わけ隔てなく、伸びる芽を伸ばすこと~まなびの場「わくわく」~
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2010年06月24日 14:04
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まなびの場「わくわく」は、年齢、国籍、障がいの有無に関係なく共に学び育つ場として活動を続け、4年目を迎える。代表の眞野兼年さんと奥様で責任指導員の眞野麗子さんは元教員だ。お二人に、活動の内容、目指すもの、現場で感じることなど、それぞれの想いを語っていただいた。
まず、まなびの場「わくわく」のことを教えてください。 「年齢、国籍、障がいの有無に関係なく共に学び育つ教育機関」です。平日15時から21時までのあいだなら、いつ来ても、いつ帰ってもいい仕組みになっています。学校の勉強のサポート、受験勉強のサポートが基本ですが、日本語を母語としない人たちのための学びの場でもあり、ハンディを持つ子たちのトレーニングの場でもあります。 この空間自体、楽しさいっぱいの「わくわく」する空間ですね。 多くの方に有形無形で支えられ、このように広々としたスペースで活動をさせてもらっています。ここでお菓子を製造し、販売することもしているんですよ。ここに来る子だけでなく、その親御さん、卒業生たちも手伝ってくれています。 この「わくわく」は、毎日来る子、週一回来る子、金曜の夜だけ来る子、来たいときだけぶらっと来る子など様々です。受験生もいますし、学校になじめない子も、居場所がない子もいます。私たちは、この場所でいつでも迎え入れる、そんな気持ちで活動を行っています。 そもそも、どうしてまなびの場を作ろうと思われたのですか? その経緯をお聞かせ下さい。 私は小学校教師をしていました。そのとき、今はいいけれど、10年後、この子たちを受け入れる場があるのだろうかと思ったんです。学校を卒業し、自分を知っている先生がいなくなれば、学校はもう知っている場所ではなくなります。公的な場の限界を感じました。この子たちがいつも帰って来ることのできる場所、受け入れる場、応援するシステムが必要だと思いました。それで、仲間の先生たちとまなびの場をスタートさせる準備を始めたんです。 「わくわく」は、その年によって受験生の多い年、学校になじめない子の多い年、外国人の子どもの多い年など様々ですが、私たちはもともと、「壁」を作ること自体、不自然だと感じていました。違うのは当たり前だし、わけ隔てること自体おかしいと思います。 実は私は言語オタクでして……、英語、ポルトガル語、今はハングル語を学習中です。違うことは不思議であり、魅力があることだと思っています。 そうそう。「わくわく」という言葉は、言語的には近未来のことを指しています。実は、この感情を置き換える言葉が英語にないんです。どうしても説明になってしまって、ぴったりの言葉を見つけられなくて。 こちらでは、様々なイベントを実施しているということですよね。2008年には、希望者やそのご家族と韓国旅行にも行かれたとか。 はい。「まなびの場」ですから、事前にはレポートを書き、簡単な韓国語を勉強し、ウォンを使う練習もしました。事後報告もします。以前から「青春18切符を使った旅」も続けています。活動の中で旅行を企画し、時刻表が読めるように、そして将来グループ旅行の幹事になれるようにね(笑)。 また、3年前に沖縄に行ったのですが、心に残る一味違う旅になりました。そのとき知り合った方たちを掛川にお招きし、10月に三線と歌や踊りの「琉球の風」コンサートを開催します。自分たちでコンサートが開けるんだということを体験してもらいたいと思い企画しました。 芋苗植えと芋掘りの「みんな集まれ さつまいも大会」(年2回)は、今年で11年目を迎えます。こうしたイベント開催を通じて、やりたいことを形にしていくノウハウ、リーダーとしての資質などを養ったり、ハンディのある子が臆病がらずに外に出るきっかけ、そして外国の子どもやご家族が日本人と交流する場にもなればと思っています 言語を習得するのは大変なことです。でも覚えるしかないし、使うことが大切だと思います。ブラジル人に対しては、もっと日本人と接することが必要だし、そうした機会を増やすことが重要だと思います。また、私たち日本人も受け入れる姿勢が大切だと思います。年齢も国籍も性別も障がいの有無も関係ありません。交流すれば、必ず人と人でつながります。 お二人ともそうした「壁」について、とてもフラットな印象があります。ご自身で、それはどういうところから来ているんだと思われますか? [麗子さん] 私の場合、両親が満州で結婚生活を始め、兄姉が向こうで生まれました。先ほども申し上げたように「違う言語」に対してとても興味があるんです。「違う」ということに魅力を感じるんですね。世の中は、自分がいるところが全てではないし、自分の知っていることだけが全てではない。違うことがたくさんあると。 [兼年さん] 私の家は、父が朝鮮で教師をしていました(母も結婚するまでは教師でした)。20代で校長をしておりましたが、向こうでの裕福な暮らしが一転して、引き揚げ、そして日本での貧しい暮らしになりました。我慢したり、助け合ったり、分かち合ったりする暮らしの中で、泣いたり、つらい目に合っている人に気持ちが向くようになっていたのかもしれません。教員になってからも、楽に生きられない子、ハンディを持つ子、苦しんでいる子や人生の最後に辛い思いや悲しい思いをしている高齢の人に目がいくようになりました。 お二人の「壁」を作らない姿勢は、そうした経験から来ているかもしれませんね。最後に、今後の展望やメッセージなどあればお聞かせ下さい。 私たちは、10年後も通用する「学び」を大事にしています。入試に合格したらそれで終わり、ではなく。 子どもたち一人一人の伸びる芽を探し伸ばすことが私たちの仕事です。こんなに素晴らしい宝物を持った子どもたちに、素敵な大人になってほしいと思います。 そして、この「わくわく」を卒業しても、いつまでも「ただいま」と帰ってこれる場所でありたいと思いますね。次の世代に申し送りしていかなければならないことも、しっかり伝えながら。 また、彼らの夢を聞き、そのうえで「こういうライセンスが必要」「こういう勉強の仕方がある」「こういうコースがある」ということをしっかり伝えていきたいと思います。 ハンディを持っているお子さんの親御さんに「決して一人で背負ってしまわないで」とメッセージを送りたいですね。「子どもに対して決してあきらめてしまわないでと。「わくわく」はいつも応援しているから大丈夫だ」と。それは、何かに苦しんでいる子にも同じです。「君はなかなか素敵だよ」と伝えたい。ここに来て、笑ってくれることが嬉しいんです。 イベントなども含めいろいろなことをやっていく中で、お互いの良さを知り、認め合い、交流を深めながら、みんなが笑顔でいられたらいいですね。そして、楽しいこと、わくわくすることを実施していく中で、どんなつながりが今後、生まれるのか、私たち自身もとても楽しみです。 今日は本当にありがとうございました。 「琉球の風in掛川」 宮城竹茂と仲間たち ―琉球古典芸能演奏会― ■日時 2010年10月23日(土)18時開演 ■会場 掛川市文化会館シオーネ 小ホール ■演目 第一部 琉球王朝 ~静の芸~ ・かぎやで風 ・散山節 ほか 第二部 庶民の歌と踊り ・花風 ・鳩間節 ・カチャーシー ほか ■入場料 大人500円 小学生まで300円 ■主催 「琉球の風」実行委員会・まなびの場「わくわく」 [お問い合わせ] まなびの場「わくわく」掛川市三俣608の1 TEL.FAX 0537-72-7470 まなびの場「わくわく」 http://www6.kiwi-us.com/~mano1208/ [取材レポート:いいじゃん掛川編集局/河住雅子] |
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