農業特派員情報の「鳥獣害対策 カラス編(日本農業新聞)」
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鳥獣害対策 カラス編(日本農業新聞)
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2009年03月27日 15:45
カラス対策(上)㊤
ー 餌探し広範囲移動 ー
 鳥類の中で、最も大きな農作物被害を与えるカラス。雑食性で何でも食べ、賢く、わなにかかりにくい。農研機構・中央農業総台研究センター鳥獣害研究サブチームの吉田保志子主任研究員に、カラスの生態と対策を紹介してもらう。
               ◇
 身近で見掛けるカラスには、ハシボソガラスとハシブトガラスの2種類がある。農村地域には両種が普通に生息し、果樹や果菜類を中心にさまざまな農作物を食害する。ごみをあさる鳥という印象が強いが、実際には木の実、昆虫、ザリガニなど自然の餌も食べる。
 この2種類は、農作物への加害とその対策という面では似ているので、まとめて扱う。このほか、九州や北陸ではミヤマガラスが冬に渡来するが、農作物被書は少ない。
 カラスの社会は、つがいことに縄張りを持つ繁殖個体と、群れている非繁殖個体からなる。群れ個体は主に若鳥で、餌が得られる場所を求めて広い範囲を移動する。春に生まれた若鳥が加わる7、8月ごろから群れが増え、収穫期の果樹園などで大きな被害を与える。若鳥の多くは餌不足で冬越しできないので、群れ個体の数は夏秋に多く、冬春に少ないという増減を毎年繰り返している。
 ブドウなどの果樹、スイートコーンなどの果菜類へのカラスの食痕は、ハクビシン、アライグマなどの中形型獣類による食痕とよく似ている場合がある。屋はカラスが、夜は獣類が食害している可能性もある。水稲湛水直播(たんすいちょくは)ではカモとカラスの食痕がよく似ており、昼はカラスが、夜はカモが食害していることがある。有効な対策のためには「犯人」を特定することが大切だ。
<プロフィル>
よしだ・ほしこ1971年生まれ。
筑波大学大学院環境科学研究科修了。
東京大学大学院農学生命科学研究科博士後期課程、農業研究センター研究員を経て現職。

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Re: 鳥獣害対策 カラス編(日本農業新聞)
【返信元】 鳥獣害対策 カラス編(日本農業新聞)
2009年03月27日 16:12
カラス対策(下)
ー 警戒させる工夫を ー
 カラスの被害を防ぐには、防鳥網で作物を覆うのが確実だ。網目75㍉以下の網を使用するが、ヒヨドリやムクドリも加害している場台は30㍉以下、スズメも防ぐなら20㍉以下の網を使う。
 カラスのような大形の鳥では、テグスや針金などを飛来の邪魔になるように張っておくと、ある程度侵入を防げる。カラスが翼を広げると1㍍程度になるため、間隔はできればこれ以下とし、狭いほどよい。
 各種の追い払い装置、CDやカラスの死骸(しがい)をつるすなどの方法は、一時的には効果があるが、比較的に短期間で慣れる。道具の種類や位置を頻繁に変え、カラスに警戒させる工夫が大切だ。なお、黄色のごみ袋の効果は、カラスにとって中身が見えにくいことだ。黄色が見えないとか、黄色を嫌うということではない。
 カラスは移動能力や繁殖力が高く、駆除で生息数を減らして被害を防ぐのは難しい。カラスの駆除は、一部の個体を撃ち落とすという「本物の威嚇」を目的として、守りたい圃場(ほじょう)で、被害発生直前から被害期間にかけて銃器で行うとよい。
 捕獲小屋を使う場合は、被害発生時期に加害個体を捕る。捕獲小屋で捕まるのは若鳥が主で、若鳥は自然状態でも死亡率が高いので、被害のない時期に捕獲しても労力の無駄になるためだ。
 生ごみや家畜飼料、作物のくずなどはカラスにとって絶好の餌だ。これらの餌をきちんと管理し、地域の個体数の上限を低くしていくことも重要だ。
(農研機構・中央農業総合研究センター鳥獣害研究サブチーム主任研究員・吉田保志子)