いつもボクは世間の動きから一歩遅れているようで、それには理由がある。なにか面白そうなことを目にしたときでも、1度だけだと、ボクは手を出さないことにしている。そしてあまり間隔をあけずに2度目に見たとき、お、これは世間で評判になっているらしいと考え、本やビデオであれば買うようにしている。ところが、社会との接点が少なくなっているボクが2度目に見るということは、世間ではもはや社会現象となっているほど流布していることのようで、遅いということになってしまうようだ。
今回は「永遠のゼロ」(百田尚樹、太田出版、2006)という本を読んでとても良かったので紹介したいのだが、ちょっとネットで調べてみたら、もはや爆発的に売れた後(300万部を越えたらしい)であり、”なにをいまさら今頃になって”と言われそうなのだ。
だが、いいものは流行の後にも残るものであり、ひとこと言っておきたいというわけだ。 この本、太平洋戦争で神風特攻隊が作られた経緯、実体を詳細に調べ、小説仕立てにしたノンフィクション小説であり、その根幹には日本の軍隊の機構、ジャーナリズムの姿勢に対する批判がある。よく調べてあるし、分かりやすいし読みやすく、リアリティーじゅうぶんであり、その意味では特筆に値する本だと思う。読み出すと一気に読ませる力をもっている。ただ、神風特攻隊なんてものを作った本当の原因は日本の軍隊の官僚体質やジャーナリズムだけではなく、別の所にあるように感じたのはボクだけではないだろう。人間の欲とか、集団心理とか・・・ そこは読者自身で考えてほしいと著者は言っているのかもしれないが。
それにしてもよく調べてあるし、ストーリーもよく出来ている。売れるはずである。
読んでいない方がおられたら、一読をおすすめする。
読後、何年か前に信州上田にある「無言館」を訪ねたことをボクは思い出していた。