「ダス・ベステ・オーダー・ニヒツ Das Beste oder nichts」というコピーがテレビで流れ始めてだいぶたつ。メルセデス・ベンツ日本のキャンペーンコマーシャルで使われていて、創業者のゴットリープ・ダイムラーの言葉だそうだ。 ドイツ語がテレビで流されるのはめずらしい。英語に直すと「The best or nothing」、日本語では「完全か、無か」ということになるだろう。平たく言えば、完全なもののみを販売し、不完全なものは販売しない、すなわち廃棄する、ということになる。まことに立派な職人魂である。 ボクはこのコピーを聞くたびにアメリカのあるバンブーロッド・ビルダーを思い出す。それはジム・ペインで、彼は有名な頑固者で、とびきり誠実な職人気質の持ち主だった。そのクラフツマンシップは多くの伝説になっているようで、その一つに以下のような逸話があったらしい。 ある日、ペインは工房の裏でデキの悪い竿を何本も折っていた。それを見た人は、何もそこまでしなくても、とジムに言ったそうだ。するとジムは 「私は自分でパーフェクトと思う竿だけを顧客に渡したいんだ。もし、ほんの少しでもデキの悪い竿が世に出ると、その竿を見た人が”ペインはこんな竿を作ったのか”と思うのが嫌なんだ」 と答えたそうだ。まさに完璧主義者らしい逸話ではなかろうか! ボクは、この言うは易く行うは難いことを、できるだけ実行していこうとは思っているが・・・。やさしくはない。 |