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祖先の文献を整理する面白さ~嵐牛蔵美術館館長 伊藤鋼一郎氏~
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2010年07月28日 10:09
平成22年7月3日(土)、掛川市竹の丸において竹の丸塾が開催された。竹の丸塾は、「地元の研究者の方々を講師に招き、郷土の歴史や文化を再発見する講座」である。今回は「嵐牛(らんぎゅう)蔵美術館」館長の伊藤鋼一郎氏をお招きし、「伊藤嵐牛のこと」と題してお話を伺った。


■嵐牛蔵美術館とは

掛川市八坂出身の伊藤嵐牛(1798~1876)は、幕末に活躍した芭蕉の流れを汲む俳人だ。
今回、講演いただいた鋼一郎氏は、嵐牛から数えて5代目、伊藤家10代目の子孫に当たる。
「私は学者ではないので文献を自分で読むことはできないが、お蔵にどれだけのものがあるか全くわからない状態だったので、片っぱしから引っ張り出して整理をしました」と鋼一郎氏。
文献の整理をするとともに、江戸時代の蔵を改修して美術館(資料館)としたことの意義を、ホームページの中でこう語る。



伊藤嵐牛翁の子孫自身が文献の整理をし、江戸時代の蔵を改修して美術館(資料館)とした。

伊藤家五代目嵐牛・六代目洋々が収集したと考えられる俳句に関する文献の数々は、全国的にも他に類を見ないと専門家の先生よりご推奨頂いている。

文人などの資料は、多くの場合個人で整理・保存出来ず公的機関などに寄贈されたり、埋もれてしまうことが多い。

嵐牛翁が俳句を書いたその場に存在し、今尚その場に暮らし(生活)が存在している命ある美術館である。

小堀遠州風の庭園・江戸時代の蔵・大正時代の木造住宅を、総合的にかつありのままの姿で美術館としている。

個人の美術館として、インターネットを通じ情報の発信(常設展示)を行っている。

■データを整理する面白さ

鋼一郎氏は、蔵にあるものをエクセルのデータで整理分類していった。ジャンルや作品内容だけでなく、関連資料もデータベース化してある。直筆の俳句をpdfのデータで残したり、実際の掛け軸の大きさを実感できるよう床の間全体を写真に撮ったり。
「これはどんな作品だろうと思ってデータをひらくと、様々な情報を見ることができる。データベース化には非常に便利なツールですね」



掛け軸は整理されているものだけでも170以上。「一つしなかかった嵐牛の軸を巻物の中に見つけた」といったエピソードもあった。
「やりだしたらきりがないので、軸は安いものにするなどお金をかけずに整理をしています。『思いつき』『自己流』『行政の手をかりず』、そして『お金をかけない』、これが基本スタンスです」と鋼一郎氏。
現在、焼き物、漆器、茶道の道具、壺などはまだ手がつけられておらず、ただ4種類に分類してあるだけだという。蔵の中の整理と同時進行でデータの整理が行われているのだ。

お話を伺って興味深かったのが、嵐牛関連の年表だ。嵐牛との年齢差や時代背景で、例えば松尾芭蕉や石川依平らとどんな関係性だったのかを鋼一郎氏は想像している。人とのつながりであったり、あこがれの気持ちであったり、背景にあるその時代の芸術についてであったり……。



■俳句の面白さ

俳句の面白さについて、作者による違いについて、鋼一郎氏はこう語る。
「芭蕉は東海道をしょっちゅう歩き、一茶は一回しか歩いていないと言われています。芭蕉の直筆の句は静岡県内ではわが美術館のみですが、一茶は泊めてもらった家々に句を残していると言われています。芭蕉は、一つの句を何度も何度も練り直してつくり上げていくタイプですが、一茶はその時その時、思いついたことを抒情的にポンポンポンとつくるタイプなのだと思います。どちらがいい悪いという話ではなく、芭蕉は噛み砕いて読むと素晴らしいし、一茶はさっと読むと素晴らしい。私は全くの素人ですが、それぞれに素晴らしいと思います」
そうした人たちと自分の祖先との関りを想像するのは、また一つの楽しみなのかもしれない。
「整理をすればするほど、芭蕉が出てきます」という鋼一郎氏の言葉が印象的だった。



■ホームページへの公開

10年ほど前から作品の読みあげ等の整理を始め、データベース化、そしてホームページの公開となった。自分は学者ではない、どんなふうに整理をしようかと考えた末、パソコン上で美術館を作ってみることを考えた。

現在、嵐牛の作品や系譜は「バーチャル美術館」としてホームページから見ることができる。俳句の会・古典を詠む会・小グループの方などで実際に見たいという場合は、事前予約により入場ができるという。



ホームページには、鋼一郎氏のこんなメッセージがある。
「引き続き『嵐牛蔵美術館』の常設展示として、更新を続けてまいりたいと思っております。収蔵品について現在も整理を続けており、当ホームページが情報交換の場になればと考えております」

今度、鋼一郎氏にお会いする機会があれば、こんな質問をしてみたい。
「なぜ、嵐牛の資料を整理をしたいと思われたのですか」
「蔵の中の整理をすることで、どんな発見がありますか」
「ご自身の中で何が面白いと感じ、整理をし続けているのですか」



嵐牛蔵美術館
http://www.takumise.com/10page.htm

レポート/いいじゃん掛川編集局:河住雅子

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