9月18日。釣り2日目。ぐっすり寝て、遅めの朝食をとる。この日は和朝食だ。なかなかおいしく、ことに塩鮭がふっくらと甘く、トキシラズかと思ってしまった。ウェイターと話をすると、彼もフライフィッシャーマンであった!H渕さんといい、いろいろと雑魚川のことを教えてくれる。「雑魚川の一番いい時期はいつごろかなあ」と聞くと「6月後半から7月前半でしょうね。そのころは虫もたくさん飛んで、夕方なんかスゴイですよ」「ほほう、そうかい。でも、その頃は梅雨だけど、雨はふらないの?」「まあ、ふることはふりますが、このあたりはそれほどふらないんですよ」「あ、そうそう、イタリアンに居る彼もフライをやるんですよ。彼のほうがボクより熱心ですね」と言う。 食後のコーヒーはラウンジに運んでもらい、タバコを吸いながらコーヒーを飲んだ。それもアメリカンじゃなく、ちゃんとしたコーヒーだった。このヘンも気に入ったなあ。 この日の釣りは昨日やった場所のすぐ上流部に入ることにした。途中、釣り人の車を2台見かけたが、昨日のポイントには先客はいなかった。昨日いい釣りだったので、今日は気楽にのんびり釣りができると感じていた。心安らかに釣り支度を居して、遊歩道に向かう。入り口に昨日気づかなかった看板があった。曰く、”人以外の親子連れにはむやみに近づかないように”とのこと。熊のことだろうが、それ以外の動物にも当てはまるのだろう。渓谷遊歩道はやはり気持ちがいい。木漏れ日が小径に模様を描いているのもいい。紅葉はまだまだで、ヤマウルシだけが黄~赤に色づいていた。 釣りのほうは、ほどほどに釣れた。1日合計で6匹で、サイズは18-22センチメートル。どうやらこれが雑魚川の平均的釣果のようだった。昼食は宿で作ってくれたおにぎり弁当だ。竹の皮に包まれているのがオシャレだった。この日は釣り以外にもいろいろ目についたので、たくさん写真を撮った。フカフカの腐葉土の小径、ホウノキ、アカトンボ、トチノキ、トチノミ、動物の頭蓋骨、禁漁になっている自然産卵用の支流、野生のマユミ、などなど。 夕食はイタリアンで、ボクはイタリアンとかフレンチにはあまり興味がなくて、うまけりゃいいと思っている。イタリアンで困るのはオリーブ・オイルをやたら使ってギトギトの料理が出てくることだ。今回もパスタが脂っこくて半分残してしまった。 ちょっと気になったのが、ボクの隣のテーブルで比較的若い女が一人で食事をしていたこと。いまはやりの”お一人様”か。そういえばボクも”お一人様”なんだが、男と女ではちがう。外国だったら話しかけて一緒のテーブルで食べたかもしれないが、日本ではそうはいかない。 デザートはラウンジのカウンターで食べ、アルコールを少し飲んだ。今回はちょっとオシャレな宿であり、それに合わせてスコッチを頼んだ。ボクの好きなグレンモランジーのお湯割りを飲んだ。甘い香りを存分に楽しみ、しあわせ気分を味わった。バーテンダーがスコッチに詳しくてね、よく勉強していて、驚いたものだ。ただ、お湯割りという飲み方は知らなかったようで、これは日本ではやる人が少ないが、スコットランドではふつうの飲み方なのだ。焼酎と同じでね、香りがとても引き立つ。おためしあれ。グラスはブランデーグラスがいい。 今日一日のことを思い出しながら飲んでいると、目の前の大きな窓ガラスの向こう側では、ライトアップされた樹木の枝と葉が風に揺れていた。