いやあ、英辞郎のことを書いたら驚くほどの反応があったねえ。みんな英語には苦労しているということかな。
日本のグローバル化も日に日に進んでいて、国際語としての英語の重要性が高くなってきているようだ。
僕はね、英語そのものを勉強したことがあまりなくてね。英会話はぶっつけ本番でアメリカに留学して、現場でやむを得ず身につけたんだ。留学先では、向こうの医者と同じ仕事をして、周りには日本人は居なかったからね。英語をしゃべるしかなかった。医学の知識や経験はこっちが上のことが多かったから、こっちも教えながら、相手から英語を教わるという感じだったな。
英語の読み書きは会話とはまったく別のものだ。読むのは医学部に入ってから一冊の英語の医学書(1500頁)を2年かかって完読してから自信がついた。毎晩2時間は読んだ。初めは辞書を引き引き理解しながら読んだので2時間で4分の1ページくらいしか読めなかったが、半年ぐらい経つとスピードが上がっていった。本を読み終える頃には日本語の新聞を読むのと同じくらいのスピードで読めるようになっていた。だから学生時代、教科書はほとんど英語の本を読んでいたナ。同級生ではぼくだけだったね、そんなことをしていたのは。
それでも、英語は書けなかった。書けるようになったのは大学を卒業して15年くらいたった頃かな。英語の論文を10個くらい自力で書いて、国際学会でも発表して、やや自信がついたんだ。ある時ね、横浜にある翻訳会社から電話があってね、”先生の英語の文章は正確ですばらしい。アルバイトで医学関係の日本語の英訳の仕事をしてもらえまえせんか?”と誘われたことがある。もちろん、丁重にお断りしたが、悪い気分じゃなかったナ。
まあ、こんな風で、「英語」を勉強したと言うより、英語で書いてある本が優れていたのでそれを読む努力をしたこと。論文は世界に向けて発信するメッセージなので、やむをえず、外国の医学雑誌に英語で書いた、というわけだ。
英語は単なる道具であり、やった仕事の内容のほうがずっと重要だと思う。ときどき、生まれながらに英語をしゃべっている連中が羨ましくなるが、内容はこっちが上だと思っていれば怖がることはないんだよ。英会話は単なる慣れだよ、慣れ。構えて勉強するもんじゃない。
英語についての僕の遍歴、みなさんの参考になればうれしい。