掛川駅北口ユニー跡地を中心とする一角に計画されている「駅前東街区市街地再開発事業」。私たちの暮らす「掛川市」の玄関口であり、顔ともいえる場所での再開発計画である。このような大きな事業を前に、一市民として何をしたらいいんだろう……、そう考えたのが取材のきっかけだった。
まずは「知ること」、そしてこれを機会に「まちなかとは何か」を改めて考えてみること、そうしたベースである部分が必要なのではないか、そんなふうに考え、まずは渦の中心でもある「かけがわ街づくり株式会社」に取材に行ってみようと思った。通称「マチカブ」のかけがわ街づくり株式会社は、2000年、魅力的な中心市街地の再生のためTMOとして設立された第3セクターだ。「非常勤のアドバイザーのようなものだよ」と自らおっしゃる取締役の東宮照男さんにお話を伺った。
※TMO(タウンマネージメント機関=Town Management Organization)は、中心市街地における商業まちづくりをマネジメント(運営・管理)する機関であり、様々な主体が参加するまちの運営を横断的・総合的に調整し、プロデュースする役割がある。まちなかは人間交差点。多様であるほど、豊かになる。東宮照男さん(かけがわ街づくり株式会社取締役)■まちなかとは何かまちなかの活性化を考える時、私には一つの夢があります。
まちなかに仕事があり、やる気のある人は自分で創業したり商売することができる。人が暮らし、人が増える。街の機能が増え、商店が増え、医療が充実し、映画館ができ、文化が充実する。これからの「まちなか活性」には、商店があって買い物ができるだけではないものが必要です。
少子高齢化社会の中で、まちなかから人が減り、努力してもむくわれない、くたびれ、あきらめ、そうした負のエネルギーが増えています。「チャレンジ精神」「希望」「若々しさ」「しなやかさ」そうしたものをもって、プラスのエネルギーに転じることが、今必要なのだと思います。
■素晴らしい「徳」の数々具体化のために何をしたらいいのだろうと考えたとき、私たちの暮らす掛川には「報徳」という素晴らしい文化があります。「万象具徳」「以徳報徳」は、人であれ物であれ場所であれ、あらゆるものは何らかの取り得や持ち味を持っている。その特性を見つけ出し活かすことによって、新たな特性を生み出し、世の発展に役立てていくという考え方です。
掛川には、すでに素晴らしい「徳」があるのです。ショッピングセンターの企画・出店に長く携わってきた私には、その「徳」がありありと見えるのです。
○ストリート、並木道がある掛川駅から掛川城までのストリートが、すでにショッピングセンターのモールになっています。並木道が素晴らしい。アメリカでブームになっているライフスタイルセンターのオープンモールが、すでにできているということです。
この「徳」を使い、「けっトラ市」や「友引カフェ」がスタートしています。並木道が公園のようになっています。そして、近隣の産品もまた「徳」であるのです。
○集客施設をつくる候補地がある東街区、まんまえパーキング、連雀駐車場など、掛川には集客施設をつくるためのスペース、候補地がすでにあります。映画館、クリニックモールや木の文化を伝えるショップ、遊園地にもできるのです。あとはどう活かすか、ということです。
■再開発事業について再開発事業について、私の考えを述べれば、まちなかの施設に大手が入っても景気が悪くなれば撤退する、というのは過去のユニーやジャスコの例を見ればわかります。それではいけない。中央資本ではなく「自力で何とかやっていく」「地元で努力して地元で根づかせる」が大事なのだと思います。
現在、山から海まである掛川の「徳」を活かしたファーマーズマーケット(産直市場)を検討しています。掛川には、海の幸、山の幸、里の幸、街の幸があります。そうした地域の徳を活かし、中央に頼らず運営していくことが大切なのです。
また、地元には、頑張っているところがたくさんあります。これっしか処、こだわりっぱ、道の駅かけがわ、とうもんの里などのノウハウを集結することです。低成長の時代には、内部循環、サステイナビリティが大事です。そうすれば、家賃収入だけでなく、市の税収も上がります。
そして、人が住むマンションの機能、市民活動の拠点、子育て支援の拠点も必要です。子どもたちや学生、高齢者などの交通弱者が「自分で行ける」、そうでなくてはだめなのだと思います。
■まちなかにアートを掛川はアートのまちでもあります。駅周辺には様々なモニュメントやブロンズ像があり、二の丸茶室では「夜の美術館と現代アート茶会」が開催されました。
これは私の夢なのですが(笑)、若いアーティストが掛川に移住し、空き店舗がギャラリーやアトリエになったら素晴らしい。その手助けを、一つ一つコツコツやっていくと、いつか「まちの雰囲気ががらっと変った」となるのだと思います。そんなふうに、希望を持って頑張っていきたいですね。
ねむの木美術館のレベルの高さも素晴らしい。そういった視点から考えれば、障害を持った人とのコラボで、高齢者サポートグッズの商品開発ができないかとも考えられます。例えば、目の悪い人の使う道具、足の悪い人の使う道具はそのまま高齢化社会の参考になります。今の日本の「ステッキ」は機能一本やりですが、山に行くときのステッキ、映画に行くときのステッキなど、TPOに合わせたステッキがあってもいいと思いますね。ヨーロッパでは、すでに楽しむためのグッズが開発されています。
障害を持つ人の知恵を活かし、ものづくりにチャレンジしていくまちにできたら、素晴らしいですね。
掛川には、その他にも「木の文化」「茶の文化」「葛の文化」が息づいています。そうした日本の伝統文化を活かし、若い人がチャレンジし、起業していこうという機運が生まれ、新しい工房やショップが続々とできてくれば面白いですね。掛川のまちなかにはその土壌があり、それを手助けすることこそ、まちづくり株式会社の使命だとも思うんです。
■まちなかのタウンマネジメント掛川は中東遠の玄関口です。様々な資源があり、人がいます。NPOなどの市民活動がさかんなのも素晴らしい。生涯学習や報徳やスローライフをバックボーンとした、生活の楽しみ方、遊び方を提案できる、そんな場に「まちなか」をしなければいけないと思います。まちなかは、みんなの財産であり、みんなの舞台なのですから。
今、まちなかには「まちなかの経営の専門家」が必要です。かけがわ街づくり株式会社では、将来構想として空き店舗の運営を一元管理する仕組みや、やる気のある人を後押しできるようなインキュベーションの仕組みを作りたいと考えています。まちなかの機運を盛り上げ、「希望の見えるまち」「市民活動日本一のまち」を目指していけたら素晴らしいですね。
再開発事業に関しても、毎週かんかんがくがくの議論をしているんですよ(笑)。掛川の再開発が、よその地域の再開発と違うのは、地権者がリスクを負おうとしていること。自力自救の仕組みをつくろうとしていることです。
まちなかの活動に関心を持ち、「まちなか応援隊」という組織もできました。「まちなかで何かをやりたい」という人がどんどん出てきてくれると嬉しいですね。
まちなかは人間交差点なのだと思います。異質なものが集まると共鳴する。多世代共鳴、多文化共鳴、障害を持つ人と健常者の共鳴など、刺激し合って新しいものを生み出すのです。多様であるほどまちなかは豊かになっていくと私は考えます。

取材レポート:いいじゃん掛川編集局/河住雅子