俺の言うことなんか、気にすんなよ。 きっと、幸せになれるから、な。 第23作『男はつらいよ 翔(と)んでる寅次郎』から 「男はつらいよ」シリーズには、さまざまな「幸せのかたち」が描かれています。なかでも、桃井かおりさん演じるマドンナの入江ひとみが、花嫁姿でとらやへ逃げてくる第23作『翔んでる寅次郎』は、「若い女性と結婚」をテーマにした作品です。 寅さんが北海道で出会ったひとみは、結婚を控えているのに、沈みがちです。「本当はもっと嬉しくなきゃいけないんだろうけどね」と、寅さんに本音を漏らします。そこで寅さんは自分なりのエールを送ります。そして「俺の言うことなんか、気にすんなよ。きっと、幸せになれるから、な」と結びました。 婚約者の小柳邦夫(布施明)を愛しているかどうか? 自分の本当の気持ちがわからないひとみは、お色直しの最中に、結婚式場からドレスを着たまま、タクシーで柴又へ。どうしても寅さんに会いたくなったからです。 ひとみが直接行動に出たことで、周囲は大変な騒ぎとなります。ひとみの母(小暮実千代)は世間体を気にするばかり。ところが、邦夫はひとみが諦められずに、再び彼女の前に現れます。 ひとみは、その邦夫の気持ちが理解できません。寅さんは「ただ一言ね、あんたの気持ちは嬉しいわ、どうもありがとう。その辺のこといってやんなよ。その言葉だけであいつは幸せになれるんだから」と恋する男の気持ちを代弁します。 そこからひとみと邦夫は、お互いの気持ちを確かめ合い、あらためて結婚を決意します。帝釈天参道の川千家(かわちや)でのささやかな結婚式。ひとみはあいさつで「今、邦夫さんの幸せについて考えています」といい、今までは「人のことを一生懸命考えるっていうか、相手の幸せを本当に心から願うっていうか、そういう態度が私には一番欠けてたのね」と話します。 やがて邦夫は、シンガーソングライターの下村明彦さん作詞作曲の「とまり木」を歌います。この曲もまた「相手の幸せを考えることが自分の幸せ」とい う気持ちを歌った曲です。 ひとみは邦夫を想い、邦夫はひとみを想う。これは「相手の幸せを願う」寅さんの本質でもあり、「男はつらいよ」がもたらす多幸感の源泉でもあるのです。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |