12月2日(木)、中央小地域生涯学習センター「ゆうあいセンター」にて女性学級主催の講座「温暖化と蝶の世界」があると聞き行ってきた。講師は十王町の伊藤定雄さん。「蝶」に特別興味があるとか「蝶」が大好きというわけではなく、蝶の世界にハマり、二日に一度は蝶を求めて山に入るという伊藤さん自身の話を聞きたいと思った。
日本では蝶を仏様のお使いとする地域があったり、文学的にモチーフとして使われることも多い。その模様は美しくもあり、少し怖くもある。
伊藤さんがなぜ蝶の世界にハマったのか、蝶の魅力とは。
たっぷり1時間半かけて、その世界のほんの一面かもしれないが、堪能することができた。
「温暖化と蝶の世界」■蝶へのあこがれ小学校のとき、夏休みに昆虫採集をして金賞を取ったのが蝶に興味を持つきっかけになった。その色合い、形、美しさに「あこがれ」がある。今71歳だが、小学校の頃からずっと蝶を追い続けている。非常にマイナーな世界だが、自分が好きでやっているのでそれが一番だと思っている。
■山を歩くと何が見えるか会社員時代は企業戦士だった。退職後、今は二日に一度は蝶を求めて山に行く。
山に行くと何が見えるか。
最近、「熊が出る」「イノシシが出る」とよくいうが、山に入ると杉とヒノキが間伐もされず密集しているのがわかる。落ち葉もなく、下草も生えない。熊やイノシシにとって食べ物の宝庫であった雑木林はなくなった。人里に食べ物を求めるもの仕方のないことと思えてくる。
人間の手で杉とヒノキを植えたよう、今度はどんぐりの木を植えればいい。雑木林の美しさを取り戻したいと思う。
鹿が増えすぎたのも、日本の山からオオカミがいなくなったからだ。熊もイノシシも雑食であり、鹿にとって天敵のオオカミがいなくなれば増えるのは当然。鹿が増えたことで高山植物が食べられている。
人間の営みが、自然循環の輪を壊している。
■蝶を知ることは、世界を知ること今、日本には233種の蝶がいる。東南アジアで350種なので、決して少なくない種類の蝶が日本にはいる。暖かいところの蝶も、寒いところの蝶もいるということだ。
私は、本州にいるとされる188種のうち180種までの蝶を採集した。温暖化の影響で、南方でしか生息しないはずの蝶が飛んでくるようになり、今は忙しくて仕方がない。しかし、喜んでばかりはいられなくて、北方系の蝶が減ったということでもある。
蝶は非常に小さな生き物であり、環境変化にまず影響される。その種の食べる植物がないと、生きていけない。
■命名の妙蝶の名前は、高嶺(タカネ)雲間(クモマ)深山(ミヤマ)など、名前を見ればその棲息場所がわかるものもある。
またアサギマダラ(浅葱)やコムラサキ(濃紫)、ルリタテハ(瑠璃)やコモン(小紋)など、日本の風情や趣を感じる和名や和の模様を名前に持つものも多い。そうした命名に、私は非常にロマンを感じる。
今、NHKで「坂の上の雲」が放映されているが、エンディングテーマが流れ、本木雅弘の名前が出てくるあたりで蝶が飛んでいるのでぜひ良く見てほしい。蝶好きは、山の高さや飛び方で名前がわかる。あれはクモマツマキチョウだ。
■蝶の生活史蝶の中には肉食の共生種もいる。ゴマシジミやクロシジは蟻と共生する。幼虫の分泌物を蟻が食べるので、蟻は幼虫を巣に引きずり込む。幼虫は蟻の巣の中で天敵から守られ成長する。しかし、脱皮のとき蟻の巣から這い出し、羽を広げて蝶になる。そうした壮絶な生活をする蝶もいる。
すごいなと感じるのは、毛虫のときから積算日数表が身体に組み込まれていると思えるほど正確な脱皮の瞬間だ。桜が咲く時期、かたくりが咲く時期、すみれが咲く時期など、ちょうどその蝶に最も適した時期に脱皮するのだ。少しも狂わずに。
■確認できる喜び、発見する喜び「この山にはこの木が生え……、ということは、この蝶がいるかもしれないぞ」と仮説を立て、山の成り立ちや蝶の生態を調べ、実際に山に入る。予測したことが実証できたときは「やった!」という気持ちになる。仮説を実証するための探索、採集のために山に行きまくっている。
蝶がたたんでいる羽を広げたときの模様への期待感、卵を見つけて飼って成虫にするもの楽しい。

日本ではもう新種の発見の可能性はない。新しい分布の発見をすることが「発見」となる。以前、大井川や天竜川の奥でなければ棲息しないとされるキリシマミドリシジミを掛川で発見した。
。学会に発表し、分布図に新たな場所が追加された。ご褒美をもらった気分だった。

まあ、どれもこれも好きでやっているだけです。

レポート:いいじゃん掛川編集局/河住雅子