ネットオークションのサーフィンをしていたらこの変わった時計に惹きつけられた。 文字盤は半分が切り取られ、機械部分がむきだしになっている。まず、このデザインにギョッと驚く。そして、機械部分には細かな装飾が施されている。長針・短針と秒針は赤に塗られている。だから針が文字盤の上に来ると黒地に赤という配色になる。 アール・デコ(1910~1930年代)のデザインだそうで、この時計も1933年に作られたそうだ。オメガ製、手巻き。 このデザインを見てすぐに浮かんだのがオペラ座の怪人の顔。醜い顔を隠すために部分仮面をかぶっていた。 奇をてらったというか、ドギツイというか、オシャレというか、個性的と言おうか、異常な感覚を放っていて、買おうか、買うまいか、ずいぶんと迷った。何度も見に行き、オークションの締め切り直前になって、”よし落とそう”と思った。デザインが面白いだけで、時計としての価値は高くはないようで、競り落とした値段はびっくりするほど高価ではなかったので、念のため。国産のバンブーロッドよりは安い。 手元に届いてためつすがめつ眺めても、やはり特異な光を放っている。 妖しい魅惑、残酷さ、かぶき者、満艦飾といった表現が浮かぶ。人間というのは不思議なもんだ。自分にはない才能・雰囲気に惹きつけられるようだ。 いやいや、もしかしたら自分にもそんな要素があるのかもしれない。 ネジを巻いて耳に当てるとコチコチと懐かしい音がした。 |