市民記者コーナーの「伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展」
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伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展
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2012年03月15日 20:30
 3月3日~5日、竹の丸で開催された「葛のある暮らし展」におじゃましてきました。
 掛川が全国に誇る伝統産業・葛布の伝承活動の一環として毎年 達人に学び伝える会のみなさんが主催している展示会です。




 ギャラリーには会員のみなさんの作品を中心にした葛布を用いた小物から大作までがずらり。
 細やかに織り込まれたシックで伝統的な葛布はもちろん キラキラ光るラメ糸を織り込んだリッチな雰囲気の葛布や さまざまな色に染め分けた葛苧を用いたカラフルなコースターなど お土産屋さんでよくみかけるような「高級そうだけど地味で古めかしい葛織物」のイメージを見事にくつがえす お洒落で楽しい作品がいっぱい。
 和布と組み合わせて大ぶりのバッグにしたり、他の素材と合わせて壁掛け風にしたり 蔓や木の枝を使ってナチュラルテイストの壁飾りに仕立ててあったりで、畳に着物の生活から離れてしまった現代の暮らしにも自然に溶け込みそうな葛作品の数々に、「葛布ってなんだか新しいかも」と嬉しくなりました。




 ギャラリーに掲示されていた「掛川における葛布の歩み」という資料によれば、源頼朝が原田荘(現在の掛川市原田地区)城主の葛の直垂(ひたたれ)に目を留めた折、城主が「この紺葛布は当国の物産なり」と答えたという逸話があり、葛布は鎌倉時代以前にすでに掛川の特産品となっていた様子。




 和室に展示されていた別の資料(毎日グラフ1965年5/2号)によれば、掛川以外でも葛の自生地では庶民レベルでの葛布の生産がされていたけれど、戦国時代の動乱の中で生産は途絶え、葛布の産地は全国でも掛川だけになったのだそうです。
 もともとは農民の野良着用だった葛布も、染色技術が進み艶やかなものが織られるようになると、裃・羽織・袴などに武士が好んで用いるようになり、他国の大名から羨望のまなざしを受けたのだとか。
 武士たちはご自慢の葛布をひとりじめ?したかったのか、江戸時代には名字帯刀以下の葛布使用を禁じてしまったため、明治維新でサムライの時代が終わると葛布の用途はぱったり途絶え、大半の葛布問屋は転業してしまいます。


葛布織りの裃と火事場装束/織り機を3台並べて織ったという葛の壁紙

 そこで掛川の葛布職人が考え付いたのが襖紙への代用。これが大人気で掛川葛布の名は再び全国に響き、明治20年ごろには最高級壁紙としてアメリカに輸出されるようになり面白いほど葛布が売れる時代が訪れます。けれども、戦後コストの安い韓国産葛布が出回るようになると、再び掛川の葛布産業は大打撃を受け、30軒近くあった葛布業者も昭和の終わりには10軒ほどに減り、さらに現在では葛布屋さんは市内に2軒しか残っていないのだそうです。

 そんな掛川葛布の盛衰をうかがった後で観る貴重な歴史的資料の数々からは 葛を生業にしてきた人たちの活気や手のぬくもり・息づかいさえ感じられるようで、葛布という存在が今までよりもぐっと身近になった気がしました。



 今回展示されていた資料のほとんどは、かつての葛布問屋さんや葛布職人さん、あるいは一般の方々のお宅やお蔵に保管されていたものをお借りしたもの。
 もちろんその資料の稀少さを意識して大切に保管されているものもありますが、中には古くて価値のわからないものとして処分されかけていたところにたまたま出くわして運よくお預かりできた資料もあるとのこと。

 時が過ぎ、代がかわってゆくなかで、家庭に置かれたものは劣化してゆくし消えてゆく。掛川の一大産業を記してきた大切な資料がこれ以上失われないように、掛川葛布の歴史を保存できる公的な施設ができることを望みます、と達人に学び伝える会の会長さん。
「葛布問屋のお屋敷だった竹の丸にそういう展示室ができたら最適だと思う。使われていないお蔵を改装したら素敵になるんじゃないかしら」と夢を語る会員さんも。



 薄暗いお蔵や押入れの中でひっそりと眠っている葛布の歴史的資料だけでなく、達人に学び伝える会のみなさんが年月を費やして拾い上げ伝承しようと努めてきた葛布作りの技も、これから先 途絶えることなく次の世代の方々に受け継がれていかなければ、掛川市民としてもったいなすぎると思います。

 そのためにも、まずは若いひとたちにも葛布に興味を持ってもらうこと。
 ゆっくりでも、ちいさな一歩でも、何もしないよりはきっといいと信じて。



 達人に学び伝える会では今年も葛苧作りや葛織り体験を計画されるそうです。
 興味をもたれた方はぜひ!eじゃん掛川の 達人に学び伝える会コミュニティをチェックしてくださいね。

(今までの関連記事)

●掛川の伝統産業を学び伝える~葛苧つくり体験
http://e-jan.kakegawa-net.jp/modules/topic/topic_vi…=&l=20

●葛の繊維にふれて親しむ~葛の和紙作り教室
http://e-jan.kakegawa-net.jp/modules/topic/topic_vi…=&l=20

●雑草から産み出す工芸品~葛布織り体験講座
http://e-jan.kakegawa-net.jp/modules/topic/topic_vi…=&l=20


書き込み数は3件です。
[ 日付順 ] [ 投稿者順 ]
Re: 伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展
【返信元】 伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展
2012年08月12日 09:23
★くれりんさんすみませんでした。eジャンご無沙汰でした。
素晴らしい展示会の報告ありがとうございました。
今年も葛苧つくりは終了しましたが
葛布織り体験や」展示会を計画していますので見に来てください。
○ゲストさん
興味を持っていただきありがとうございます。
毎日グラフは元業者さんから借用したものです
葛に関する資料は図書館にコーナーとしてあります。
活用してください。
私たちが見落とした物もあると思いますのでまた発表して私たちの活動にも協力してください。 
達人に学び伝える会M
Re: 伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展
【返信元】 伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展
2012年08月10日 16:58
前文の「こんにちは」の「ち」に誤りがありました。
すみませんでした。
Re: 伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展
【返信元】 伝統工芸の記憶を消さないで!~葛のある暮らし展
2012年08月10日 16:56
こんにつは。
現在葛布について色々と調べているのですが、本文中にある「掛川における葛布の歩み」や「毎日グラフ1965年5/2号」といった資料は図書館など一般的にあるものですか?