>【逆説の日本史】山本権兵衛が辞任の弁で指摘した新聞マスコミの重大な「問題点」 >NEWSポストセブン によるストーリー • 1 時間前 > ウソと誤解に満ちた「通説」を正す、作家の井沢元彦氏による週刊ポスト連載『逆説の日本史』。 >近現代編第十一話「大日本帝国の確立VI」、「国際連盟への道4 その8」をお届けする(第1378回)。 > * * * (略) > 山本権兵衛は、大正天皇に提出した辞表において「新聞紙(いわゆる新聞各紙)」が事件の真相解明よりも政府糾弾を優先したことについて、次のように批判している。 >〈政界の一部に紛議を起こし、同気相連絡し、新聞紙のこれに呼応するあり、一時輦下の一大騒擾を醸さんとしたり。 >ことに群衆騒擾のことたる近年、ややもすればたちまち一種の習慣性を馴致し、将来おおいに国家の安寧を害するの虞れあるをもって、極力、これが鎮圧に従い、幸にしてはなはだしきに至らさらしむるを得たりといえども、新聞紙中往々事実のいかんを推究せず、道路の風聞を伝播して、人心をして頻りに海軍の高官を疑わしむるのみならず、臣が久しく乏を海軍の要職に承けたるの故をもって、流言蜚語紛然として加わるに至れり。 >予算は、この間をもってすでに衆議院の議に付せられ、多少の修正を経たりといえどもなお将来の施設を認めたるに、貴族院においてはさらに多額の削減を加え、両院ともにその決議を固執して、予算は為に不成立に訖われり。〉 >(『史話・軍艦余録 謎につつまれた軍艦「金剛」建造疑獄』紀脩一郎著 光人社刊) > 文語調で少しわかりにくいところもあるので、私が簡単に「意訳」しよう。 >〈(この事件について)政界の一部に政治問題化しようとする動きがあり、新聞各紙のうちにはこれに呼応する動きもあった。 >最近はこうした政治問題を大衆運動に結びつける傾向がある。 >これは一種の習慣性を招き、将来おおいに国家の安定を乱す恐れがある。 >それゆえ山本内閣としては極力こうした動きを鎮静化させるべく努力してきたのだが、新聞のなかには事実の追究を行なわずに単なる噂を書き立て、軍の高官に疑惑を抱かせるものがあった。 >また、私自身に対しても長年海相として海軍の政治面にかかわってきたので流言飛語を書き立てられた。 >そのため予算案は衆議院ではなんとか成立したものの、貴族院では否決されてしまった。〉 > 予算案不成立では内閣としての責任が果たせないから首相を辞任するということだが、まず問題は山本自身が海軍の汚職にからんでいたのか、ということだろう。 > 結論から言えば、平沼騏一郎を頂点とする強力な検察陣も山本首相や腹心の斎藤実海相を罪に問うことはできなかった。 (略) > 民衆の熱い支持が無いとどんな体制も決して長続きしない。 >思想や言論の統制や軍国主義で欧米や日本ではきわめて評判の悪い現在の中国も、民衆が熱く支持しているから古くは「一人っ子政策」近くは「ゼロコロナ政策」のような暴政を敷いても簡単には崩壊しない。 >なぜ支持しているかと言えば、やはり中国史上初めて全国民が豊かになるという夢を実現したからだろう。 > こうした歴史的実例を考え併せてみれば、「陸軍の暴走で大日本帝国は崩壊した」などという見方がいかに表層的であるかがわかるだろう。 >その背景には、あきらかに民衆の熱い支持があったのだ。 >では、その熱い支持はどのようにして誕生したのかと言えば、本来は国民の耳目となり国民が冷静で合理的で真に国益に適う判断を下せるように、情報という判断材料を提供するマスコミ、この場合は新聞が、本来の目的に沿った役目を果たせなかったということだろう。
そうですね。日本のマスコミはダメですね。自己が無い。イザヤ・ベンダサンは、自著 <日本人とユダヤ人> の中で ‘自らの立場’ について以下のように述べています。 何処の国の新聞でも、一つの立場がある。立場があるというのは公正な報道をしないということではない。そうではなくて、ある一つの事態を眺めかつ報道している自分の位置を明確にしている、ということである。 読者は、報道された内容と報道者の位置の双方を知って、書かれた記事に各々の判断を下す、ということである。 ・・・・日本の新聞も、自らの立場となると、不偏不党とか公正とかいうだけで、対象を見ている自分の位置を一向に明確に打ち出さない。これは非常に奇妙に見える。 物を見て報道している以上、見ている自分の位置というものが絶対にあるし、第一、その立場が明確でない新聞などが出せるはずもなければ読まれるはずもない。・・・・・ (引用終り) (略) >【プロフィール】 >井沢元彦(いざわ・もとひこ)/作家。 >1954年愛知県生まれ。 >早稲田大学法学部卒。 >TBS報道局記者時代の1980年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞、歴史推理小説に独自の世界を拓く。 >本連載をまとめた『逆説の日本史』シリーズのほか、『天皇になろうとした将軍』『「言霊の国」解体新書』など著書多数。 >現在は執筆活動以外にも活躍の場を広げ、YouTubeチャンネル「井沢元彦の逆説チャンネル」にて動画コンテンツも無料配信中。 >※週刊ポスト2023年5月5・12日号
.
|