建築家との住まいづくりレシピ館from/forの「プロセス紹介 A邸の場合」
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プロセス紹介 A邸の場合
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2010年07月03日 20:44
三角形の土地、だから建築家に

(1)フロムフォーとの出会い

Aさんの場合、「子どもが小学校に上がる前に家を建てたい」という漠然とした希望はあった。
「とはいえ、掛川のことをよく知らないし、工務店もわからない…」
「建築家という選択もあるけれど、敷居が高そうだな」
「設計料がものすごく高かったら困るし…」
そんなふうに感じていたという。

Aさんは奥さんともども兵庫県出身の30代。子さん2人の4人家族だ。
仕事で掛川に来るまで、掛川とは無縁だった。



そんなとき、インターネットのホームページでフロムフォーのことを知った。
「へえ、地元の建築家を紹介してくれるところがあるんだ…」
「掛川にも、建築家って意外とたくさんいるんだな」
フロムフォーの場所を確認すると、住んでいるアパートのすぐそばだった。
ある日、マイホームセンターの帰りに、
「近いから、ちょっと行ってみようかな」
と思った。
そんな軽いノリの始まりだったという。


(2)「どんな間取り」ではなく「どんな暮らし」

フロムフォーに来たお客さんには、まず趣味を聞く。
家を建てるとき大切なのは「どんな家を建てたいのか」や「どんな間取りが必要なのか」なのではなく、「その家でどんな暮らしがしたいのか」だからだ。
趣味を聞き、暮らしを聞き、「じゃあ、家を建てたらこういうことをしたいんだね」というライフスタイルの話をする。

Aさんと話をしていく中で、自分の自己紹介もした。
以前は住宅メーカーにいたこと。今は設備の仕事をしているので、そうした関係から地元の建築家と接する機会が多いこと。自分自身「建築」が好きだということ。フロムフォーという仕組みを作ったいきさつなども。



「建築家」というのは本当に様々だ。
クセのある人もいれば、ない人もいる。豪快な人もいれば、繊細な人もいる。いかにも建築家っぽい人もいれば、ごくごく普通に見える人もいる。それぞれに建築に対する考えがあり、こだわりがあり、人柄もいろいろだ。
一緒に家づくりをするパートナーとして、相性のいい人と家づくりをしてほしいなあと心から思う。そんなことを思って、フロムフォーを始めた。

Aさんが、フロムフォー内の「建築家ファイル」をめくっていく。
「この中の、この人とこの人が気になるなぁ…」
ファイルを手に、Aさんがつぶやいた。


(3)紹介する前に、まず外観を見に行った

以前、掛川市には「静岡県木造住宅館」があった。静岡県建築士会小笠支部が県から依頼され運営を行ってきたもので、建築士会に所属する建築家が交代で来館者の対応にあたった。
家づくりのこと、木造建築のことなど、当番にあたった建築家が家づくりに関する様々な相談に乗る。相談員名簿は地元建築家のファイルでもあったし、館内には地元建築家の作品ファイルも置かれていた。ここで多くの生活者と建築家が出会った。
何のしがらみもない自分が、こうした仕事ができればいいなあと思った。生活者と建築家をつなぐ仕事、人と人をつなげる仕事。
建築が好きだから、やっているとも言えるのだけれど…(笑)。



さて、Aさんが気になるといった2人の建築家。
「天気もいいし、2人の設計した家が市内にあるから、ドライブがてら外観だけでも見に行ってみますか?」
Aさんは「ぜひに!」と言った。

何日かに分けて、2人の設計した家を実際に見に行った。
先方の都合もあり、中を見せていただけることもあれば、外観だけのときもある。
数件を見てまわり、Aさんが言った。
「この建築家の建物がいいなあ…」
「でも、建築家に頼むとどのくらいかかるんだろう…」とも。


(4)三角形の土地、だからこそ建築家

どこで建てるのか考えるのと同時進行で、Aさんは土地も探していた。
ホームページで様々な物件を見ていく中で、気になる土地があった。
掛川市郊外ののどかな場所にある、三角形の土地だった。

四角い土地でないことから、予算よりかなり安い。敷地の面積も十分にあった。
「場所的にもいいし、広さもいい。三角形の土地で問題なければ買いたいけれど、どうしよう…」
ちょうど、近所に消防の仲間がいたことから、その周辺がどんな感じなのか聞いてみた。

掛川と関わりのない夫婦だけど、新しい人を受け入れてもらえる土地なのかな?
近所づきあいは?
近くに同じ世代の家族はいるの?

知り合いを通じて聞いてみた結果、大丈夫だとわかった。組長さんにも挨拶できた。近くに知り合いができたことで、Aさん夫婦も心強さが少し増したようだった。

前後するように、Aさんが「会ってみたい」と言っていた建築家とも会った。
話を聞いた建築家は、土地の図面を見て「土地の形は全然問題ないよ」と言った。「例えばこんなふうに…」とイメージも示してくれた。



同時期、住宅メーカーにも土地の形で相談したけれど、「商品としてある形」を土地の上に乗せただけの提案しかされなかった。建築家が示してくれたイメージには、自分の暮らしのイメージがあった。

もう1人、別の建築家とも会った結局、はじめに会った建築家に設計をお願いすることになった。
はじめ、まったく考えていなかった「建築家と家を建てる」という選択肢が、決して夢でも無理な話でもないことが実感できたとAさんは言った。
「土地が安く買えた分も浮きましたしね(笑)」


(5)建築家との打ち合わせに同行

一緒に家づくりを進めることになった建築家から図面案の提示があり、Aさんの家づくりも本格的に動き出した。



今日は、図面案に対して、Aさんご夫婦の要望を一つずつ確認していく。
まずは建築家が頭の中でイメージしている空間を、どれだけ伝えられるが大事なのだと思う。そして、Aさんご夫婦の修正点を、表面上の修正ではなく「なぜ、そうしたいか」を根本から理解することが建築家には必要だ。
その橋渡しが、少しでもできればと思っているし、それがフロムフォーの役割だとも思う。


(6)「音」も重要な情報

奥さんから、キッチンの流し台正面に窓をつけたいという希望があった。流し台の正面は、玄関前のポーチの位置になる。
「郵便やさんが来た」
「お隣さんが回覧板を置きにきてくれた」
といった気配を何となく知りたい、というのが理由だ。
実はこの「何となく」がポイントで、こちら側が見えすぎても落ち着かないし、気配を感じ、風も通るけれど、目線を遮ることが大事な要素となる。



建築家のTさんと話をしていく中で、次第にイメージが固まっていく。まだ仕様は決まらないものの、奥さんもほっとした表情だ。
一つ一つ丁寧に進められていくのが、建築家との家づくりの特徴かもしれない。

建築家Tさんの、「気配を感じるとき、『音』も重要な情報になる」という言葉が印象的だった。


(7)建築家と家づくりをすること

建築家と家づくりをすることのメリットは、例えばAさんのお宅の場合、変形した敷地を最大限に活かした建物を考えてくれる、ということだ。敷地の中に家をはめ込むのではなく、住む人の希望、採光、通風、その土地の気候や風土などを最大限に取り込んで創造していく、ということなのだと思う。



建築家のTさんに、逆に「フロムフォーがあいだに入ることのメリットって、何でしょうね?」と聞いてみた。
三つある、とTさんは答えてくれた。
「一つ目は、家づくりをしようとする人が、直接、建築家にアプローチしなくてもいいということ。直接話をすると断りにくくなるのではないか、という一般的な不安を解消できる。建築家とのあいだにワンクッションある、というのがいい。
二つ目は、複数の建築家の持ち味や方向性を知ることができるということ。ホームページなどで知った情報だけでなく、生の声が聞ける。例えば、写真を見ただけでは気づかなかった経緯やエピソードを知ることができる。
三つ目は、事前に、建築家の建てた家を見ることができるということ。少なくても、外から外観を見ることはできる」

生活者の立場に立ったとき、フロムフォーの役割というものが少しはあるのかな、と思うのだ。


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