この、ネジバナ。この鉢に種を蒔いたのでもないのに、昨年、知らないうちに生えて育って咲いてくれた。今年は数を増やしてまた咲いてくれたよ!また来年もと頼みたくなる。
<捩花(ねじばな)はねぢれて咲いて素直なり>青柳志解樹(しげき)。ネジバナは夏の季語。まっすぐ天に伸びた緑色の細い茎に、小さな小さな桃色の花が、らせん階段のように並ぶ、野生のランだ。こんな句もある。<捩花のもののはづみのねぢれかな>宮津昭彦
▼それにしても、ネジバナの花々はなぜ、あれほど見事ならせんを描いているのか。富山大学の石井博教授らは、そのねじれ具合と、花粉を運ぶハチとの関係を調べた。ねじれが強いものと弱いものでは、どちらが生存に有利なのか
▼ねじれが弱いと、小さな花々が縦に並ぶから、ハチはたっぷり花粉を運ぶが、同じ個体の中で受粉される「自家受粉」を起こしやすい。ねじれが強いと、ハチが花粉を運ぶ量は減るが、すぐ他の個体に飛ぶので「他家受粉」となりやすい。量の面ではねじれが弱い方がよく、質の面では強くねじれている方がいい。一長一短。どっちもどっちというわけだ
▼ネジバナには右巻きと左巻きのものがあるが、これも半々。石井教授は「ねじれの強弱、右巻き左巻きで、どちらかが有利なら淘汰(とうた)が起きるはずですが、そうなっていない。そもそもなぜらせんなのかも、実は分かっていません」と解説する
▼強も弱も、右も左も。どっちつかずのねじれ方こそ、可憐(かれん)なネジバナのしたたかな生存戦略かもしれぬ
▼<まっすぐに生きてるつもりねじれ花>たかはしのぼる
↑↑(平成29年7月22日中日新聞朝刊コラムです)昨年6月5日載せたものをまたコピーしました。また来年も咲いたら載せようと思う。