久しぶりにヘラブナ釣りに行った。今年は夏以降不安定な天候がつづいた。釣りに行こうと思いたった時には雨で増水しているし、ヘラブナ釣りも雨の中で釣るのは気分が乗らない。で、やっと冬型の気圧配置になって、冬晴れになってきたので、15日、釣りに出た。場所は大島ヘラブナ釣り場。ここは奥まった、ちょっと分かりにくい釣り場であり、そのぶん静かで、水質はまずまずで、バイカモが生えているお気に入りの釣り場だ。ヘラブナ釣りに2年近く行っていなかったので、準備に手間どった。竿は、ちと考え、久しぶりだし、竹を使うことにした。選んだのは孤舟2代目の秘選志8尺5寸。釣り場に着いたのは2時過ぎで、行きの車中では志ん朝が熱演していた。 釣り場ではすでに5-6人が釣っていて、その内の一人は以前からの顔見知りであり、声をかける。その人の名は忘れてしまった。 「どう?釣れてる?」 「いやあ、相変わらず、なかなか食ってくれなくて」 と、いつもの釣り人の会話をかわして、釣る場所を選び、釣り座を準備する。そして、ボウルで池の水をすくうと小エビが1匹入っていた。俗にタエビと呼んでいるヤツだ。3センチメートルくらいで、透明感がある。特に意味はないが、なんとなく顔がほころぶ。梨木香歩だとどう言うだろうか? 釣り始めて30分ほどたったころから浮きが動き出したが、なかなかヘラブナの当たりが出ない。4時頃にようやく鉤がかりしたが、藻に突っ込まれて逃げられてしまった。だが、ヘラの強い引きで竿は手元から曲がり、久しぶりに竹竿の感触を味わえたのは良かった。 5時ごろには他の釣り人は帰ってしまい、僕一人になると当たりが増えてきて、ようやく1枚を手にした。うれしかったなあ。ヘラ師は1匹だけ釣れた事を「顔を見ただけ」と言う。もちろんオデコより遥かにましなのである。がんばればもう数枚は釣れるだろうが、僕は1枚ですっかり満足してしまった。 道具を片付け、車にもどり、ペットボトルのお茶を飲んでパイプを一服していると空腹を感じた。そうそう、昼食用にサンドイッチを買ってあったのに、釣りの準備にかまけて食べるのを忘れていたのだった。 |