2023年08月10日(木) 

 

>産経新聞   >岩田温の温々熱々 戦歿学徒を批判した哲学者の醜い変節   >8 時間   

>我が国におけるギリシャ哲学研究の泰斗の一人に出隆(いでたかし)を挙げることが出来る。   

>出が翻訳したアリストテレスの『形而上学』はいまなお岩波文庫で版を重ねている。   

>また、出隆自身が著した『哲学以前』は、戦前、戦後を通じて多くの人々に影響を与えた。   

>今読み返してみても、知性とは何かを考える際の参考になる好著である。   

>だが、出隆の戦前、戦後の著作を丹念に読み解くと恐るべき事実が浮き彫りになってくる。   

>戦時下の昭和19年に刊行された『詩人哲学者』では、「水の杯を出陣の学徒に献ぐ」が「序に代えて」として付されている。   

>戦時下とはいえ、なかなか勇ましい文言が並んでいる。   

>「滅私なくして奉公はない。   

>ですから皆さんも、今度入営されるときには、私を殺して皇軍の一兵卒に成りきって戴(いただ)きたい」   

>「諸君は死の準備を、死の稽古をして来られたのである。   

>諸君にはすでに、美しく貴い死への用意は十分である。   

>偉大なる生にまで死ぬる稽古は先づ終わった。   

>今こそ実地に美しく鮮やかな死を死にきって戴きたい」   

 

プーチン大統領の演説のようなものですね。    

 

>出陣する学徒を前に、美しく鮮やかな死を望むとまで断言する東京大学教授、それが戦前の出隆の姿だった。   

>学生が国家に殉ずることを是とするだけでなく、むしろ「美しく死んでくれ給(たま)え」とまでいうのだから、死を煽(あお)ったといわれても致し方あるまい。    

>戦後、出隆は『詩人哲学者』を刊行する際、「序に代えて」を削除し、知らぬ顔を決め込む。   

>占領軍の統治において、軍国主義的思考を有すると判断された大学教員は著作によって公職追放された。   

>出が「序に代えて」を削除した動機が公職追放と関連していたのか否かは今となっては確かめる術がない。

>生きていくために、自らの節を屈したとも理解できる。   

 

彼は処世術 (損得勘定) を発揮したのですね。    

 

>誰もが生きていくことに必死であった終戦直後、多くの変節漢が現れた。   

>家族を養うため、自らが生き延びるため、昨日までの勇ましい言説を変え、民主主義を礼賛し始めた人々が多かった。   

>何も大学教員ばかりではない。   

>小学校、中学校の教員もまた、昨日までの生徒への勇ましい訓示をなかったかのように、民主主義を称揚し始めた。   

>幼き日の石原慎太郎が衝撃を受けたのは、日本人の変わり身の早さだった。   

>戦に負けて明らかになったのは、日本人の醜悪な姿だった。   

 

‘私は絶対に日本人を信用しない。昨日までの攘夷論者が今日は開港論者となり、昨日までの超国家主義者が今日は民主主義者となる。これを信用できるわけがない’  (あるアメリカの国務長官)    

 

>だが、出の場合は更(さら)に凄(すさ)まじい。   

>戦歿(せんぼつ)学徒の遺稿をまとめた『きけ わだつみのこえ』は、終戦後の日本におけるベストセラーだ。   

>この遺稿集そのものが編集部によって改竄(かいざん)されていたのは周知の事実である。   

>それ自体が死者に対する冒瀆(ぼうとく)なのだが、出隆は戦歿学徒の遺稿を読み解きながら、死者を漫罵する。   

>東京大学経済学部から学徒出陣したある学徒の絶筆は次の通りだ。   

>「父上様、母上様   

>元気デ任地ヘ向イマス。   

>春雄ハ凡ユル意味デヤハリ学生デシタ・・・」   

>この絶筆に対し出隆は「絶筆とは言え、あまりにも平凡なメモ」と断じ、この種のメモ書きすら採用しなければならなかったとは、いかに遺稿の大部分が「貧弱」であったかは「推して知られる」という。   

>さらに、こうした貧弱な知性は、戦争を感情的に忌避するだけで実際には戦争を止められず、「聖戦」という名の侵略戦争、「屠殺(とさつ)場」に投げ込まれただけだったとまで言い切るのだ。   

 

日本残酷物語ですね。    

自己の意思を表明すれば当事者・関係者となる。表明しなければ傍観者にとどまる。日本人には意思が無い。全ての国民が高みの見物をする。意思の無い人間には責任もない。    

‘誰も責任を取りたがらず、誰も自分に責任があると言わなかった。・・・・・ 一般国民が軍部や文民官僚の責任と同等の責任を負っていると心から考えている人はほとんどいなかった。’ (ジョン・ダワー 増補版 敗北を抱きしめて 下)  

 

>出隆に従えば、あの世界大戦は「帝国主義的独占資本とその手先の仕業」なのだが、戦で散っていった学徒たちはこうした「悲劇の本質」を知らなかった。    

>「小さな狭い自己と人情とをうちに見ることは知っていても、横につながる多数の人民大衆と大きな世界の情勢とを、真実につかむことを知っていない」。   

>ただし、それは学徒らの罪ではなく、そうした状況に追いやった戦争の首謀者たちがマルクスやレーニンを学ぶことを禁じていたからだ。   

>要するに共産主義の立場から戦争を眺めることの出来なかった愚かな学徒の手記、それが『きけ わだつみのこえ』だというのだ。   

>戦時下において「美しく鮮やかな死を死にきって戴きたい」と煽りに煽った男が、実際に戦死した学徒を「愚者」と指弾する。   

>これほど醜悪な姿はない。   

 

そうですね。日本人には哲学 (非現実・考え) がない。在るのは処世術 (現実・損得勘定) ばかりですね。ずるい人間という印象しか残さない。      

 

>知性と倫理とは、必ずしも共存しない。   

>出隆の変節は人間の知性の限界、醜さを我々に示している。   

 

非現実 (考え) の内容は、英語の時制のある文章により表される。非現実の内容はそれぞれに独立した三世界 (過去・現在・未来) の内容として表される。その内容は世界観と言われている。これらの三世界は時制により構文が異なるので、同次元で語ることができない。それで独立した三世界になっている。この規則を the sequence of tenses (時制の一致) と呼ぶ。日本人の初学者が英論文を書くときに難渋する規則である。 

世界観は、人生の始まりにおいては白紙の状態である。人生経験を積むにしたがって、各人がその内容を自分自身で埋めて行く。自己の 'あるべき姿' (things as they should be) もこの中にある。来るべき世界の内容を語ることは、時代を先取りすることである。これは政治に必要である。日本人の場合は、無哲学・能天気にためにノンポリ・政治音痴になっている。これでは冴えた政治は行われない。

自己のその内容 (非現実) を基準にとって現実 (things as they are) の内容を批判 (縦並びの比較) すれば、批判精神 (critical thinking) の持ち主になれる。批判精神のない人の文章は、ただ現実の内容の垂れ流しになる。全ての事柄は他人事になる。これは子供のようなものである。日本人も英米人も子供の時には非現実 (考え) の内容というものがない。だから ‘話を告げる’ (to tell a story) ということは、’作り話をする’ とか ‘嘘を吐く’ という風に受け取られて悪い子供とされている。この判定だけがわが国では一生涯続く。

日本語の文法には時制がない。だから、日本人には非現実を内容とする世界観がない。そして、日本人には批判精神がない。残念ながらマッカーサ元帥の '日本人12歳説' を否定できる人はいない。  

意見は比較の問題である。現実の内容と非現実の内容があれば批判精神が発揮できる。英米人の意見はこれである。これは縦並びの比較ということができる。建設的である。進歩が期待できる。希望が持てる。現実の内容だけであれば、その比較は '現実' 対 '現実' の上下判断 (横並びの比較) になり、'どっちもどっちだ' がある。そこで、不完全な現実に囲まれて無力感に苛まれる。この種の比較は復讐に復讐を重ねる民族同士の争いの原動力にもなっていて進歩が期待できない。 

イザヤ・ベンダサンは、自著 <日本人とユダヤ人> の中で ‘自らの立場’ について以下のように述べています。   

何処の国の新聞でも、一つの立場がある。立場があるというのは公正な報道をしないということではない。そうではなくて、ある一つの事態を眺めかつ報道している自分の位置を明確にしている、ということである。 読者は、報道された内容と報道者の位置の双方を知って、書かれた記事に各々の判断を下す、ということである。 ・・・・日本の新聞も、自らの立場となると、不偏不党とか公正とかいうだけで、対象を見ている自分の位置を一向に明確に打ち出さない。これは非常に奇妙に見える。 物を見て報道している以上、見ている自分の位置というものが絶対にあるし、第一、その立場が明確でない新聞などが出せるはずもなければ読まれるはずもない。・・・・・ (引用終り)       

 

>いわた・あつし 昭和58年、静岡県生まれ。   

>早稲田大学大学院政治学研究科修了。   

>専攻は政治哲学。   

>一般社団法人日本学術機構代表理事。   

>著書に『政治学者、ユーチューバーになる』など多数。   

 

 

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閲覧数282 カテゴリアルバム コメント0 投稿日時2023/08/10 20:57
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