2月10日11日と掛川城二の丸茶室で行われた将棋の第59期王将戦7番勝負第3局は、午後7時10分、141手で挑戦者の久保利明棋王が羽生善治王将に勝ち、対戦成績を2勝1敗とした。
翌日、勝者となった久保さんが掛川城天守閣を訪れると聞き、取材に行ってきた。
大勢の記者から囲まれる久保さん。羽生さんはここにはいない。勝者と敗者、その厳しさを目の当たりにしながらも、いろいろなものを承知し、乗り越え、周囲のことに惑わされずに「今ここにいる」久保さんの笑顔はすがすがしく、とても自然体に見えた。
記者から改めて掛川の印象を尋ねられると、久保さんは「落ち着いたいいまちですね。海や山が近くにあって、自分の地元の加古川市と名前も似ていて、親近感が沸きます」と答えていた。
その後、掛川城天守閣と御殿を案内された久保さんは、掛川城スタッフの方の説明に聞き入っていた。
お帰りになる間際、久保さんに質問をする機会を得て、二つの質問をした。
「今回の王将戦に合わせて、小中高生の特別指導対局会が行われましたが、掛川の子どもたちにメッセージをお願いします」
「将棋はすべて自分の責任で勝ち負けが決まります。子どもたちには『考える』ということが楽しいことだと知って欲しいと思います。また、勝負師になって生活するなんてことは、日常生活の中ではなかなかできない経験です。でもそれが将棋ではできます。多くの子どもたちに、将棋の面白さを知って欲しいと思います。
「掛川には『○○とは何か』と問い続け、人生や地域社会での生き方を探求する文化があります。久保さんにとって将棋とは、何ですか?」
「将棋とは、私に人生の大事な部分です」
戦いが終わり、久保さんは掛川のまちを去っていった。
第4局は、2月17日18日に島根県松江市で対局が行われる。
※この原稿を書いているとき、第4局、久保利明棋王の勝利を知った。
[取材レポート:河住雅子]