まち本!の「浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~」
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浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
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2010年05月06日 10:03
浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる
武藤勝彦(むとう かつひこ)さん (浮世絵美術館「夢灯」館長)

東海道の難所といわれた小夜の中山峠。先人たちが多くの歌を詠んだこの地で、浮世絵美術館「夢灯(ゆめあかり)」を開館した武藤勝彦さん。学校の先生から私設美術館の館長へ。どのような想いでこの地に美術館を建てたのか、浮世絵の魅力とともにお聞きしました。

そもそも「浮世絵」とは何なのでしょう?

浮世絵とは、読んで字のごとく「浮世の絵」であり、人々の生活そのものを表現したものです。手に入りやすくするため、木版により大量生産した版画だと思います。
こんなわけで画題には、庶民の娯楽の歌舞伎や役者、遊郭関係、歴史上の人物、相撲など、多方面にわたっています。「東海道五十三次」では、各宿駅の名所、名物等を描き、旅のガイドブックのような役割を果たしていました。それゆえ、当時の各地を知ることができます。江戸時代の「るるぶ」のようなものですね(笑)。



浮世絵の魅力とは?

まず、彫り、色彩の素晴らしさです。彫り師、摺り師が己の極限へ挑んで完成させた作品であり、誠意が伝わってきます。そして、そのような作品から当時の人々の豊かな感性を感じます。



豊かな感性……。それはどんなところから、感じられるのですか?

現代の人々にできない技は、それを要求する人がいたからこそ発達したのです。発達させたのは、庶民の豊かな感性があったからだと思います。やはり、人々の要望に応えた彫り師、摺り師の技は素晴らしいですね。

浮世絵でいうと、葛飾北斎や歌川廣重の名前くらいしか、わからないのですが(笑)。

北斎や廣重など絵師が下絵を描き、彫り師が彫り、摺り師が摺って完成させます。彫り師、摺り師の技が絵師の描いた絵に繊細さを加え、一層、絵を高めるといってもいいのです。

たとえば、彫り師の技ですが、ここに描かれている髪の生え際(毛割りといいます)を見てください。1㎜の間に5~6本の線が描かれています。絵師が描いた下絵にはそんなに細かな線は描かれていません。彫り師、摺り師によってレベルアップしています。こんなところで、彫り師は技を競い合いました。



1mmの中に5~6本ですか!

今の人にはできない技術ですね。自分の技を駆使して最高のものを作る。見えないところまで神経を行き渡らせる。まさに職人の中の職人です。
摺り師も同じです。「ぼかし」は摺り師の技術のひとつで、顔料の乗せ方や微妙な摺り加減で見事なグラデーションをつけます。
ときには、下絵の海のところに「うみ」とだけ書かれ、水の色、波の状態などは、彫り師、摺り師に任せられたこともあるようです。



だから、「彫り師、摺り師が絵描きの絵を高める」ということなんですね!

その通り。彼らの作品は、これからも永遠に評価されるでしょう。一生懸命、極限に挑戦した作品は、いつの時代にも感動を与えるものです。自分も生活していくうえで、そうありたいなあと思いますね(笑)。
一生夢中になれる浮世絵に出会えて、本当に幸せだと思います。本物を見なければ、本当の味はわかりませんからね。

浮世絵は大衆文化を反映したものであり、当時の人が「欲しい」と思うものを描いていました。そんなことで絵師たちは、逆に芸術性がなくなることへのジレンマも感じていたはずです。自分の描きたいものではなく、注文に応じて「売れるもの」を描く必要があったのですから。そんな人の心のありようまでも、感じることができるんです。

そもそも、武藤さんが浮世絵に出会われたきっかけは何だったのですか?

最初の就職は県立中央図書館でした。ここで先輩の先生と出会い、作品を見て「いい絵だなあ」と何気なく思い、買える作品を買い始めました。

何を「いい」と感じたのでしょうね?

う~ん。何がよかったのか、口ではうまく言えないな。「なぜ山に登るのか」と問われたときのように、ただ惹かれたとしか言えないなあ……。

それで、集め始められたわけですね。

20代の頃から、あせらず、ぼちぼちとね。もちろんその頃は、美術館を作りたいなんて、思ってもみなかったのだけれど。
でも、今からちょうど15年ほど前、浮世絵の展覧会に行ったんです。そこで、自分が展示されている作品と同じくらい収集できているのだと気づきました。じゃあ、美術館を作るか、と(笑)。



この中山峠の場所は、最初から考えていた場所ですか?

いえいえ。ちょうどその頃、栄川中学校に勤めていて、生徒を家に送る途中で初めて江戸時代の東海道を発見しました。茶畑の中の尾根に一本の細い道が続き、直感的に思いました。こここそ、私の浮世絵にもっとも適した場所なのだと確信したわけです。そして、あちこち土地を探している中で、周囲の方たちのご支援もあり、現在の、最も素晴らしいこの地に建てることができました。ここは、廣重の筆を執った場所のようですから。

東海道に関する浮世絵は、ずっと集めていらしたんですか?

いや。それまではいろいろな浮世絵を集めていたのですが、「地域と結びつく作品を」と考え、東海道に関する作品にシフトして集めるようになりました。地域の人たちは地元に親しみが沸くでしょう。

そうですね! 実際に描かれている粟ヶ岳が目の前にあるわけですからね(笑)。それに、浮世絵の見方や彫り師や摺り師の話を聞きながら鑑賞できるのは素晴らしく面白いです。

当時の東海道が残り、当時と同じ景色が残り、そして当時の絵を見ることができる。そんなところは、東海道広しといえどもここだけです。東海道の難所といわれたこの中山峠に、これだけ歌が残っているのは「歌わずにはいられない何か」がきっとあったからだと思いますし、そういうところで、当時の人の気持ちを感じていただければと思います。「百聞は一見にしかず」です。こんなところもあるのです(笑)。



浮世絵美術館「夢灯」
掛川市佐夜鹿298-2
TEL.FAX0537-27-2237
開館日 土日祝 10時~16時
施設維持協力金:大人 300円  中・高校生 200円 (小学生以下なし)

展示(年4回展示換え)
[4月~6月]日坂の宿展
[7月~9月]掛川の宿展
[10月~12月]袋井・見附の宿展

※8月7日(土)、武藤さんは掛川市竹の丸にて「浮世絵師の描いた日坂、小夜の中山、掛川について」の講演をされる。

(写真は許可を得て撮影させていただきました)

取材レポート:いいじゃん掛川編集局/河住雅子

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Re: 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
【返信元】 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
2013年01月13日 19:57
本日、金谷駅から掛川駅までウォーキングしました。扇屋さんで美味しい深蒸し茶を頂いた時に、「夢灯」さんの事を伺い、何となく立ち寄らせて頂きました。
私自身、浮世絵は全くの素人ですが、広重,北斎の対照的な作風、広重が年を追うごとにタッチが変わっていく様など、大変面白くお話を伺いました。掛川駅まで歩こうとしていた関係で、駆け足のお話になってしまいましたが、おかげさまで、今回のウォーキングが思い出に残る物になりました。ありがとうございました。

ギャラリーでは、お話しませんでしたが、家内の父親は掛川の中学校で社会の先生をしておりました。現在は大池で宗心寺で住職をしておりますが、先ほど電話したら館長さんの事をよく御存じの様でした。また、是非伺わせて頂きたいと思います。いつまでもお元気で、たくさんの方に楽しいお話をして頂ける事を願っております。
本日は、ありがとうございました。  
Re: 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
【返信元】 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
2013年01月02日 12:56
こんにちは。
私は、武藤先生が先生になって間もない頃の中学の教え子でした。
今は栃木県宇都宮市に住んでますが、毎年いただくお年賀状では、
ご家族の素敵な写真を楽しませていただきます。

先生は、刺激的な国語の授業をして下さり最高でした。
運動会の準備の時からとても熱くて、クラスを一つにまとめて、
ノリノリにしてくださいました。画期的だった応援合戦、
その盛り上がり、ずっと思い出です。

久々に先生のサイトを「夢灯」で検索して、同じ名前の全然違うサイトに行ってしまい、え~!?先生、どこ?浮世絵~?と迷子になってしまい、焦りました(>_<)

今、ここにお邪魔させていただき、インタビュー記事に感動してます。
是非、先生が集めた作品集を見せていただきたいです。
でも今は、法事で静岡県に行くのがやっとです。
いつの日か、先生の思いのこもった美術館にお邪魔させていただきたいと思っております。

素敵な記事を、ありがとうございます。
先生の益々のご活躍をお祈りいたします。

まりえf
Re: 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
【返信元】 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
2011年03月10日 13:18
夢灯さんより、4月からの展示のご案内をいただきました。お茶の葉のきれいな季節を迎えます。興味のある方は、のんびりと足を運んでみてはいかがでしょう。

【浮世絵美術館「夢灯」4月展示のご案内】
4月からは、廣重の人物東海道シリーズ、二代廣重等の末廣東海道シリーズ、三代豊國の役者東海道シリーズ、北斎の作品等を展示いたします。
多くの皆様のお越しをお待ちしております。
              夢 灯
Re: 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
【返信元】 浮世絵を見ていると、当時の人の心が見えてくる~浮世絵美術館「夢灯」館長~
2010年05月06日 16:47
追加情報です。
開館日は「土・日・祝」となっていますが、事前に連絡すれば、平日でも開けていただくことは可能なようです。
お電話でご確認ください。

いいじゃん掛川編集局/河住