第三章 守る意識 正面が正しいとは限らない 捕ることだけ、投げることだけを考えていては、守備は上達しない。 投げるために、どう捕るか。どうスローイングの動きにつなげるか。捕球とスローイングが連動して初めて、守備といえるからである。 2009年に選手兼任コーチとなってからは、若い選手に対して、正面から転がしたボールを右側(三塁側)から弧を描くように回り込んで捕球する練習を繰り返させた。ボールの右側から回り込んで、一塁方向に向かって身体を動かしながら捕球した方が、投げやすい。すべては送球を想定しての動きなのだが、身体に覚え込ませるには反復練習しかない。見た目よりも体力的に厳しい練習で、兼任コーチとなって最初の秋季キャンプでは、初日にリタイアが続出してしまったほどだった。 ただ、実際の試合のなかでは、回り込んで捕るのだ全て正解とは限らない。回り込んでセーフになるのであれば、ボールに対して守備位置から一直線に入らなければいけない時もある。そういう時は、身体の正面でなく(グラブを身体の右側で使う)逆シングルで捕球しないと切り返すことができない。送球するためには、三塁側(右側)に向いている力を、一塁側(左側)に移行しないといけないからだ。右足を踏ん張って切り返すのか、左足を起点にして切り返すのか。そこは本能による部分が大きくなってくる。試合の動きのなかで考えながらやっていては遅いからだ。 そういう意味でも、練習のなかでどれだけ考えることができるのかが重要になってくる。考えて練習をして、身体に覚え込ませて、ようやくとっさの状況で身体が動く。意識を重ねることで、無意識で動けるようになるのである。 スポーツの世界では判断の速さが重要になることが多いが、守備に関しても同じである。試合のなかで本能的に動けて初めて、守備が身についたといえる。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |