我が家に居間にはゼンマイ式振り子式柱時計があります。50何年か前に職場の人々から結婚式のお祝いとして戴いた物です。以前は裏側に贈ってくれた人の名前を書いた紙が貼ってありましたが、どこかに行ってしまっています。 我が老夫婦には踏み台に登ってゼンマイのネジを捲くのが億劫になってきています。
電波時計に換えようか…と思ったりしています。その前に贈ってくれた人に礼状も書きたいような気もしますが、誰々に贈ってもらったかが定かでないし、先方も覚えちゃあおらんだろう。逝った人もいる筈だ。
アン・フィリッパ・ピアス作「トムは真夜中の庭で」の時計はこの類いのものだったのだろうな。(高杉一郎 訳) …………………… せっかくの夏休みだというのに、弟のピーターがはしかにかかってしまったせいで、トムはひとり、おじさんのアパートに預けられることに。おじさんおばさんのトークは退屈だし、部屋は狭くて息が詰まりそう、おまけにここには庭すらない!アパートが気に食わないトムは、だんだんいらいらしてきてしまう。だが、そんなある夜、ホールの柱時計が「13回」鐘を鳴らしたようにおもった彼がこっそり外へ出てみると、そこには、夜明けの灰色の光に照らされた美しい庭園が、ひそやかに広がっていたのだった。
こんな素敵な場所が、真夜中にだけ現れるなんて!毎晩「真夜中の庭」を訪れるようになったトムは、そこに流れる時間がヴィクトリア朝時代のものであること、また、彼が訪れるたびに、時間の流れ方が少しずつ異なっているらしいことなどを理解するようになる。やがてトムは、庭園でひとりの少女と出会い、友達になるのだが…
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