10月18-19日は盛りだくさんのスケジュールだった。
18日、9時~12時は鹿留ロッジの駐車場でフライロッダーズ祭のフリーマーケット。三島のA田君と磐田のS井君が手伝いに来てくれた。場所の設定が悪く、客の入りが少なかったのが残念だったが、お店を出した者同士の話や竿の試し振りで盛り上がってしまった。
売れたのはフライフィッシング用語辞典1冊、フライライン1個、アマゴバッジ1個、フライボックス1個だけだった。
手伝いに来てくれた二人に売り上げから昼食と午後の釣り券を出してあげた。釣り人はびっくりするくらい多くかったがたくさん釣れた。
その夜、3人で峠を越えて道志村に行き、「北の勢堂(きたのせど)」という名の民宿に泊まった。ここは標高700メートルとかなり高い、山里である。宿は170年前の萱葺きの民家で、囲炉裏で暖まりながら青竹徳利の酒を飲み、猪鍋を食べた。これがなかなかの雰囲気があって良かった。釣りにピッタリマッチしたしつらえだった。女将さんが料理を運んできたときに僕は聞いた。
「北の勢堂とは変わった名前ですね」
すると
「昔からのウチの屋号なんです。山北の背戸(納戸)と言っていたらしいんですが、いつのまにか北の勢堂になってしまったらしいんです」
「なるほどねえ、屋号というのは面白い名前があるからね」
風呂は狭くてお勧めできないが、その他は宿泊料を考えたらお値打ちだろう。1泊2食で6300円也!猪鍋一人前1500円。S井君が、ここはいいですねえ、来年もまたここでやりましょうよ、みんなにも声を掛けて、という。おう、そうだな、いいねえ、来年もやろう、ということになった。
青竹徳利は孟宗竹の一節間に酒を入れ、下端には2本の足が付いていて囲炉裏の灰に刺して徳利が立てられるようになっている。上端は節に小さな穴が開けてあり、酒を注いだときにちょろちょろ出るようにしてある。徳利は火の横に立てて燗をする。お猪口も青竹である。いずれも使い捨てであり、客が予約を入れておけば、その日に竹藪に行って切り取って作っておくものだ。実は九州の宮崎高千穂にも同じようなものがあって、そちらはカッポ酒を呼ばれている。酒を注ぐときにカポッ、カポッ、と音がするからだ。
猪鍋も聞けばご主人が獲ってきた本物の猪だそうだ。脂に独特の臭みがあるが、味噌味とゴボウで臭みが抑えられていた。これも旨かったなあ。最後は残った汁にご飯を入れて食べた。
翌日は目が覚めたらA田君はもう居なかった。彼には当日別の約束があったのだ。で、S井君と二人だけとなった。昨日の夕食が楽しかったこともあり、目の色変えて釣りたいという気持ちにはほど遠かった。昨日も半日釣りをしたし・・・
だが、他にやることもないので、道志川を見ながら下流に下り、ウラタン(うらたんざわ渓流釣り場)に行った。水も良く、ドライフライで気持ちのいい釣りができた。
「掛川のS藤さんが、11月のスクールはどこでやろうか迷っているようですね」
とS井君が言う。
「そうなんだよ。いろいろ候補があがっているんだが、お金の問題や移動の時間も考えなきゃいけないし。このウラタンもスクールには理想的なんだが、掛川から3時間半くらいかかりそうだからね」
釣り飽きた二人は4時半ごろに早めに釣りを終わることにした。S井君はこれから磐田まで帰らなきゃいけない。僕はここから家まで1時間で帰れる。
ああ、よく遊んだな、と思う。
ウラタンではもう紅葉が始まっていた。