サン・テクジュペリの「星の王子さま」を読んだ。きちんと1冊読んだのは初めてだ。これまで何度か読もうとしたんだが、途中で放棄してしまっていた。理由はよく覚えていないが、あまりにバカげていて読み進める気が起きなかったからだと思う。理解できなかったというのもあるだろう。このところ、読み直しのプロジェクトにもとづいて、この歳になって再チャレンジしたというわけだ。同じ著者の「夜間飛行」は読んだし、好印象を持っている。 読むのにとても時間がかかり、それでも読み終わって、僕は混乱していた、これは何の本なんだと。そして2-3日たって、ようやく「星の王子さま」の世界が分かってきたような気がする。これは、子供の心を持った大人の話なんだ。世間や大人の価値観に左右されない子供の価値観が全編に流れている。そのかなりの部分は理解できるし、本質を突いている。だが、しかし、理解できない部分が残る。その部分はね、サンテックス(サン・テクジュペリの愛称)と同じ心を持った人だけが共感できるのだろうと思う。 そんな男を僕は一人知っている。彼は独特の感性を持ち、まわりからは宇宙人と呼ばれたり、”彼は日本語をしゃべれない”とか言われている。その男はれっきとした日本人であって、北大出身の脳外科医である。知能障害があるわけじゃないし、むしろ、有能といえる部分を持っている。だが、普通の人間では、決してない。彼だったらサンテックスの書いたものを100パーセント理解できると確信している。 ひとつの世界、夢の世界を作り上げたという点ではサンテックスのオリジナリティーはきわめて高い。青空にぽっかり浮いた雲のような夢の世界。特定の人にとっては理想的な世界だろうが、僕の世界ではない、と感じた。男よりは女の方が想像力・空想力は豊かのようなので、女性向きかもしれない。 |