男のことば おじさんは、他人の悲しさや寂しさが、 よく理解できる人間なんだ。 第47作『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』から 博とさくらの一人息子・満男は、第1作のラストで誕生しました。変わらないことを身上とした「男はつらいよ」のなかで、子供から大人へとダイナミックな成長を遂げていったのが、満男です。第27作『浪花の恋の寅次郎』からは、それまでの中村はやとくんとバトンタッチして、『遥かなる山の呼び声』(1980年)で倍賞千恵子さんの息子役で出演した吉岡秀隆くんが演じることとなりま … [続きを読む] |
〈特別篇〉寅さんの“家族の”ことば・博のことば つまり、兄さんの言いたい事は、 平凡な人間の営みの中にこそ、幸せがあるとでも言うのかなぁ。 第8作『男はつらいよ 寅次郎恋歌』から 第1作『男はつらいよ』で、裏の印刷工場に勤める諏訪博(前田吟)が、さくらに一目惚れしてから三年。寅さんがその橋渡しを買って出ますが、それがうまく行かなかったと思い込んだ博は、工場を辞めて、北海道に帰ろうとします。三年間の恋慕を告白した博は「僕は出て行きますけど、さくらさん幸せになってください」と立ち去ります。 そ … [続きを読む] |
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