徳島新聞 2012年11月11日付 朝刊 【全国高校サッカー選手権 徳島大会で優勝した鳴門高監督 香留(かとめ)和雄さん】 前回の全国選手権出場は2006年。サドンデスにもつれ込んだPK戦の末、1回戦で敗れた試合後のロッカールームで選手に語り掛けた。「勝たせてやれんでごめんなさい。負けることは恥じゃない。恥なのは負けて立たんこと。ここからが勝負ぞ」。言葉に人柄と哲学がにじみ出る。定年まで2年半。「時代が変わったと言われるけど、鈍感なんかな。今でも選手には泣かせてもらい、感動をもらっている」と話していた闘将が、栄冠に目頭を熱くした。 夏の雪辱を果たした準々決勝。円陣で反省点を述べた後「負けてもええと思っていた。やるべきことをきちんとやりさえすればな」と選手に伝えた。真意は「サッカーも最後は人間性」体力的にきつくなったら守備に走らなくなったり、味方のフォローをおろそかにした選手にはたとえ要であっても容赦なく途中交代を命じる。 熱心な分析家。相手が嫌がるゆえんだ。今回も対戦相手のビデオ映像を空き時間に「たるほど(飽きるほど)みた」。敵のウイークポイントをあぶり出し、自分たちの長所を生かす作戦を練る。その分析をもとに練習グランドでは選手の中に入って声を掛け、考えてプレーすることの大切さや対応を説く。成長には選手自身の気付きが不可欠と言い切る。 裏表がなく体裁を繕わない素直さを周囲や教え子は慕う。「こんなん言うたら 怒られるけど」で始まる話は本音の宝庫だ。決勝2日前、グランドから少し離れた校舎への用事に「チャリンコ貸して」と生徒の自転車をこいで往復。「寒い寒い」と言いながら戻ってきた。その道すがらも「どうやって勝たせてやろうか」と考えていたに違いないと思わせるほど、サッカーにひたむきな指揮官を9度目の「国立」が待つ。 徳島市幟町で妻(55)と2人暮らし。58歳。 (柳澤良和) 〈読者投稿〉 ひと昔前までは、どこの学校にも必ず1人はいた名物先生。情に厚く涙もろい。少し短気なところがたまにキズだが、生徒から受ける信頼は絶大だ。徳島の高校スポーツ界において、香留和雄さんは間違いなくそんな存在だろう。 徳島商業時代よりチームを何度も全国の舞台に導き、現在は鳴門工高監督を務める。 この記事に掲載されている短い言葉が、同氏の人間味にあふれた性格を表している。 「負けることは恥じゃない、恥なのは負けて立たんこと。これからが勝負ぞ」 長い人生、つまずきは誰にでもある。大切なのは、そこから何を学び今後にどう生かすかだ。自身が教員生活とサッカーで培った経験を、ざっくばらんに語りかける。 今の学校現場に、香留さんのように生徒の心に寄り添える先生が増えることを願う。そうなれば、日本の教育は絶対に変ると思う。 大塚達也さん (37)歳 徳島県 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |