まち本!の「[風がつくるごちそう(芋切干し製造業)]お仕事アラカルト」
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[風がつくるごちそう(芋切干し製造業)]お仕事アラカルト
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2010年03月31日 09:48
風がつくるごちそう~芋切干し製造業
大石靖恵さん(沖ノ須)

作業場は、蒸し上がった芋の匂いが満ちていた。遠州のからっ風が吹きすさぶ1月。芋切干し製造業の大石靖恵さん宅におじゃました。



「まずは、1年間の作業の流れを教えてください」
「2月下旬に芋の苗が届くから、ビニールハウスへ入れて、5月から6月に畑へ植え変えるの。この時期は、田んぼやほかの畑仕事と重なるからまったく忙しいよ(笑)。11月の収穫では、その年植えた芋をすべて掘り起こして畑の隅に埋めておくの。“ぬくたくしておいてやる”んだよ(笑)。そして、12月の中頃から“お芋”を、“芋切干し”へ加工させる作業。その年の収穫量によっても違うけれど、だいたい1月末から2月初旬までこの加工作業は続くかな」



「何時ごろからお仕事を始められるんですか?」
「朝4時半」
「4時半ですか!」
釜に日をくべ、蒸しあがるまで見守るのは大石さんのご主人の仕事だという。3時間蒸す必要があり、7時過ぎに蒸す上げるには、そのくらい早い時間から作業しないと後がつかえてしまうのだ。
「釜は直径1.2mくらいの大きな釜でね、蒸される芋は蒸篭に入れるの。それが3段。まんべんなく蒸し上げるには、大きめの芋は下の段へ、上に行くにしたがって小さな芋を入れていくのがコツだよ」



一度に蒸す量は約400kg。一段当たり130kg強の重さがあるということだ。
「今はチェーンブロックを使って積み上げているけど、昔は2人で担いで積み上げていたの。おじいさんとおばあさんで担いでたよねぇ、昔は…」
お手伝いに来てくれるご近所の方たちと、笑顔で語る大石さん。
蒸し上がった芋が冷める間の休憩時間も、みかんを食べながらのおしゃべりがある。
道行くご近所の人が声をかける。
「あそこのうち、留守だったから荷物を置いておいたよ」
「はいね、伝えておくでね」



蒸し上がった芋の皮をむく作業。3段すべての芋の皮をむき終わるのに、8時から始めて約3時間かかる。
皮をむいた芋は“ぺんぺん”と呼ばれる道具を使い、細く切っていく。等間隔でピアノ線を張ったものだが、ときおりピアノ線についた芋の繊維をはじいて飛ばす「ぺんぺん」という音が鳴るためそう呼んでいる。



この作業を午前中に終わらせないと、後の作業がつかえてしまう。
この日はいつもよりも2人少ない。2人がペンペンで芋に切込みを入れ、残りの6人が1枚1枚はがしてパレットに広げていく。



驚いたのは、まったく無駄が出ないこと。芋の3分の1は皮むきで取り除かれるが、大石さんは畜産も営んでいるからそれらはすべて豚のえさになる。朝4時半から火の番をしたご主人は、昼間は豚の世話をしているのだ。

「この仕事の面白さは?」の質問に、大石さんは笑顔で答える。
「今年のお芋のできはどうだろうと考えるのも楽しいし、色やら味やら毎年違うしね。それにこうやって、みんなが来てくれてここで話をしながら作業するのも楽しいよ(笑)」

午後、網の上に広げられた芋は軽トラで棚へと運ばれる。
3日間風にさらし、4日目に露干し。雨が降らない限り、3日間ずっと干しっぱなしだ。だだっ広い開けた場所で、芋切り干しは風にさらされ続ける。
「『今日は暖かくていいね』なんて言ったら怒られちゃう(笑)。芋切干しは、風が吹くことで美味しくなる。風が命だから」



大量生産の芋切干しが出回る中、大石さんの芋切干しは、皮むきも、細く切るのも、並べるのも、干すのもすべて手作業。昔ながらの製法で作られる本当の手作りだ。
「リヤカーで運んでいたのが軽トラックになったり、人力で積み上げていた蒸し篭を、チェーンブロックで吊り上げたりという変化はあるけれど、薪と釜と蒸し篭という組み合わせは変わらないね。ボイラーで蒸すよりも、じんわり甘みを出してくれる。昔から使っている道具が、うちの味を出しているのかもしれないね」

“昔ながらの芋切干”は、昔ながらの道具と製法、昔ながらのご近所関係、そして昔から変わらず吹く遠州のからっ風によって作られ、そして守られている。



取材レポート:河合宏一

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Re: [風がつくるごちそう(芋切干し製造業)]お仕事アラカルト
【返信元】 [風がつくるごちそう(芋切干し製造業)]お仕事アラカルト
2010年04月01日 01:53
こんにちは。

学生の頃、お夜食に
ストーブの上に‘芋きり’を置いて
軽く焼いて食べていました。
部屋中お芋の匂いにして、
勉強してるのか?食べてるのか???