まち本!の「83歳、まちの靴の修理やさん」
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83歳、まちの靴の修理やさん
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2010年01月04日 15:02
83歳、まちの靴の修理やさん

ハタノ靴店の創業は大正10年。お父さんの代から88年間、靴の修理業を営んでいる。
現在、二代目にあたる畑野勝彦さんは83歳だという。

 

掛川城周辺の取材中、ぶらぶらと逆川沿いを歩いていたら「クツ修理・ハタノ靴店」の看板を見つけた。以前、静岡県立掛川西高校そばにあり、私も何度か靴の修理をお願いしたことがあった靴屋さんだ。
「お店、まだやっていたんだ~!」
以前の場所にはもうない「靴の修理屋さん」。安い靴があふれ、修理して靴を履くなんてことがなくなりつつある今の時代において、もうお店はなくなってしまったのだと思い込んでいた。
でも、まだ、あった。
思わず嬉しくて、アポイントもないまま突然お店におじゃまして、お話を伺った。



ハタノ靴店は大正10年創業。畑野さんは二代目なんですね。

ああ、父親の代からやっているからね。
学校を出たあと、この家業を手伝っていたんだが、1年経ったときに徴用で軍需工場に行ったんだ。終戦を迎え、家に戻ってきた頃、軍からの放出物資で皮が配給されるようになり、「それなら、また靴の修理でも始めようか」と父親と家業を再開したんだ。
あれは…、私が21歳の頃だったな。

その後、高度経済成長の時代を迎え、靴の底は皮底(かわぞこ)からゴム底に変わっていった。安く靴が手に入るようになり、「靴が痛んだら修理に出す」から「買い換える」という発想へ変わっていった時代だね。

 

「靴の修理」というご商売としては、大変な時期だったんですね。

ああ。靴の修理だけではやっていけないから、店は父親が切り盛りし、私は勤めに出たんだ。靴の修理は家に帰ってからと休日に手伝った。定年を迎えるまで続いたかな。
定年を迎えたとき、友人たちから「畑野、もう勤めには出ないでずっと家業を続けろよ」と言われたのをよく覚えているよ。それ以来、ずっと靴の修理を続けている。



やっぱり手先が器用だったんですか?

いや、学校のとき、工作はいつも「丙」だった(笑)。でも仕事だからね、なんとか覚えてやれるようになった。今も難しい修理を頼まれて、あれこれ考えて、工夫して思ったようにできたときには嬉しいね。お金をかければいくらだってできるが、安く、きちんと、お客さんの要望に応えるのが私の仕事だからね。

今、「靴の修理」に来るお客さんは減っているんですか?

…そうだね。昔は掛川に10軒あった修理屋も、今じゃあ、うち1軒になってしまったと聞いている。
ただ、昔から直して履いてくれている人たちの中には、ずっと来てくれる人もいるよ。若い子も案外来てくれる。母親が靴の修理をする家は、娘さんたちも「靴は修理して履ける」ことを知っているからね。

店の場所が変わってしまったのが大きいかな。ここに越してきたことを知らない人も多いからね。こっちに来て、もう11年くらいにはなるんだけどね。

83歳には見えませんね。とてもお元気で…。

目も手も、なんとか現役だ(笑)。
そんなに細かい仕事ではないから大丈夫だよ。
ただ、新聞を読むときにはメガネをかけるし、字を書くのときには手が震えて下手くそな字になるね(笑)。
店をやめようなか、と思うときもあるけど、まあできるところまでやっていくよ。



お正月の温かな日差しをあびて、畑野さんはゆったりとパイプ椅子に腰掛けていた。「ハタノ靴店」と書かれたガラス越しに畑野さんの姿が見えたとき、私は本当に嬉しかった。
今度、お仕事のこと、もっとゆっくりと聞かせてください。
またおじゃまします。

靴修理・ハタノ靴店
掛川市掛川1136-9
0537-22-6784

[取材レポート:河住雅子]


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Re: 83歳、まちの靴の修理やさん
【返信元】 83歳、まちの靴の修理やさん
2010年01月06日 13:35
「原稿、こんな感じで書きましたよ」
とハタノ靴店におじゃましました。
畑野さんはこないだと同じように、ポカポカと日のあたるパイプ椅子に座っていました。

「年なんだけど…、今年の9月で84だけど、今はまだ、83歳なんだよ…」
はにかんだ笑顔でそう話してくれた畑野さんは、とても素敵でした。

そして今日は、こんな面白いお話も聞けました。
「靴底の減りを見ていると、今と昔では違うんだ。昔の女性は内側が減っていたけれど、今の女性は外側が減る人がほとんどだ。今の女性は堂々と歩くんだね」

時代によって靴の減り方も違う…、面白い発見でした!

河住

Re: 83歳、まちの靴の修理やさん
【返信元】 83歳、まちの靴の修理やさん
2010年01月05日 11:40
そんなお店があるのをぜんぜん知りませんでした。
後継ぎの方はいるのでしょうか。
何とか残したいお店ですね。

編集局さん、これからも貴重な情報どんどん載せて下さい。
Re: 83歳、まちの靴の修理やさん
【返信元】 83歳、まちの靴の修理やさん
2010年01月05日 10:29
 昨年、私も靴の修理をしていただきました。84歳!!とても見えませんでした。70歳くらいかな?と、、、ずっと以前若かりし頃直していただいたのはお父様だったんですね。ふっくらまるいやさしいお顔でした。思い出します、、、私も もうやめてしまったかと思っていたら 転居先をみつけ うれしかったです。御前崎から見えた方が私の前に いらっしゃいました。これからも、こつこつ続けていって欲しいです。