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2017年11月27日(月) 
機関誌「報徳」12月号に掲載したレポートです。
報徳社にとって改めて「報徳山とは何か」を考えました。

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小雨の降る中、山の中に分け入ると、しっとりとした森の匂いがした。静寂の中、自然の中に入らせてもらっているのだという感覚が胸をいっぱいにする。今回、間伐時期を迎えた本社社有林伐採の現場に行ってきた。

大日本報徳社は、掛川市北部原泉地区を中心に約60haの社有林を所有している。今回、60ha中28haを施業し、7980本を間伐する予定だ。
もともとこの山林は、冀北学舎に学んだ山崎常盤氏が昭和十三年に寄贈したものだ。山崎氏は伊井谷宮宮司をつとめられた神官で郷土史家でもあった。昭和四十年当時は材価も良く、本社にとってかけがえのない貴重な財産であったと「社有林につくした人びと(機関誌「報徳」平成20年11月号)」で本社顧問 小野了司氏は書いている。
しかし今、山林の経済的価値は下がり、山を持ち続けることの苦労があちこちで聞かれるようになった。本社でも、社員によって守り育てられてきた社有林は、掛川市森林組合に管理を委託しているのが現状だ。
こうした苦しい現状にある山林経営だが、一時期「報徳山」が報徳社にとってなくてはならないものであったことに変わりはない。「報徳山とは何か」「報徳山を守るとはどういうことなのか」、改めて考える機会にしたいと、伐採現場を見せていただくことになった。

道を作り、山に分け入り、木を伐る。伐採した木はグラップルで集め、フォアーダーで運ぶ。重機を慎重に操り、作業は粛々と進む。水分を含んだ木はとても重い。商品となる木を傷つけないよう、危険のないよう、細心の注意が必要だ。現場を見せてもらって山の仕事の過酷さを初めて実感した。重機のない時代はこれらすべて人の手で行っていたのだから、途方もないことだ。「森林を守る」などと簡単に言葉にしてはいけないと思うくらい、大変な仕事だと感じた。

小野氏は「社有林につくした人びと」の中で、経営にあたっていた山林委員は
「境界の木の幹に○報としるしを入れながら巡回して、まるでわが子を育むように暖かいまなざしで木々を見上げていた」
と書いている。今回の取材で○報のしるしを見つけることはできなかった。しかし、境界となる尾根を挟んで「こちら側」と「あちら側」では手のはいりようが確実に違っているのがわかった。手の行き届いた山林は美しかった。

今年五月、本社・掛川報徳館常会で掛川市森林組合組合長の榛村航一氏(本社総務管財委員)はこう言った。
「森林を守ることは国土を守ることだ」
経済的側面が失われても、水源涵養や土砂防護など、森林には国土を守る公益機能がある。美味しい水や空気、森林浴など、私たちに様々な恩恵を与えてくれる。
掛川市森林組合は今年三月、FSC認証を取得した。FSC森林認証とは「経済」「環境」「社会」の三つの視点で国際基準を満たした森林のことであり、そこから出た木であることを証明する。今後、公益機能と経済的機能の両面で事業を進めていくための土台となり、まさに「道徳と経済の両立」を支えるものである。
二宮尊徳は「後の世のために 樹をうえるのが 人の道である」と言った。榛村純一社長も金原明善の言葉「木を植ゆるは徳を植ゆるなり」をよく使う。森林に携わることは、徳を育てることでもあるのだ。

ちょうどこの取材の前、百二十二年の歴史に幕を閉じた黒田報徳社(周智郡森町)の「発足と経過並びに解散事由」を目にする機会があった。その中に「報徳山」の原点があると感じた。一部抜粋して紹介させていただきます。


「発足と経過並びに解散事由」

当社は、明治十三年疲弊せる黒田村を立直す為、社員二十八名を以て発足。発足当時より社員は縄を綯い草鞋を作る等して月々僅の小銭(十一銭位)を善種金として推譲し、蓄積された推譲金は善報金として社員に下附、或いは貸付金として庶民金融の役割を果たすこと大なり。
昭和三年十一月昭和天皇即位の御大典記念事業として山林競売に入札参加し、約十町歩を落札購入す。当時社員は山林伐採、薪、炭の製造等を生業とする者多く、為に報徳山はその原材料を売買供給し社及び社員は経済的に大いに潤うことを得たり。
昭和中期、高度経済成長の時代に入り薪炭は石油、ガス、電気にとってかわり雑木はその価値を失い植林の必要に迫られる。よって当社は昭和四十三年、山林の大部分に杉、檜の植栽を委託し今日に至る。
現今人心安定し、経済的潤いを得て豊かなる生活を享受し得たるは、先人が困窮の中から勤労、分度、推譲の報徳の教えを守り、只管その実践に努めたる成果であり、相互扶助、共同一致の精神は美風として受け継がれ今に伝わる。
しかしながら平成の今日社会の変貌更に著しく、頼りとする山林収入は現時点に於いては皆無に等しくこれを保持するには会費を充当するしか道なく、それは社員にとって一層の負担増となり、ましてや高齢化した社員には堪え難く、退社を申し出る者多くその後継者も報徳への関心薄く退社を希望しており社員の減少は社の存続危うくし、また、高齢化社員に報徳精神の昇揚を叫んでも何とも致しがたく社の運営困難となり解散せざるを得ざるに至れり。
この度社は、発足当初の報徳の目的を達成したるものとし、所有する不動産(山林、宅地)をすべて黒田町内会へ推譲し百二十二年の輝く歴史を閉ずるに当たり、先人の遺徳を偲び、黒田住民の永遠の隆盛発展を記念するものなり。
平成十五年十二月
    社団法人 黒田報徳社


黒田報徳社の思いは、報徳に関わる人すべての思いである。このせつなさとやるせなさとともに、先人たちの作り上げた「美風」を伝えていかなければいけない。
報徳山は、経済的にも道徳的にも私たちの糧となるばかりか、原点に立ち戻らせてくれる力がある。

閲覧数747 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2017/11/27 15:17
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