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お茶のこと、一から教えてもらおう~! ~知ってるようで知らなかった「掛川の茶産業」~
2012年02月27日 11:44
掛川茶商協同組合理事長の中根福次さんに聞く!

お茶の産地である掛川市。私たちは普段から当たり前のようにお茶を飲み、「お茶を飲む生活」がライフスタイルの中に溶け込んでいます。
美味しく、ほっとでき、健康にもいいお茶。昨年は「ためしてガッテン」で取り上げられたことから、「深蒸し茶」「掛川茶」という言葉が全国で知らせるようにもなりました。
でも、私たち、本当にお茶のこと知っているの?
美味く飲めるだけでも幸せだけど、知っていたらもっと深く味わえるかも……。

今回、掛川茶商協同組合理事長の中根福次さんにお話を伺い、お茶のこと、掛川の茶産業のことを一から勉強し直すつもりでいろいろ教えていただきました!



■まずは、お茶のできるまで(予習1)
①スタートは茶畑。お茶の収穫(茶農家)
②生葉を荒茶に加工(茶工場など) 「蒸す」→「揉む」→「乾かす」
③荒茶を仕上げて商品に(茶問屋、茶商など) 「荒茶の茎や粉を取る」→「もう一度乾燥」→「特色の異なる葉をブレンドする」

■荒茶になるまで(予習2)
②の「荒茶の加工(蒸す→揉む→乾かす)」には、様々な工程があり、実にたくさんの機械が使われています。
・茶葉を蒸す「蒸し機」
・蒸し終えた茶葉を乾燥「葉打機(はうちき)」
・さらに揉みながら乾かす「粗揉機(そじゅうき)」
・水分を均等にしながら揉む「揉捻機(じゅうねんき)」
・固まった茶葉をほぐしながら乾燥「中揉機(ちゅうじゅうき)」
・葉の形を整えながら乾かす「精揉機」
・揉み上げた茶葉を乾かす「乾燥機」
・荒茶の完成!

以前取材した掛川信用金庫顧問の杉本周造さんがおっしゃっていました。
「お茶の歴史を考えても、掛川のお茶という産業ほど、お茶に関わっている人が発展させてきた業界はありません。お茶刈り機もお茶刈りばさみも粗揉機も揉捻機も関係者が開発してきました。現場が、産業を発展させてきたんです。それが、掛川の製造業の素晴らしいところです」

茶業の「原点」と「これから」の記事は こちら


※予習については、主に静岡新聞「週刊Yomoっと静岡」「さぁシーズンだ。新茶取引スタート」(平成23年5月1日号)を参考にさせていただきました。

■茶商さんの仕事とは(中根福次さんにインタビュー)
③の「荒茶を仕上げて商品にする」までの工程を、掛川茶商協同組合理事長の中根福次さん(中根製茶さん)に詳しく教えていただきました。

●大事なのは仕入れ
茶商の仕事は、4月5月に一年分の荒茶を仕入れ、荒茶の茎や粉を取り除き、消費者のニーズに合わせてブレンドし、仕上げ加工して、商品にして売り出すことです。掛川茶市場で取引される4月24日頃から5月15日頃までの間は、前の日が雨でない限り、毎日仕入れします。朝の4時半から8時頃まで。約3時間半に300くらいあるお茶を「目」だけで100くらいに絞り、あとは「香りと味」で選んでいきます。その繰り返しで、仕入れを行いますです。この時期に一年分を仕入れるので、よい原料をいかに仕入れるかが大事なのです。

●仕入れは目利きの職人仕事
同じ掛川市で育っても、土質や茶畑の形状、斜面の向きや温度差、気候、それから作り手の技術力によってお茶は全然違います。お茶は「香り」「形」「水色(すいしょく)」「滋味(味)」の四つが大事ですが、一つで全ていいというものはなかなかありません。補い合ってプラスになります。19歳からお茶の仕事を始めて43年になりますが、一般の方には同じように見えるお茶も、「このお茶はこんな味」というのがだいたいわかります。その先は水色(すいしょく)でと匂いで確認していきます。
匂いが大事なので、辛いものは食べないようにしています。タバコもやめました(笑)。でもその前の「目」で選ぶことの方が多いですね。「匂い」はその先です。

●お茶をブレンドするということ
うち(中根製茶)だったら、荒茶の状態で500品目くらいあります。どれとどれをどう組み合わせるかが、それぞれの茶商の特徴を出す大事な仕事もであります。お客様が1種類だけを指定してくる場合もありますが、大抵3~5種類くらいをブレンドします。仕入れたものは頭に入っているので、前年度を思い出しながら、またお客様の好みに合せ、また消費地のニーズに合わせ、ブレンドしていきます。

掛川には42の茶商さんがあります。うちの場合は「さわやかながら、味が濃い」のが特徴です。それぞれの店によってそれぞれの特徴があります。味と香りは好みだから、目で見えるポイントの「お茶の色や水の色」にこだわる店もあります。市内にせっかく42もあるのだから、いろいろ試して自分の好きなお茶を見つけるのも楽しいと思います。

●お茶の魅力とお茶を飲む文化
お茶は、いっぷくできる、心のやすらぎが得られる、心を潤す、そんな魅力があると感じています。そして、掛川市立総合病院の鮫島庸一先生の研究で健康にいいこともわかってきました。

今、生活様式の変化で急須で淹れるお茶が飲まれなくなっています。お米も昔ほど食べなくなったし、そもそも和室や急須がないお宅だってあります。
核家族化が進み、みんな揃って食卓を囲み、お茶を飲みながらおしゃべりすることも少なくなりました。昔はおばあちゃんがお茶を入れてくれたものでしたが……。お茶は、コミュニケーションの仲立ちの役割を果たしていたのだと思います。

それでも、「掛川の人はお茶を飲むんだ」ということを伝えたい。難しいことはなしで、「楽しいから」「好きだから」「美味しいから」、そんなシンプルなのがいいと思うんです。

●「深蒸し茶」の美味しさ
掛川を含めこのあたりの茶産業は、それまでの「見た目のきれいなお茶が良いお茶」という常識をくつがえし、普通の煎茶の倍近い時間をかけて蒸す「深蒸し茶」にたどり着きました。長く蒸すため、芽先の葉肉が切れて細かくなりますが、細かい網目のついた深蒸し急須を使うことで、とても美味しく飲めます。

深蒸し茶の場合、荒茶を作る工程で「どこまで蒸すか」が重要です。機械には「水分が何パーセントになった」と出ますが、最終的には人間の経験とカンがものをいいます。機械に手を入れ、握りながら、その感触と匂いを確かめるんです。
よく、テレビのニュースなどで「手もみ保存会」の様子が放映されますが、あれはもちろん「手で揉むという文化の保存」という意味もありますが、手で揉むことを経験することで、茶葉の感触を手に覚えこませるための勉強にもなっているのです。

●お茶農家の一年とは
お茶農家の一年は、茶の木の整枝、肥料、土の管理、山草を枯らして敷き込むなど、いろいろな作業があります。美味しいお茶ができるまでには手間がかかります。管理を怠れば、来年の一番茶に影響します。手を抜けば、それだけのものしかできないし、手をかければいいお茶ができるということです。
お茶を見れば、お茶を作っている人の性格もわかります(笑)。この人は几帳面だとか、丁寧な仕事をする人だとか。お茶に、表れるんです。

●お茶産業お支える人たち
そのほかにも、茶産業はたくさんの人たちが関わっています。荒茶にする工程だけでもたくさんの機械がありますが、お茶を生産する段階でも、芽を刈る機械、木をならす機械、消毒する機械、肥料をまく機械、全部違います。肥料やさんも大切です。
あと、金融機関も大きな存在です。お茶は5月に一年分を買う季節商品なので、資金繰りのための借入をしなくては仕事ができません。一年分を仕入れるために資金を借り、次の新茶までに返すという流れです。
お茶の缶や袋や箱、包装紙やラベルやのぼりを作ったり売ったりする会社も、茶産業を支えています。全国各地へお届けするために宅配業もそうですね。
そんなふうにして、たくさんの産業に支えられて、茶産業は成り立っています。



今、掛川茶商組合では「掛川茶ウォーキングマップ」を作成して、グリーンツーリズムやウォーキング大会の企画をしています。美味しくて、健康にもよくて、ほっとできて、コミュニケーションの仲立ちにもなる、そんなお茶の魅力を、私たちがきちんと発信していけるような機会やプログラムを考えていくことが大事なんだと思います。
お茶が飲まれることで、掛川の美しいお茶畑の風景も守られる、私はそんなふうに思っています。



(中根製茶株式会社にて)

取材レポート:いいじゃん掛川編集局/河住雅子

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