二日目は何としてでも釣ろうというクルーの意気込みに押されて、出船を1時間早め、6時出船となった。ふたたび慶良間列島の海に向かう。途中、積乱雲の下に竜巻が起こっているのが見えた。
この日、待望のヒットがあった!急にクルーは大忙しとなり、我々ゲストは彼らの邪魔にならないように避けていた。そして、
「先生、どうぞファイティングチェアに座ってください」
と言われた。どうやらゲスト3人のファイトする順番が決めてあったらしい。僕はカメラをN居田君に渡して撮影を頼んだ。僕にはファーネスが着せられ、ファイティングチェアに座らされ、そしてファーネスとリールとが連結された。つまり、竿+リール+釣り人が一塊になったわけで、巨魚が釣り竿を海に引っ張り込んだら僕自身も海に引っ張り込まれる状況になってしまったわけだ。全員が興奮状態であり、あわただしくコトは進む。そして、ポンピングの開始。始めはポンピングの要領がわからなかったが、すぐに慣れた。ところがである。ポンピングをしてもリールの巻き取りにはかなりの力が必要であった。ほぼ渾身の力で巻くことになった。しかもラインは数百メートルは出ている。また、リールにはレベルワインダーが付いていないので自分で強く張ったラインを左右に寄せなければいけない。この作業が大変で、結局、クルーの一人にやってもらうしかなかった。
僕の目は水面上に現れる魚を探していた。だが夢に見た華麗なジャンプは見えない。
「何が掛かったのかなあ、カジキだろうか?」
と聞くと、
「カジキならジャンプしますから、これは違うと思います。おそらくいいカタのサワラじゃないでしょうか」
とのこと。掛けてから取り込むまで30分以上かかったんじゃないだろうか。釣れたのは約1メートル、7-8kgのサワラであった。背中は綺麗なブルーだった。あとは握手攻めだったが、カジキじゃないので嬉しさはイマイチではあった。僕はかなり疲れて、しばし脱力状態になったが、これが100㎏以上のカジキだったこんなものでは済まないだろう。
そして、ふたたびトローリングが始まった。”サワラが釣れたのはいい徴候なんです。カジキも浮いてきていますからチャンスはあります!”とのことだった。この次に魚が掛かったらK久村君、そして次にはN居田君がファイトする順のようだった。
クルーはサワラをさばいて、しょう油漬けを作り、昼の弁当を作ってくれた。おいしかったなあ、新鮮なサワラは。
その後、残念ながら魚のヒットはなかった。この日は5時45分那覇発の飛行機に乗らなければいけないので、午後1時頃には釣りをやめて帰港となった。
マリーナに着いてみると大きなカジキが運ばれてきた。その大きさに観客から感嘆のどよめきが起こっていた。軽量では175㎏もあった。釣ったのは全身が真っ黒に日焼けした体格の大きな男で、一見してプロの漁師であった。いわゆるウミンチュー(海人)だと思う。言葉少なく、恥ずかしそうにカジキと並んで写真に撮られていた。彼になら大カジキが釣れても当然だと感じた。僕の頭には「老人と海」の老漁師のイメージが浮かびあがっていた。僕なんかがよってたかって助けられてカジキを釣ったりしたらバチが当たるよな、と思った。
僕らにカジキ釣りをさせてくれたK久村君、A里先生、そしてM城さん、K谷さん、H嘉さんをはじめとするチーム・クリスタルのクルーのみなさん、ほんとうにありがとう!
僕の釣り人生において重要な1ページを飾るとても貴重なすばらしい体験になりました。
ウミンチューが釣った175kgのカジキ