本当に真面目な方だったですね。
だから人に言われたことも素直に受け入られて伸びていくのですね。
子供の中二の担任が「素直な人ほど上手になっていく」
と、お便りに書かれたことを今ふと思い出しました。
どうしても構えてしまった自分を反省です。
第一章 気づくこと 24時間考える 気づきの瞬間は突然訪れることが多い。 ヤクルト入団後、野村監督から「評価は人がするものだ」「変わることを恐れるな」と教わってきた私だが、プロに入ってから、ひとつのターニングポイントがあった。 二年目の、アリゾナ州ユマで行われた春季キャンプ中のことだ。野手全員で盗塁の練習をしたことがあった。ピッチャー役をバッティングピッチャーが努めて、キャッチャーは若いキャッチャーが守備位置に着いていた。キャッチャーが盗塁を刺すための練習である。 ランナーが絶対に走ってくるこの状況では、ピッチャーが投げてから盗塁のスタートを切っても、ほとんどがアウトになってしまう。バッターもいないため、キャッチャーの二塁への送球が逸れさえしなければ、ほとんどがアウトだった。 私はピッチャーが投げてからスタートを切ってアウトになっていたのだが、横にいた古田敦也さんにこう言われたのだ。 「お前、真面目やなあ。投げる前に走ったらええやん。盗塁って別にピッチャーが投げる前に走ってもええやん」 この一言にハッとさせられた。当時の私は自分で言うのも恥ずかしいが、くそ真面目な部分があった。盗塁の練習ならば、ピッチャーが投げてから走らなければいけない。そう考えていたのだ。 そんな私に古田さんは「柔軟性を持て」と教えたかったのだろう。ちょっとぐらいなら失敗してもいい。失敗をしなければ、分からないこともある。それまでの私はなんでもかんでも真面目に練習することしかできなかったのだが、その一言で少し違った方向から考えることができるようになった。 例えば守備。二遊間に打球が来そうだと感じたのなら、思い切った守備位置をとってみてもいい。打撃でも配球を読んで内角に来ると分かっているのなら、大きく左足を開いてステップして狙い打ってみてもいい。セオリー通りに真面目にやっているだけでは、プレーの幅は広がらない。古田さんの一言で、凝り固まっていた頭のなかがほぐれたような気がした。 気づきの瞬間は突然訪れることが多いが、同じ状況で誰もが気づけるわけではない。気づけるかどうかを分けるのは、やはりどれだけ意識できるかにかかっていると思う。 ドラマや映画では、アイデアが出ず苦しむ主人公が、仕事を忘れてふとした瞬間に思ってもみなかったアイデアをひらめくというシーンがあると思う。だが、現実ではそう簡単にはいかない。野球を忘れたなかで野球のことに気づくことはできない。いつも野球のことを考えているから、気づくことができるのである。 「プロ野球選手になったんだから24時間、野球のことを考えろ」 毎年入ってくる新人選手には始めにこう話すことにしていた。プロ野球選手になったのならば、食事をしている間、寝ている間でも野球のことを考えるのが仕事だと思っていたからだ。嫁さんに言われて分かったのだが、私は寝ている間でもボールを投げる動きをしていることがあったという。引退してからはそこまでしなくてもいいのかと思うと、正直ホッとしている。 × × 誤字脱字写し間違いあります。 |