■［シリーズ］掛川がんばる人の輪

村のユンボ修理屋さん
戸塚勝敏さん（原里）

「がんばる人」が「がんばっていると思う人」を紹介し、その紹介された人が、さらに「がんばっていると思う人」を紹介し……、というように次々に掛川のがんばる人の輪をつなげていくシリーズ「掛川がんばる人の輪」。
大和田で果樹園オープンを目指す細野さんから紹介されたのは……。
「オレの友だちでユンボの修理をやっているやつがいるんだ」
ということで、原里でユンボの修理業を営んでいる戸塚勝敏さんの仕事場へおじゃましました。



まずは、どんなお仕事をされているのかご紹介下さい。

ユンボの修理と、型の古いものを修理して中古販売する仕事もしているよ。
もともとは建設機械の修理の仕事をしていたんだが、あるとき転勤命令が出てね。栄転だとしても、単身赴任して地元を離れるくらいなら、会社を辞めて自分で商売を始めようと思ったんだ。自分の修理の技術を活かすなら、知らないところより自分の地元でやりたいと思ったから。



地元には、60歳から70歳くらいで畑仕事をしている人たちが大勢いる。茶畑は何年かおきに掘り起こして苗木を植えなければいけないけれど、お年寄りでも扱える小型の機械があれば手でやるよりも楽にできるから、小さいユンボが出れば修理して中古販売をしているんだ。
ぼくは、百姓をする人が一番りっぱだと思っている。ご先祖様から受け継いだ土地を守る、そのお手伝いができればと思ったんだ。
地域貢献なんていうと、カッコよすぎるけど、自分が一番立派だと思う農家の人たちが、少しでも楽に、楽しく、農業ができればいいし、そのお手伝いがしたいと思ったんだ。売上を上げるとか、効率とか、そういうのはもういいと思ったんだ。それに、どうせ自分が食っていくための商売をするのなら、地域とつながっているところで仕事がしたかったんだ。……カッコよすぎるかな、恥ずかしいな（笑）。

この原里は戸塚さんの育った場所なんですね。実際、地元でご商売をされるのはどんな感じですか？

気心が知れている人との付き合いはいいね。「業者」ではなく「戸塚さん」と言ってもらえる関係で仕事ができるのがいい。会社勤めをしていた頃よりずっと楽しいよ（笑）。
例えば、雨でも人が来てくれる。この小さな事務所に入れ替わり立ち代り7人もの人がいたことがあった。会社員時代のとき上下関係のあった人も、今は対等に「人と人のつきあい」ができる感じだね。

それにしても素晴らしい景色ですね。こんな風景の中で修理の仕事ができるのは気持ちがいいでしょう。

都会に住んだことはないし、掛川から出たこともないけれど、本当にここは素晴らしいと思う。「原里」という地名も「いい名前だなあ」と思うね。日本の原風景のような場所だと感じるよ。
四季折々の風景があり、山があり、海もある。日本で一番好きな県が静岡県で、その真ん中にある掛川市が大好きなんだ。畑仕事も自分の仕事も、こうして田舎で土地があるからこそできることなんだなあと思うとありがたいね。
農業をされるお年寄りの中にも、この風景が好きだから、土地を荒らしてはいけないから畑にするという人も多いんだ。そんな人の話をするのは嬉しいよ。



どんな修理が多いんですか？

油がもれるとか、ここがいつもと違うとか、ちょっと見てくれやーとか、そんな具合だよ（笑）。
それにしてもお年よりは元気だね。うちの親も元気だよ。声もどでかいしね（笑）。
何でも自分の手でやろうとする人たちはえらいと思うよ。



この事務所も戸塚さんが自分の手で作られたんですよね。

いやあ、ただお金がなかっただけさ（笑）。修理の道具で退職金を使ってしまったからね（笑）。



戸塚さんの好きな風景を、改めて言葉にするとしたら？

好きな風景ねえ……。
川があって山がある風景かな。



戸塚さんと眺めた原里の風景はとても素敵だった。
川があって、山がある。そして、その風景を守ろうと、土地を荒らすまいとしている人たちがいるのだと実感した。

戸塚さん、いろいろなことを教えてくださってありがとうございました！
「ユンボの友だち」と聞いて実は少しドキドキしていたのですが、本当に楽しい取材でした。
「掛川をよくしよう」と声に出して言わない人たちの中にも、実は掛川のことが大好きで、意識はしなくても「掛川をよくしたい」と思っている人たちが大勢いることを、取材を通じて実感しました。

さて、シリーズ「掛川頑張る人の輪」もようやく大和田から抜け出し、少し西の原里に。次はどこに行くのやら…。
次回もお楽しみに！