この時間、時差のせいでたまらなく眠いが、がんばってアップしよう。
なにしろ、いろんな事があったので、いくつかに分けることにした。
8月8日、日本を出発し、同日にバンクーバーでデイビッドと合流し、テラス着。空港にはガイドのアンドリューがが迎えに来ていて彼の車でケイラム・リバー・ロッジに到着。これから6日間はここに泊まって釣り三昧ということになる。そこでは、驚いたことに日本人の釣り客2人に会った。彼らは明日には帰国するという。
天気はずっと良かったが、釣果のほうはイマイチで1日に3匹ほどのサケが釣れただけだったそうだ。話がはずんで時間がいつの間にか過ぎていった。
8月9日、第1日目の釣り。朝5時に起きて、6時には車でボートを引っ張って出発。
アンドリューは50歳だというのに身が軽く、てきぱきと準備を進める。ボートはケイラム・リバーを全速力で走ってスキーナリバーの本流に入り、釣り場へは10分ほどで到着した。川は幅150メートルはあり、水はややミルク色がかっていた。アンドリューはサケは底に付いているので一番重いシンクティップを使うようにと言う。また彼が薦めるフライは驚くほど単純なもので、赤いバーブレス・フックに赤いウールヤーンを結んだだけのものだった。実は僕はいろんなフライパターンをその後試してみたのだが、結局このパターンが一番釣れたのだった。
釣りが始まった。底スレスレを流すので、よく底石にフックが掛かる。それでも流し続けるとアタリがわかるようになってきた。
一匹めがヒット!引きは強く、15フィートのダブルハンドを手元から曲げて奔り、ときにジャンプする!バッキングもかなり出た。僕は真剣にやりとりして、やがて寄ってきたのは70センチほどのりっぱな銀色の魚体のサケだった。アンドリューがとんできて、
「やあ、いい型のサカイ・サーモン(紅ザケ)だねえ。おいしいからキープしよう。これで缶詰を作るんだ」
と言う。
僕は斑点がないほれぼれするような銀色のサケがすっかり気に入ってしまった。
皆、次々に同じようなサイズのサカイを釣った。初めの頃は酒井がサカイを釣ったなんて冷やかしていたが、だんだんそれも飽きてくるほどサカイが釣れた。
そして、デイビッドがサカイとは違う強い引きの魚を掛けた。
アンドリューは
「スティールだ!」
と叫んだ。
それは突っ走り、奔りを止められず、かなり走られ、デイビッドは必死に対応して、かなり時間が経ってからやっと魚を岸に寄せてきた。取り込みもかなり手間取ったが、上がってきた魚は立派な魚体の、やはり銀色だが、身体の上半分とテイルに黒い斑点がある、スティールヘッドだった。
アンドリューは
「すばらしいスティールヘッドだねえ、34インチ、16ポンドはあるよ。おめでとう」
と言った。デイビッドは呆然としていたが、握手攻めになり、魚と一緒に写真をたくさん撮った。
初日にスティールヘッドが釣れ、S君と僕のボルテージもいやが上にも上がっていった。
そして、僕にも大きな当たりがあった。その魚は初めジリジリとゆっくりと上流に向かった。どうするのかな、デカイのは間違いないな、と思っていたら、急に流心に向かって突進しはじめた。僕はシーマスターのドラッグを強くしたがその疾走を止められず、魚はさらに流れに乗って下流へと突っ走っていった。ア、ア、ア、という内にバッキングは200メートルほど出て行って、魚は止まった。だが、川は80メートルほど下流で左に曲がっていて、曲がり角には倒木が数本川にむかって突き出していた。ああ、あれに絡まれたら終わりだな、という心配はまったくの正解であり、50メートルほどリールを巻き上げた後、ラインは倒木に掛かって魚は逃げていった。僕の中には、アレはサカイなんかじゃない、スティールの大物だ、という確信が湧き起こってきていた。
河原に座り込んで反省して、よくよく考えて、そうだよね、流心に入られたら止められないよな、相手はスティールなんだから、今度掛けたら全力で、流心に入られないように止めよう、と心に誓った。
その後、サカイが釣れたりして、そして再び同じアタリが僕に来たのだった。根掛かりかと思ったそのアタリはジリジリと上流に向かって移動しはじめた。すばやく僕はリールのドラッグを最強にして、魚の頭をこちらに向けさせた。そいつはもの凄い抵抗をした。何度も流心に向かって突っ走ろうとしたが、僕は渾身の力でそれをくい止めた。そして、少しずつ。岸の方へと寄せてきた。で、ある時点でピタリと魚の動きが止まった。魚の背びれはチラチラと見え、大きなテイルが見えた!デカイ!だが、魚はその場をガンとして動かなかった。ウム、これは根比べだと思った僕は左手に竿を抱え、右手でタバコを出して火を付けた。すぐ横で見ていたデイビッドが驚いて、僕の写真を撮るのがわかった。数分は魚は同じ場所にじっとしていた。頃合いを見計らい、僕は魚を寄せ始めた。重い魚だったが、何とか動きだし、本流から外れた緩い流れに引き込むことに成功した。ヤッタ、と思った。その時アンドリューが駆けつけてきて、無事ランディングとなった。
「デカイよ、すばらしいスティールヘッドだ。太って体高があるし・・・」
握手、写真、写真・・・
一日目にしてスティールヘッドが釣れるなんて、しかもかなりの大物が、僕は信じられない思いだった。アンドリューの目測では、体調38インチ(96cm)、20ポンド(9kg)だった。
つづく。