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2007年10月10日(水) 
 ここ数日、キンモクセイが香り始めている。家のドアを開けたとき、車から出たとき、そして夜、クリニックから帰るときなどに、あの甘酸っぱい香りを感じる。
 「ああ、またこの季節なんだな・・・」と思う。
 個人的にはキンモクセイに思い入れはないが、その香りを感じるとある話を思い出す。

 それはだいぶ前のこと、僕は医師会の広報委員会の委員をしていたときのことだった。広報委員会は夜8時から1時間ほど行われるのが常であった。その日、健康さがみはらというタブロイド誌に載せる写真を皆で選んだ。候補の写真のうちの1枚が僕が撮影したキンモクセイの花だった。意見が出そろい、委員会が終わろうとしたとき、若いA山先生がつぶやいた。彼はまじめで、細身でいつもジャケットとタイを着ていて、糖尿病が専門であり、よく研究会などで講師を務めたりしている好青年である。
「キンモクセイにはちょっとした想い出があってですね。ある女性と横浜で食事をしたとき、桂花陳酒という酒を飲んだんですよ。ご存じですか桂花陳酒って。キンモクセイの酒なんですよ。ちょっと香りがキツイですが」
「ほほう、そういう酒があるんですか。おもしろい」
と皆が興味を示した。
彼は続けて、
「キンモクセイの時期になって、あの香りを嗅ぐとその人のことが思い出されるんですよ」
と言う。僕はすこし意地悪なことを聞いた。
「ホホウ、なるほどねえ。で、その女性は今の奥さんなの?」
彼は、しまったという顔をして、そしてやや顔を赤らめて
「いや、それは、その、別の人なんですよ。もちろん結婚前の話ですよ、当然ですが」
と弁解する。
可愛いなと思った。好ましい青年である。

 そんなことがあって、その後、キンモクセイの香りを感じるたびに、その話を思い出す。実は彼からその話を聞いた後、桂花陳酒を手に入れて飲んだのだが、キンモクセイの香りがプンプン臭うリキュールだった。あまりに香りがキツイので、大部分を飲み残して棚にしまいっぱなしになっている。

 キンモクセイの香りは甘い。
 せつない思い出があれば、なお強く匂うだろう。


閲覧数905 カテゴリ日記 コメント2 投稿日時2007/10/10 18:23
公開範囲外部公開
コメント(2)
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  • 2007/10/10 19:38
    先生今晩は、ちょっといい話ですね。
    僕なんかは、この香りがすると、トイレが水洗でない一昔前の実家で、母が芳香剤の代わりに木犀(キンやギン)を使っていたことが頭に浮かんでしまいます。
    なんか、思い出が違いすぎますね。
    あと、三島大社の境内にキンモクセイの大木がありこの季節は、かなり遠くまで香るようです。
    また、この木犀の近くにおみくじ売り場があり、本当はだめなんですが、あまり良くないおみくじをこの木に結んで厄落としに皆が使っていて、一年中白い花が咲いているように見えます。
    先生の写真を見てこんなことがふと浮かびました。
    次項有
  • 2007/10/10 21:05
    鉛筆狂四郎さん
     おう、トイレの消臭剤代わりにねえ。
     そういえば、そんな状況を見たことがあるような気がするなあ。
     昔のやり方ってのは風情があるよねえ。
    次項有
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