まち本!の「掛川の一番北にある駄菓子やさん ~杉山ウタ子さん(泉・田中屋)~」
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掛川の一番北にある駄菓子やさん ~杉山ウタ子さん(泉・田中屋)~
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2010年09月08日 12:19
掛川市の北部、ならここの里からさらに車で5分ほどのところにある田中屋。駄菓子、調味料、日用雑貨などを売る店を切り盛りするのは、82歳の杉山ウタ子さんだ。
夏以降、「駄菓子やさんシリーズ」の取材をしようと何度かおじゃましたのだが、ずっと店のカーテンが閉まっていた。しばらく入院されていて、そのあと息子さんのところにいたのだという。懐かしい駄菓子やの店構えそのものの田中屋の店の中で、杉山さんとゆっくりとおしゃべりした。



お盆に帰ってきて、昨日、ようやく店を開けたんだところだよ。仕入れたのはまだ駄菓子だけ、パンやアイスはこれからだよ。
この店を始めて、もう45年くらいになるかね。田んぼの真ん中にあったから田中屋だ。まちの衆はみんなうちを田中だと思っていて、お父さんが入院したとき「田中屋さんの病室が見つからない」と言われたもんさ(笑)。

昔は子どもが大勢いた。うちの真ん中の息子が小学生のときには、この泉地区だけで17人もの子どもがいた。どこの家も3人も4人も子どもがいてね、忙しかったねえ。下の娘がまだ幼稚園の頃だから……、昭和40年くらいかね。近所の大きい子たちが、交代で守りに来てくれたもんさ。店の駄菓子をお駄賃に渡していたからね(笑)。



昔は10円玉を握りしめ、「これとこれを買うといくら……」と勘定しながら買っていたよ。買えないで、見ているだけの子もいた。そうして子どもたちは、算数を覚えたり、おこづかいの使い方を覚えたり、我慢することを覚えたりしたものさ。
だから、昔の子の方が勘定が早かったような気がするね。今は親が車で買ってきてくれるし、一緒に行ってもレジが勘定してくれる。もう「いくらといくらを足していくら」なんておこづかいの心配しなくても、買ってもらえるんだろうね。

お父さんがいる頃は、店の中で立ち飲みもやっていたんだ。晩げんになるとこの畳のところにずらっと並んだよ。缶詰や菓子をつまみにしてね。
忙しかったけど、現金で支払ってくれる人は一人もいなかった(笑)。みんな、ツケ(笑)。しっかりつけて、月末にまとめるんだよ。みんななんとか払ってくれたね(笑)。



商品は昔からこんな感じだよ。駄菓子と調味料と日用雑貨。お酒と生鮮をやめたくらいかね。今も「醤油を切らしちゃった」「サラダ油を買い忘れた」と買いに来てくれる。酢や砂糖を買って、らっきょう漬けの分量や漬け方を聞く人もいるよ。



店をやっていて嬉しいのは、お正月やお節句やお祭りや暮れかね。息子や娘が代わる代わる手伝いに来てくれて、賑やかになるから。

車?
お父さんは運転したけど、私はしないよ。特別、困らないから。
買い物?
月に一度、病院に行くときにするから大丈夫。うちの前がバス停だし、病院の帰りにAコープに寄れば、そこもバス停の前で都合がいいからね。それで十分。お米は実家で持ってきてくれるし、野菜は裏の畑で作っている。私は田舎育ちだから、お刺身とか生ものを食べたいとも思わないから、それで十分なんだよ。

お菓子の仕入れは、掛川工業の近くのお菓子屋さんが届けてくれる。いっとき、来てくれるお菓子屋さんがなくなってしまったけれど、そのお菓子屋さんに電話したら、「ならここの里まで行くから届けるよ」と言ってくれて。ありがたいね。
その他の雑貨は息子がお休みの日に仕入れて持ってきてくれるんだ。儲からないけど、なくちゃ困るものだから。



バス停?
そう、この「泉」が最後のバス停だよ。
今、バスに乗るのは小学校の衆くらいかね。昔はならここの里のあたりに小学校があって、小和田の農協のあたりにも小学校があって、それが一緒になって原泉小学校になったけれど、その小学校もこの3月になくなった。

生まれ?
昭和2年だったか、3年だったか……。どっちだっていいよ(笑)。
名前?
恥ずかしいね。カタカナで「ウタ」、そして子どもの「子」で「ウタ子」。
二十歳くらいの頃、歌が好きだった。その頃、素人芝居というのがあってね。一張羅の着物を着て、蓄音機で歌ったもんさ。お父さんと結婚して、あの人はあんまり好きじゃなかったから、歌わなくなったけど(笑)。
終戦を迎えたとき、岡崎の軍需工場にいて、このまま働きたい人は残っていいと言われたけれど、私は帰ってきた。帰れば山仕事や薪割りが待っていたけど、それでも帰りかたかった。ここは私の生まれ育った町だから。

4年前、お父さんが亡くなったとき、息子に「一緒に住もう」と言われたけれど、知らない土地で、知らない人の中で、やることもないし、ここにいることにした。ここには近所の人もいるし、親戚もいる。
あと1年できるか2年できるかわからないけれど、まあ、ぼちぼちやっていくよ。




静鉄井尻線「泉バス停」の平日時刻表
6時 50分
7時 20分
8時 45分
10時 40分
12時 25分
15時 15分
16時 15分
17時 15分

バスは掛川駅を出発し田中屋の前で折り返し、再び掛川駅に戻る。


取材レポート:いいじゃん掛川編集局/河住雅子

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