最近、各地で競うように増えた大規模な日帰り温泉施設。 その一方でほとんど姿を消してしまった「銭湯」だが、 なんと、菊川駅付近に1軒存在することを突き止めた! 温泉・・・いや “入浴施設フリーク” としては痛烈に興味をそそられるとともに、 時々通りかかる道の近辺に「銭湯」があったなんて・・・うかつだった。 その名は「菊の湯」― 菊川の銭湯だもんね・・・わかりやすい。 きっと地元ではよく知られた湯なのだろう、 小さな駐車場には数台の車が停まっている。 男女別の入口には、 それぞれ「男湯 菊の湯」「女湯 菊の湯」を染め抜いた暖簾がかかり、 その隅をよく見ると、月のマークでお馴染みの「花王」ロゴが・・・。 一部上場企業からの寄贈とは・・・うむ、これはあなどれんぞ。 そんな立派な暖簾をくぐり、ドアを入るとすぐ、 番頭台におばちゃんがTVを見ながら座っている。 完全に、古いドラマのワンシーンだ・・・。 入浴料がどこにも書いてないので尋ねると、350円だと。 1,000円出して釣りをもらうのも申し訳ない空気感から、 なんとか小銭を集めてぴったり支払い、先へ進もうとすると、 「タオルやらは持ってるかね?」と念を押された。 もちろんタオルは持ってきたんで「あるよ~」と答え、脱衣場へ。 ガランとした脱衣場ではチビっ子1人が湯上り着替え中で、 ガラス超しに見える浴室ではおっちゃん2人が入浴中。 脱衣棚は、現代社会の公衆の場ではもはやありえない、扉もカギもないオープンな壁棚。 しかし、何の心配も起こらないのが、“その場の雰囲気” ってやつなのだろうか? 21時までという事前リサーチにより、のんびりはしていられない。 さっさと服を脱ぎ、棚に放り込んでいると、今さらながらふと気付いた。 番頭台って、ホントに男女両脱衣場が丸見えの位置にあるんだ・・・。 (学生時代行った東京の近代銭湯では、番頭台と脱衣場は別室の位置関係だった) 浴室に入ると、12畳(?)程の洗い場に、 赤青のひねりがついた古風な蛇口が6ヶ所、その内シャワー付は2ヶ所のみ。 じゃあまずは体を洗って・・・と思った瞬間、 さっき番頭のおばちゃんが言った「タオルやら・・」の言葉の奥が見えた。 石鹸・シャンプーなどの備品が、一切ないのだ! そういえば、学生時代行った銭湯もそうだったことを思い出す。 “自分が使うものは自分で持って来る” 、それが銭湯的システムなのだ。 仕方ないので、タオルでゴシゴシ洗って、なんとかキレイになって、いざ湯船へ! 約1間×1間半ほどのタイル張りの湯船は、いかにも銭湯という感じの趣。 湯加減も、まさに言うことナシ! これで壁に雄大な富士山でも描かれてりゃ完璧!!・・・なんだけどな~。 そぅこぅしているうちに、おっちゃん達はもう出る模様だが、 使っていたオケや座台を軽く洗い、洗い場の中央へ集め並べている。 しかも、ごく自然にいつもどおりの・・・といった動きだ。 なるほど、それがここのオキテなんだな・・・。 面識があろうとなかろうと、 裸で付き合う者同士、お互いの心遣いとでも言おうか、 そんなちょっとした古き良き時代の光景が、ここには残っていた。 みんなあがって一人になってしまったし、 そろそろ俺もあがろーかな・・・。 湯船からあがり、使ったオケと座台を軽くすすいで中央に並べ集め、 湯気に包まれながら、飾りっ気のない静かな脱衣場へ―。 さて、ウチに帰ったら、フロ入って石鹸で洗わなきゃ・・・(^^;) |