朝日新聞 2013年1月11日付 朝刊 【被災地の今をラジオで伝える 高校生アナウンサー阿部真奈さん】 仮設のスタジオから、張りのある声が流れる。大震災にあった宮城県女川町の臨時放送局「女川さいがいエフエム」。土曜の昼に1時間、生放送を担当している。 父を幼いころ病で亡くし、母と自宅を、津波で失った。祖母と2人で避難所に身を寄せた。「生きる目標を見失いかけた」。たまたま同じ避難所にいた中学時代の先輩から誘われた。人前で話すことには演劇の部活で慣れていた。 「お母さん、今までありがとう」。デビューした一昨年5月、話題は母の日だった。明るい声が自然に出た。「家族を亡くした私だからできることがある」 巡回スーパーなどの生活情報を伝えるだけではない。町民を招き、同じ被災者として震災の教訓や復興への思いを聞く。 スタッフは「ゲストに気配りができ、仲間のフォローも上手」。 被災して初めて、ラジオの力を実感した。役場職員が支援物資を横取りしたという悪質のデマも飛び交うなか、町の人たちは電波に乗せた情報を頼ってくれた。 津波が心配される静岡や和歌山に講演に出向くことも。「津波は自宅まで来ないとの思い込みが裏目に出た。同じことを繰り返して欲しくない」。将来の夢は菓子職人から報道に変わった。春から慶応大で学ぶ。それまで3ヵ月。「復旧復興のあゆみに節目はない。前向きに女川を語り尽したい」 文・写真向井宏樹 ○○〈読者投稿〉 「私と同じ高校生なの!?」 この記事を読んだ時の素直な感想がこれだった。幼いころにお父様を亡くした上に、お母様まで失って。あの震災から今日でちょうど1年と10か月。どんな思いで真奈さんはこの期間を過ごしてきたのだろうか。想像を絶する悲しみがあったに違いない。おばあちゃんとふたり、頑張らなければならない状況にありながらも、高校生アナウンサーとして自ら情報発信していく姿に私は感動した。 それに比べて私はどうだ。部活がなんだ!パート変更通達がなんだ!私のなかのもやもやは、ホントにちっぽけなものだったんだ。真奈さんありがとう。私もまっすぐ前を見て進みます。 廣野真紀子さん 16歳 熊本県 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |