今夜はなんだか未来の幸せについて、 しみじみ考えてみたい気持ちだなあ。 第9作『男はつらいよ 柴又慕情』から 「男はつらいよ」シリーズに欠かせないのが、寅さんが恋する美しいマドンナの存在。毎回登場するゲストは、その時代の旬の女優さんばかり。 マドンナは、イタリア語で、「わたしの淑女」という意味で、その語源は聖母マリアのこと。それが美しい女性を指す言葉となって定着したそうです。夏目漱石の「坊っちゃん」のヒロイン名として、明治時代から定着、小説では「色の白い、ハイカラ頭の、背の高い美人」と表現されています。 「男はつらいよ」のマドンナを演じた女優さんは、総勢37名。ゲストを加えると43名もの人気女優がスクリーンを彩ったことになります。寅さんの女性の好みは、マドンナの数だけあると言って良いと思います。 第9作『柴又慕情』のマドンナは、吉永小百合さんが演じた高見歌子です。学生時代の友人と北陸路を旅しているときに、福井で寅さんと出会い、ひととき楽しい旅を共にします。 旅先の寅さんは、実にカッコいいですから、歌子にとっては、頼りになる大人の男性です。悩みを抱えている彼女は寅さんの優しさに触れ、心が癒されます。 ほどなく柴又に、一緒に旅をした歌子の友達、みどり(高橋基子)とマリ(泉洋子)が訪ねてきて、彼女の話をします。それを聞いた寅さん、歌子のことで頭がいっぱいになります。 茶の間で、まだ会ったこともない歌子の幸せについて語り合う寅さんの家族たち。話は彼女の婿選びまで発展してしまうのですが、誰がいいだろうと話しているうちに、寅さんが「僕でしょ」とつい願望を口にしてしまいます。良い気分になった寅さん「今日はお開きにして休みましょう」と二階の部屋へ上がります。 そのとき、ゴーンとお寺の鐘。寅さんは「未来の幸せについて、しみじみ考えてみたい」とつぶやきます。寅さんが恋をしているのは明らかで、それが家族の悩みのタネになり観客にとっては笑いにつながります。 そこで寅さんが、吉永小百合さんの「いつでも夢を」を口ずさむところで、映画館は大爆笑。次第に、寅さんの歌子への思いはつのるばかり、そこから奮闘努力の日々が始まるのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |