三大ネットワーク |
>現代ビジネス >ロシアのウクライナ侵攻時にアメリカの三大ネットワークが見せた底力 >高木徹 (ノンフィクション作家/元NHKチーフプロデューサー) によるストーリー・ >3時間・ >ロシアのウクライナ侵攻開始から4年。 >2002年に刊行された名著『戦争広告代理店』で現代の国際政治を裏で動かすPR情報戦の実態を解き明かしたノンフィクション作家・高木徹氏(元NHKチーフ・プロデューサー)は、この戦争をどう見ているか? >『群像』2026年1月号より始まった新連載『ウクライナPR情報戦 演者の「成功」と「落日」』の第3回後編を特別公開! >カモフラージュの情報戦 >この翌週の十五日、今度はドイツのショルツ首相がモスクワを訪問した。 >それに先立ち、十一日にはアメリカのジェイク・サリバン安全保障担当大統領補佐官が、ロシアによるウクライナ侵攻が「五輪期間中に始まる可能性がある」と発言し、国務省が「キエフ(当時の日本での呼称)の大使館から大半の職員を退避させる」と発表していた。 >十二日にはマクロン大統領とバイデン大統領が別個にプーチン大統領と電話会談していたが、大きな成果はなく、情勢は一気にあわただしさを増していた。 >ショルツ首相とプーチン大統領の会談は一週間前のマクロン大統領の時と同じ設えで、長い楕円形机の長径の両端に二人がポツンと座って行われた。 >共同記者会見場のソーシャルディスタンスも同じだった。 >ショルツ首相は前年の二〇二一年十二月に、十六年にわたりドイツを率いたメルケル首相の後をついで副首相から昇格したばかりで、プーチン大統領と対面するのはこの時が初めてだった。 >兼任していた財務相として、新増設されたロシアとのガスパイプライン・ノルドストリーム2を推進した立場でもあり、ロシアとの関係は重視していた。 >会談後の共同記者会見でのやり取りには興味深いポイントがあった。 >プーチン大統領は、「核の脅し」に踏み込んだマクロン大統領との会見とは異なり、比較的ソフトな姿勢を打ち出していた。 >まず、会談の直前に、ロシア国防省が「クリミアとウクライナ東部国境地域に展開させていた部隊が演習を終えたので、駐屯地に引き上げる」と発表していた。 >これはウクライナ国境に集まった部隊の一部にすぎないが、それでも緊張緩和への良いサインと会見でショルツ首相は受け止めた。 >ショルツ首相は、「(ウクライナのNATO加盟は、NATO諸国の間で)話題にもなっていない。 >それは誰もが知っていることだ」と言明し、「私とプーチン大統領が国を率いている間は、おそらく再び話題になることもないだろう」と言ってプーチン大統領の方を向き、「大統領がいつまでその座にいるつもりかはわかりませんが、私よりは長そうですね」と語りかけ、プーチン大統領が苦笑する、というシーンもあった。 >プーチン大統領はドイツ人記者の「戦争をしたいのか?」という質問に、「もちろんノーだ」と答え、「だからこそ私たちは交渉のプロセスを提案している」と続けて、外交的な解決への姿勢を演出した。 >この九日後には全面侵攻を始めることを考えれば、この時点での柔軟姿勢は、侵攻への準備を続けながらのカモフラージュの情報戦と見るべきだろう。 >プーチン大統領にしてみれば、一週間前の会見で言うべきことは言ったのだから、ここで同じことを繰り返しても仕方なく、この機会はある種の欺瞞作戦のために使ったということかもしれない。 >ショルツ首相は最大限のサービスで、ウクライナのNATO加盟問題に触れたが、「二人がリーダーである間は」と言われても何の確証にもならず、じっさいショルツ首相は三年三ヵ月後の二〇二五年五月には退任してしまっている。 >この会談のあと、すぐにバイデン大統領は「ロシア軍の撤収は確認できない」とロシアの発表を否定し、十七日には「ロシアの侵攻が数日以内におきる」と発言、十八日には欧州に駐在するアメリカの大使が、一月末までは約十万人だった国境近くのロシア軍が、最大「十九万人」にまで急増していると指摘し、北京ではオリンピックが終盤に向かう中、急速に戦争前夜の雰囲気が漂う状況になってきた。 >アメリカ三大ネットワークの底力 >アメリカの全国地上波テレビの三大ネットワーク、ABC、CBS、NBCはそれぞれ毎週日曜日、生放送の政治報道番組を放送している。 >いずれも長年の伝統を誇る看板番組で、第二次大戦後の世界とアメリカの激動を、その時々の最重要人物のインタビューや現地取材を通して伝えてきたと言っていい。 >二十一世紀の歴史が動く前の最後の日曜日となった二月二十日、ABCの「This Week」の放送は非常に印象的だったことをいまもよく覚えている。 >この番組は、普段ワシントンDCのスタジオから伝えられているが、この日は特別にウクライナ西部の主要都市リビウの中心部の広場に臨時野外スタジオを設置して放送された。 >冒頭、この回のキャスターで、長年世界の激動を取材してきたABCを代表するベテラン女性国際記者マーサ・ラダッツ氏が、赤ワインのような色のコートに身をつつみ、番組の口火を切った。 >「一見、いつもと変わらない一日のように見えるかもしれません。 >店は開いています。 >人々は街に出ています。 >しかし、この国は数週間、戦争の脅威に覆われ、今日、その可能性はかつてないほど近づいているように見えます」 >臨時スタジオといっても、ラダッツ記者やゲストが座る簡易的な椅子があるだけの開放的なセットだ。 >背景の広場に行きかう人々、カフェに集う人々など、厳冬期で皆厚着はしていたが、ありふれた日曜日の午後の平和な風景をなるべく多く見せ、番組で描く迫り来る戦争の悲劇の予感と対比させるプロデューサーの意図が見事に表現されていた。 >私もテレビのプロを三十年以上やってきたが、この瞬間、戦争の渦に叩き込まれるまさに直前だったウクライナから、看板報道番組の生中継をやってのけ、平和と戦争のはざまをライブで伝えるアメリカの地上波ネットワークのすごさに感嘆した。 >私がいたNHKや民放キー局でも技術的にはできるだろう。 >しかし、中継画面のカメラの手前の見えないところでこの放送を支える圧倒的な人員と資材のリソースを、こんなドンピシャのタイミングでそろえることはできない。 >これは命知らずの戦場記者がカメラを手に単身突入すれば取材できるという話ではない。 >看板番組の生中継というのは一大オペレーションであり、アメリカの三大ネットワークが本気になったときに投入する物量は圧倒的なのだ。 >ロジスティクスが全く違う。 >私も海外の現場で何回も目の当たりにしてきたが、彼らは「アメリカ」を世界中に持ってくる。 >これは、戦争でも、ハリウッドの巨大映画産業でも、スポーツでも、外交でもそのほかあらゆるビジネスでもそうだろうが、日本がアメリカに今も昔も逆立ちしてもかなわない側面なのだ。 >そして安全性は大丈夫なのか、という問題が必ず出てくる。 >これは情報収集力が深くかかわる世界だ。 >ABCのプロデューサーは、このとき、たとえロシア軍が放送直前に侵攻してきたとしても、リビウなら大丈夫だという自信があったに違いない。 >アメリカ政府とも連絡をとり、最新の情報を相当程度得ていたはずだ。 >じっさい、ラダッツ記者は、この四日後の侵攻が始まる数時間前に、携帯電話に米当局から「あなたはおそらくヨーロッパ大陸で平和の中にいられる最後の数時間を過ごしている。 >気をつけて」というメッセージが入った、とのちに語っているのだ。 >日本のメディア関係者が、そうした情報を得られる可能性はない。
そうですね。日本人は一寸先が闇ですからね。
>この日の「This Week」は、隣国ポーランドの米軍基地に増派された部隊を訪問したオースティン国防長官(当時)の独占インタビューのVTRを挿入し、「これはブラフではないのですか?」と問うラダッツ記者に、「ブラフだとは思いません。 >プーチン大統領は、侵略を成功させるために必要な準備を間違いなく整えていると思います」と答え、その狙いはキエフを迅速に奪取すること、そのために大量の戦車や装甲車、砲兵部隊やロケット弾部隊が国境の向こうにあふれ、航空支援部隊や医療支援部隊もいることを伝えた。 >そして、ホワイトハウスとキエフにいる記者を中継で結び、マクロン大統領がプーチン大統領と電話会談して最後の努力を行っていること、バイデン大統領が日曜にもかかわらず異例の協議をサリバン補佐官と行う予定であること、ベラルーシに展開しているロシア軍が共同演習を終えても撤退せず、そのまま残っていることを伝えた。 >最後に、リビウの野外スタジオのラダッツ記者が「私たちは本当に、次に何が起きるかに備えています」と語って番組を締めくくった。 >* >およそ四十五分のこの番組全体で、「プーチン」の名前は四十三回言及されている。 >「ゼレンスキー」は二回だけだった。 >ゼレンスキー大統領はこの前日、ビジネススーツ姿で、毎年恒例の国際会議、ミュンヘン安全保障会議のためドイツに出張し、そこでスピーチをした。 >対ロ制裁の必要性を主張しつつ、「私たちは何年も緊張状態におり、パニックになる必要はない」と冷静さもみせ、「ロシアの大統領が何を望んでいるのかわからない。 >会って話したい」と語った、とその模様を朝日新聞は二十一日付の三面で伝えている。 >一面を飾ったのはロシアの動向だった。 >この二月、仏独米をはじめ、あれだけ多くの首脳会談をこなしたプーチン大統領は、ゼレンスキー大統領とは電話会談すら行わず、全く相手にしていなかった。 >欧米の首脳たちも、両者を引き合わせようと動くことはなかった。 >ゼレンスキー大統領は、アメリカ政府の発信や欧米の報道が、侵攻間近と危機を煽り、ウクライナ経済に被害を及ぼしていると反発し、「戦争はないと信じている」と語り、「プーチン大統領と会いたい」と願う、それが欧米や日本のメディアの片隅で伝えられる、という状態だった。
彼は平和主義者なんですね。信心が大切なようですね。
>ウクライナのPR情報戦は発動しておらず、ゼレンスキー大統領は国際社会の荒波の中で無力だった。 >世界の情報空間に、ゼレンスキー大統領が全く違った姿で登場するのは、ここから五日後のことである。
彼も自国が危なくなっていることに気が付いたのでしょうね。
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