関瑤子氏 首藤若菜氏 |
>JBpress >なぜ日本は人手不足なのに賃金が上がらないのはなぜか? 雇用維持がもたらした「失われた30年」の経済構造 >関瑶子、首藤若菜によるストーリー >・22時間・ > 人手不足になれば賃金は上がる──。 >経済学では当たり前とされるこの法則が、日本では長年機能してこなかった。 >背景には、雇用を守るために賃金を抑えるという日本特有の慣行があるという。
そうですね。日本は縦社会 (序列社会) ですからね。義兄弟がいっぱいいますね。自己の序列に強い帰属意識を持つものが多い。
>『なぜ賃金は上がらないのか 日本経済30年の陥穽』(講談社)を上梓した首藤若菜氏(立教大学経済学部教授)に、日本経済が30年間抜け出せなかった構造的な問題と、賃上げが経済再生の突破口となる理由について話を聞いた。 >(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) >──現在の日本の賃金と労働需給の関係は、経済学の基本的な考え方と乖離しているとありました。 >首藤若菜氏(以下、首藤):経済学的に考えれば、人手が不足すれば企業は高い賃金を払って人手を確保しようとするはずです。 >人手不足と賃金上昇は連動して起こるのが一般的です。
そうですね。
> ところが、日本では様相が異なります。 > 2010年代半ば以降、日本の労働需給は人手不足の状態が続いています。 >ただ、それによって賃金が上昇しているのかというと、必ずしもそうとは言えません。 > 経済学が想定するような単純な労働需給モデルだけでは、日本の現状を説明できないと感じています。 >──実質賃金が上がらない状態で、日本経済はどのような影響を受けてきたのでしょうか。 >首藤:賃金は、多くの人にとって最大の所得源です。 >これが上がらず、特に実質賃金がプラスにならない状態が続けば、家計は消費を抑制せざるを得なくなります。 >家計が消費を抑制すれば、内需が縮小し、経済全体も停滞していきます。 > 賃金が上がらないと、企業側は「家計が豊かでないのに高い価格をつけたら顧客が離れる」と考え、価格をなかなか上げられなくなります。 >価格が上がらなければ、当然賃金も上がりません。 > さらに、価格が上げられない中では新たな投資もなかなか進まない。 >投資が進まなければ生産性も上がらず、生産性が上がらなければ賃金も経済も成長できません。 >「価格が上がらない→投資が進まない→生産性も上がらない→内需も拡大しない→経済が停滞する」という悪循環が回り続けてきたのが、過去30年間の日本経済の実態だと思っています。
そうですね。
>──書籍の中では、日本は「交易条件」が悪化し続けているという指摘がありました。 >実質賃金を左右する3つの要素 >首藤:実質賃金は、労働生産性・労働分配率・交易条件の3つによって説明できます。 >一般的には労働生産性と労働分配率の話はよくされますが、交易条件についてはあまり語られません。 > 交易条件の悪化とは、輸入価格が上がっているにもかかわらず、輸出価格を上げられない状態を指します。 >日本では、輸入で増えたコストを価格に適切に転嫁し、輸出価格に乗せることができていない状況が続いています。 > これが日本の実質賃金がなかなか改善されない大きな要因になっているのではないかというのが私の見方です。 >──交易条件の悪化は、実質賃金にどのような影響を及ぼすのでしょうか。 >首藤:交易条件の悪化は、日本全体での購買力が低下するイメージです。 > たとえば、日本が自動車を1台100万円で輸出していたとします。以前はその100万円で、原油を100単位輸入できていました。ところが、交易条件が悪化すると、100万円で50単位の原油しか輸入できなくなります。 > 一生懸命働いて稼いでいるつもりなのに、日本が海外から輸入するものが相対的に高くなり、私たちは実質的に貧しくなっていきます。 >──日本は交易条件の悪化に対して、どのような対応を取ってきたのでしょうか。 >首藤:交易条件が悪くなっていくことへの対応として、本来であれば上昇したコストを価格に転嫁していくという選択肢があったはずです。 >価格に転嫁できない場合には、企業が利益を削って吸収するという選択もありました。 > ところが日本社会は、賃金を圧縮するという対応をしてきました。 >──なぜそのような選択をしたのでしょうか。 >雇用維持のために賃金据え置きを受け入れた日本人 >首藤:一つは、日本の雇用慣行の問題があると思います。 >日本では、とりわけ大企業の正社員を中心に、長期雇用が重視されてきました。 >そのため、労働者の賃金よりも雇用を守ろう、すなわちリストラを避けようとする意識が強く働いていたと考えられます。 >そのため、雇用を優先的に守るために賃上げ要求を抑えるようになった。 > もちろんこれだけが理由ではありませんが、賃金が雇用維持のための調整弁として使われてきたことは大きな要因だったと考えています。
そうですね。
> 従来、日本は賃金を比較的柔軟に調整できる慣行を持ってきた国です。 >不況や一時的な需要の落ち込みといったショックに対して賃金を調整することで雇用を守り、ショックが去ったら賃金も元の水準に戻すというのが日本の雇用システムでした。 > ただ、この30年間を見ると、一時的なショックではなく交易条件の悪化という長期的な問題に対しても賃金で調整し続けてきた。 >そこが、日本経済の歪みになってきたのではないかと思っています。 >──賃金ではなく、価格を調整弁にするという選択肢もあったはずです。 >なぜそうならなかったのでしょうか。 >首藤:デフレの時代が長く続いて、多くの人がそれを当たり前だと感じてしまったためだと思います。 > デフレが続く中では、企業が価格を上げることが競争力を失うことを意味します。 >価格を維持する、ないしは下げることが競争力となるという考えが日本経済に深く根付いてしまったのです。 >いわゆる、ゼロインフレ・ノルムです。 > その結果、価格競争が非常に厳しくなり、賃上げができないという仕組みが出来上がってしまったのではないかと思います。 > ただ、デフレだったから賃金が上がらなかったという話はよく耳にしますが、賃金を上げずに済んだからデフレ経済を成立させることができたという側面もあると思っています。 > 賃金を上げずに済んだ背景として、労働組合が強く要求しなかったからではないかという指摘もあります。 >ただ、組合の責任だけに帰することができるのか、私は疑問も感じています。 > 組合が弱かったとすれば、なぜ日本でこれほど長期雇用や雇用の安定性が維持されてきたのか、うまく説明できないからです。 > 組合は雇用維持を重視し、それを実現してきた面があります。 >つまり組合は、雇用維持を取る代わりに賃金の柔軟性、すなわち据え置きを引き受けたということだと思います。
そうですね。
> それは組合だけではなく、日本の労使が選んできたものだったのでしょう。 >暗黙の了解、慣行といってもいいかもしれません。 >賃金停滞の起点となった2002年のトヨタショック >──賃金停滞の転換点はどこにあったのでしょうか。 >首藤: 2002年頃から、春闘での賃上げが著しく停滞していることから、そのあたりが大きな転換点だったと思っています。 > 2002年の春闘では、「トヨタショック」と呼ばれる出来事がありました。 >これは、日本を代表する企業であるトヨタが、当時、過去最高益を出していたにもかかわらず、ベースアップをゼロにすることで労使が合意したというものです。 > トヨタは春闘で先行して賃上げ水準を決め、その後の同業他社や他産業の賃金交渉に大きな影響を与える企業です。 >「トヨタでさえベアゼロだったら、我が社がベースアップしてもよいのか」という雰囲気が社会全体に広まったことは、容易に想像できます。 > 確かに、当時の日本全体を見渡せば景気は落ち込んでおり、失業率も高かった。 >ベースアップが難しかったこと自体は理解できます。 >ただその後、景気が回復していく時期においても、ベースアップを強く求めていく姿勢が失われてしまったと思っています。 >──それが先ほどの「慣行」ということでしょうか。 >首藤:そうです。 >雇用を守ることをあまりにも優先させすぎたという側面が強く出ていたということです。 > ここ数年の春闘では、毎年5%程度の賃上げが達成されています。 >これには、インフレという要素が強く働いていると思います。 >「物価が上がっているから、賃金を上げて生活を守らないといけない」という動機が組合を後押ししているようです。 > かつては、物価が据え置きだったため、生活は守られているという認識がありました。 >ただ、物価も上がらず賃金も上がらないという中では、経済は決して成長しません。
そうですね。
>経済を成長させていくためにこそ、賃金を上げていくことが重要だと思っています。 >──「賃上げこそが、既存の競争ルールや分配構造を揺さぶる突破口となりうる」とありました。 >首藤:賃金を上げようとすれば、企業は当然その原資を確保しなければならないと考えます。 >原資を確保するためには価格転嫁を進めることも必要ですし、生産性を上げたり、不採算な部分を圧縮したりといったさまざまな取り組みも必要になります。 >そうした取り組みが、経済の成長につながっていくと私は考えています。
そうですね。
> 何らかの取り組みをさせようという圧力がなければ、同じものを同じやり方で作り続け、売り続けるということが起こりかねない。 >そこには、技術の改良や経済の成長は一切ありません。 > 賃上げをしよう、しなければならないという動機が、据え置きの価格競争などから脱却し、経済を一歩前進させるきっかけになると私は考えています。 >持続的な賃上げのために必要な制度的な後押し >──現時点の日本経済の問題は賃金と価格が連動していない点かと思います。 >賃金と価格を「結び直す」ことの難しさはどこにあるのでしょうか。 >首藤:物価高で苦しい、大変だという声はよく耳にします。 >ただ、経済で考えてみると、インフレそれ自体を、常に悪いものと捉える必要はありません。 > インフレがない時代を私たちは快適に過ごしていたかもしれませんが、そこには長期の経済停滞がありました。 >ある程度のインフレがある状況で、毎年価格が上がるかもしれないけれど毎年賃金も上がるという経済を作っていくことが大事だと私は考えています。
そうですね。
>──賃金と価格を「結び直す」ためには、何が必要で、誰が陣頭指揮を取るべきなのでしょうか。 >首藤:価格の決定も賃金の決定も、市場の原理だけで決まるものではありません。 >制度的な要素が非常に重要だと考えています。 > 賃金を上げ、その原資を確保できるよう価格転嫁を実現していくためには、各企業が生産性を上げて努力するだけでは不十分です。 >制度的な要素と政策的な働きかけが不可欠であると思います。 > たとえば、昨今では公正取引委員会が人員を配置し、価格転嫁がきちんとなされているか、不当に価格を抑えていないかを確認し、社名を公表するといった取り組みがされています。 >そのような後押しがあって初めて、価格転嫁という動きが促されることがあるのではないでしょうか。 > 賃上げについても同様です。 >転職による賃金上昇も重要ですが、それだけに委ねるのではなく、春闘や最低賃金制度、価格転嫁を後押しする政策などを通じて、社会全体の賃金水準を底上げしていくことが重要だと考えています。 > 労働組合が春闘を通じてみんなで一斉に賃金を上げる動きをする、最低賃金制度を活用して賃上げを促す、さらに価格転嫁できるよう政策がサポートに入るといった制度・政策の動員があって初めて、そういった経済を作っていけるのではないかと思っています。 > 賃金と価格の結びつきが脆弱だったのは、日本においてそうした取り組みが足りていなかった側面があったのではないかと感じています。 (略)
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