それは5年ほど前の出来事。当時の僕は心がけ荒み、時間が過ぎて行くのをただただ見詰めている生活が続いていた。 そんな時だったかな?君に出会ったのは。それまでも手が届く距離に居たのに全く気付かず、よそよそしい態度に終始していた。でもすぐ傍に居る事に気付いてからは、少しずつだけど笑顔が戻り始めた事に僕自身が驚いたよ。 それからは… 日を追う毎に君に夢中になって行くのがハッキリとわかり、何だか照れくさかった。 君の趣味で僕の着る物はオレンジ色が多くなり、君の存在を知らない僕の周囲は不思議そうに僕を見ていたのがおかしかった。 ううん、確かに楽しい日々ばかりじゃなかったよ。君を知れば知るほど胸が苦しくなる自分が居た事も確か。君と知り合えた事を恨んだ事さえあったよ。 でも振り返ればやはり楽しかった思い出ばかり…。だから今が辛くてたまらない。 ひとつの時間が終わったんだと理解できても気持ちが追いついて行かない。現実を受け入れなきゃ前に進めない事は誰よりも僕自身がわかっている筈。 だから、見送らないよ。 だから、泣かないよ。 僕は振り返らずに今日来た道を帰るよ。 君の記憶を忘れないために。 |