やっとパステルナークの「ドクトル・ジバゴ」を読み終わった。 1965年に作られたデビッド・リーン監督の映画は学生時代に見て、強烈な印象を受けたし、美しいラーラのテーマも覚えている。だが、ロシア文学というと読みづらい、名前が複雑、という先入観があって、原作は読まなかった。 つい最近、You Tubeでたまたまラーラのテーマを聞いて、映画のことを思い出し、今は自分の時間も多く持てるので、この際原作を読んでみようと思い立った次第だ。 読後感:大作である。詩人が書いた小説なので、構成や話の流れにやや無理があり、突然、思索が延々と述べられる。だから読むのが辛い。だが、革命や戦争のさなかに生きた人間を見事にえがいている。ジバゴは”生あるもの”という意味で、”ラーラ”はニンフ、海鳥、快いという意味だそうだ。単なる恋愛小説ではない。なにかを象徴しているようなのだが、その”何か”がわかりにくい。難解と言ってしまえばそれまでだが、”何か”はキリスト教に関連しているように思う。最後には、ロシアを愛し、感性豊かな自由人として必死に生きたジバゴが若くして死に、生涯の愛人ラーラが遺体にとりすがって泣く描写は感動的だ。 ひねくれた感想:総じて僕にはノーベル賞を受賞するほどの小説とは思えなかった。最近のオバマ氏へのノーベル賞授与とも考え合わせると、ノーベル賞には人類の平和に寄与した人あるいは寄与する可能性が大きな人への励ましの意味が大きいように思われる。その意味で、パステルナークへのノーベル賞授与は小説自体の評価よりも当時のソ連の人間の尊厳を無視した過酷なまでの共産主義独裁に対する世界の批判が込められていたのではないか、という気がする。 |