まち本!の「風から暮らしを守る槇囲い~庭木剪定職人」
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風から暮らしを守る槇囲い~庭木剪定職人
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2010年04月09日 11:29
南遠州地方では「遠州のからっ風」から暮らしを守るため、先人たちは家の周りを槇で囲った。槇は潮風に強く、火に強く、丈夫なのが特徴だ。遠州灘から吹きつける潮風や砂から家や田畑を守る槇囲い。地域の自然条件を受け入れ、自然と共生しようとする生き方は、町並みの中に槇囲いの生垣の美しい佇まいを生んだ。



槇囲いの美しさを守る、庭木剪定の職人さんを取材した。

風から暮らしを守る槇囲い~庭木剪定職人
石津午郎(いしづ ごろう)さん (山崎)

昭和5年生まれ、今年の6月で80歳になる石津午郎さんは、20代の頃から趣味で庭木の手入れをしている。国鉄に勤務し、定年まで勤め上げた。現在は掛川シルバー人材センターに登録し、趣味と実益を兼ねて庭木の剪定を行っている。

剪定のお仕事は月にどれくらいされるんですか?

多いときで月15日くらいかな。今は少ないよ。こないだまで大須賀支所や龍眠寺の剪定をやっていた。龍眠寺は700メートルの槇囲いがある。境内の木もやったが、1日8時間働いて5人で4日かかった。
剪定だけでなく、お正月前には法多山の門松を作ったり、ららぽーとから頼まれてお正月の注連縄飾りを仲間たちと150個作って納品した。



それじゃあ、お正月前は忙しかったですね。

ああ。でも、昔からそういうことが好きなんだ。庭木の剪定も20代の頃から好きでやっている。
庭木の剪定というのは、簡単なようで案外難しいんだ。枝を、元あったように切っていかなくてはいけないからね。大切なのは、重ね枝は切ること、そして下から出る枝は切ること。
この旧大須賀町のあたりでは、二人、うまい人がいたんだ。木を見れば、誰が切ったのかすぐわかる。特徴やクセが出るんだ。



どうして家の囲いに槇の木を使うんですか?

槇は強いんだ。去年は塩害もあったが、槇は潮風にも強風にも強い。それから火にもだ。明治の頃、このあたりでは石津大火と呼ばれる大火事があったんだ。それ以来、火に強い槇を植えるようになった。
本当は、7月頃刈るのが一番いいんだが、槇はいつ刈ってもちゃんと芽が出る。坊主にしても芽が出る。それくらい強い。
きれいに手入れをすれば、槇は本当に美しいからね。槇が好きで、うちの玄関先にも植えてあるよ。14年経ったかな。



お庭も、手入れが行き届いていて本当にきれいですね。

まあ、好きだからね(笑)。
シルバーの仕事でも、難しいのは頼まれるんだ。定年後に始めた人が多い中で、わしは20代の頃からやっているからね。確かに定年後に剪定を覚えるのは難しいけど、やらないとうまくならん。もっとやってみろと言うんだが……。
何でもやってみにゃーわからんで。そうやって、私も覚えてきた。なんしょ、自分でやらんと覚えんで(笑)。



石津さんは昔から手先が器用だったんですか?

そりゃあ、知らんやー(笑)。好きでやっているだけだで。子どもの頃はチャンバラ用の刀も木で作ったし、さつまいもの苗床も上手に作った(笑)。



じゃあ、今は好きなことがお仕事にできて、頑張り甲斐がありますね(笑)。

そうだね。だが、3時半になったら「わしは先に帰る」と言って帰るんだ。

え? どうしてですか?

5時からやっていた「水戸黄門」が3時54分からの放送になったんだ。「水戸黄門」を見ながら晩酌するのが毎日の楽しみだからね(笑)。

それは大事なことですよね(笑)。

ああ、まったく(笑)。

今日は本当にありがとうございました。


「何でもやってみにゃーわからんで」
「なんしょ、自分でやらんと覚えんで」
二つの印象的な言葉。
そうやって石津さんは、生きてきたのだろう。



帰りに、いいじゃん事務所用に「紅色ボタン菊」の苗をいただいた。
きれいな花を咲かせられるといいな。



[取材レポート:河住雅子]


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